2022念9月6日(火)より全国4都市で上演されるミュージカル『シンデレラストーリー』。本作は、鴻上尚史が17年前に書き下ろした作品で、物語の中で“リアル”に考えたら避けては通れない問題に回答していく・・・という、ありそうでなかった発想で綴られたミュージカルである。本作で、アンミカが初舞台を踏む。
モデルとして世界的に活躍し、タレントとしても活躍の場を広げるアンミカが、ミュージカルという“表現”の世界への新たな挑戦においてどんなことを感じているのか、話を聞いた。
――アンミカさんは、今回が舞台初挑戦ですよね。お話が来た時、率直にどう思われましたか?
いくつになっても、チャレンジすることは素晴らしいことだと思って、お話をいただいてすぐにお返事させていただきました。
――もともと演劇、ミュージカルには親しみがありましたか?
はい、母の影響で。幼少期、兄弟姉妹に比べて小柄だったり、少しぽっちゃり気味だったり、唇を大きく切る怪我をして人前で笑えなくなったりと、コンプレックスだらけで下を向きがちだった私に、当時、化粧品会社で働いていた母が「一緒にいて心地いい人が美人なのよ。目鼻立ちが整っているだけがかわいいじゃないの」と4つの魔法をかけてくれたんです。
「人の目がなくてもいつも姿勢よくいること」「笑顔は伝染するものだから、自分から口角をあげて笑顔でいること」「目線は横に外すとヨコシマに見えるから縦のラインで動かすといい」「おしゃべりが苦手でも、頷く、質問するなど、共感して会話上手になろう」この4つの教えを実践して少しずつ自信がついてきたんです。
そんな母がミュージカルや舞台が好きで、その影響で私も観るのが好きになりました。もともと、教会で聖歌を歌ったり、ゴスペルをやっていたり、15歳からヒップホップダンスを友達とグループを組んでやっていたりと、歌や踊りが大好きだったので。自分も舞台に立ってみたいと思ったこともあったんですけど、尊敬の念が強すぎて・・・。
母は高校生の時に他界してしまったのですが、よく鏡の前で一生懸命ポーズをとったりしていた私に「モデルさんになればいいのに」という言葉をくれていたんです。女優を目指して大きな舞台にすぐ出られることは難しいけれど、「モデルになった」という報告は事務所に入れればすぐできるかなと思って、そちらの道を選びました。だから、夢は憧れのまま、時が過ぎていましたね。
――では、お母様がかけてくださった魔法が結実した結果でもあるんですね。
そうですね。時間はかかったけれど。
――本作は、「シンデレラ」の物語の中で起こり得た問題を具体的に描くという、ファンタジーと現実の狭間をいく物語ですが、台本を読んだ時はどんな印象を持たれましたか?
確かに「シンデレラはこういうもの」という固定概念で見ていましたが、「なんで踊りのレッスンをしたこともなかったのにあんなに踊れたの?」「なんで魔法は解けたのにガラスの靴は残ったの?」「シンデレラのお父さんは?」など、言われてみれば疑問がいっぱい出てきますよね。そこに視点を当てて、ユニークに展開するのは、大人にとってもおもしろく、子どもにもちゃんと説明がつくので、納得感も得られ、本当に喜んでご覧いただけると思います。
――稽古ではいろんなセッションが行われていると思いますが・・・。
あのね、もう大爆笑です(笑)。ほかの方のシーンを見ていて、楽しくてしょうがないんです。今、お稽古で毎日お客さんの気分を最高に楽しんでいます。
――アンミカさんが魔法使い役を演じられると聞いて、ピッタリなのでは?!と思いました。
ありがとうございます。シンデレラが困った時に登場して、彼女に幸せになってほしいと願う役なので、結構自分に近いんじゃないかなと思っています。私も、みんなに幸せになってほしいと思っているので。
――シンデレラ役がWキャストということで、アンミカさん演じる魔法使いとの関係性にも違いが出そうですね。
全然違って見えると思います。凛ちゃんとは初舞台の者同士支え合い、梨里香ちゃんにはミュージカルの先輩として感情を引っ張っていってもらっている感じです。その違いを、私自身も楽しんでいます。
――アンミカさんの中でも、その違いから気づきが多く生まれていますか?
たくさんありますよ~。私自身は梨里香ちゃんには引っ張っていってもらっているけれど、魔法使いとしてはシンデレラを引っ張らなければと身が引き締まりますし、凛ちゃんとは初々しく作りながらも私はそれではだめだと、日々楽しみながら勉強させていただいています。
――アンミカさんは、皆さんご存知のとおりモデルさんとして大成功され、タレントさんとしても活躍の場を広げていらっしゃいますが、“表現”という意味で、今、ご自身の中で違いを感じていることはありますか?
全く違います。違いすぎます。モデルさんは、撮影とショーでも違いはありますが、服を見せる中で自分の個性を出していくことが求められるんです。でも、舞台で求められるのは相手との化学反応ですよね。モデルの場合は、歩く時も前後の人のこととか、そんな考えないですけど、舞台では相手との会話一つでいつもと違う反応が生まれたりしますから。
言葉を一切使わないモデルは、表現という意味ではかなり制限された中で行う仕事だけど、舞台では「役」という殻はあるけれど、もっと自由なんだということを、今まさに味わっています。共演者の皆さんだけでなく、観客の皆さんの反応でもまた変わっていくんでしょうね。それがすごく楽しみです。
――この経験は、アンミカさんにどんな変化をもたらしそうですか?
ミュージカルが好きで、ずっと観てきた自分としては、より出演されてる方々へのリスペクトが止まなくなると思います。また、新たな表現を経験することで、新たな好奇心がどんどん湧いてきそうな気がしています。
最近はいくつかドラマに出演させていただいたりもしているんですが、ドラマは、その瞬間に「役」に入ればよかったんです。でも、舞台はずっとその役でいる必要がある。これはまだ味わったことのない経験なので、表現することへの好奇心がさらに刺激されそうです。
――アンミカさんの初挑戦、楽しみにしています。最後に、お客様へメッセージをお願いします。
現実世界でも、ちっちゃなシンデレラみたいな世界があると思うんですね。この作品は、そこで巻き起こる人間模様を、とてもおもしろおかしく、今の時代に合わせてリアルに表現しているミュージカルです。うんと笑いに来てほしいです。すっごく元気になっていただけると思います。笑うって健康にいいので。私も一日一日、皆様の笑い声などを受けて表現が変わっていくと思うので。その一期一会を楽しみながら初舞台を楽しみたいと思います。
(取材・文/エンタステージ編集部 1号)
ミュージカル『シンデレラストーリー』公演情報
上演スケジュール・チケット
【東京公演】2022年9月6日(火)~9月19日(月・祝) 日本青年館ホール
【愛知公演】2022年9月24日(土)・9月25日(日) 東海市芸術劇場 大ホール
【福岡公演】2022年10月1日(土)・10月2日(日) キャナルシティ劇場
【大阪公演】2022年10月7日(金)~10月10日(月・祝) 梅田芸術劇場 メインホール
スタッフ・キャスト
【作】鴻上尚史
【音楽】武部聡志
【作詞】斉藤由貴
【演出】ウォーリー木下
【出演】
シンデレラ:加藤梨里香、水嶋凜(Wキャスト)
王子・チャールズ:大野拓朗
義母・ベラドンナ:佐藤アツヒロ
廷臣・ピエール:入野自由
義姉・オードリー:ゆいP(おかずクラブ)
義妹・ジェシカ:まりゑ
ミスターマウチュ:川原一馬
チュウ太郎:和田泰右
チュウ1:Homer
チュウ2:夏目卓実
安福毅、棚橋麗音、神里優希、中野太一、花陽みく、吉田繭、田之上もも、大澤えりな、小倉優佳、森本さくら
王妃・ガードルート:彩吹真央
王様:吉野圭吾
魔法使い:アンミカ