2022年6月24日(金)に舞台『アナザー・カントリー』が東京・よみうり大手町ホールにて開幕した。初日前には公開ゲネプロと囲み取材会が行われ、和田優希(Jr.SP/ジャニーズJr.)、鈴木大河(IMPACTors/ジャニーズJr.)、おかやまはじめ、上演台本・演出の鈴木勝秀が登壇した。
本作は、1930年代のイギリス、未来のエリートを養成すべく、上流階級の子息が学ぶパブリックスクールを舞台にした物語。伝統と規律を重んじる男子だけの寄宿生活の中で、少年たちのロマンス、抵抗と葛藤、そして挫折をみずみずしく描く。
出演は、自由を求める同性愛者ガイ・ベネット役に和田、ガイの盟友で共産主義に傾倒するトミー・ジャッド役に鈴木(大)。そのほかに、多和田任益、嘉島陸、山時聡真、岡田翔大郎、中山咲月、近藤廉、浦上晟周と気鋭の若手俳優が集結し、ベテランのおかやまはじめが名を連ねている。演出は、数多くの海外戯曲を手掛け、繊細な心理描写で知られる鈴木(勝)が担当。
あらすじ
1930年代、イギリス。将来のエリートを育成することを目的とした良家の子息のみが集う名門パブリックスクール「ガスコイン・ハウス」で、ガイ・ベネットは親友のトミー・ジャッドと共に伝統と規律を重んじる堅苦しい寄宿制の寮生活を送っていた。ある日、学内で寮生の一人の遺体が発見される。彼は禁忌とされている同性愛の現場を寮監の教師に見つかってしまったことを苦に自殺を図ったのだった。寮長・バークレイは自らの力不足を思い悩み、次期寮長候補のメンジース、選ばれし特権階級生<トゥエンティトゥー>のメンバー・デラヘイたちは事件を収束させるべく動く。事件を機に寮生たちが様々な思いをめぐらせていく中、ベネットは監督生たちからさらなる反感を買う出来事を起こしてしまう・・・。
取材会レポート
取材会では、ジャニーズ外部舞台の初出演にして舞台初主演となる和田が、ゲネプロを終えて「ホッとしています!ゲネプロまでずっと気を張りっぱなしだったのですが、一回120%でやってみる稽古を一つ終えられたので、とりあえずホッとしています」と安堵の表情を浮かべた。
同じくジャニーズ外部舞台の初出演となる鈴木(大)は「セットや小道具がほとんどなく、ほぼ衣装替えもないという状況で、ストレートプレイ自体も初めてだったので、どうなるかと思いました。ですが、ほかの事務所で同年代の俳優さんも多いので、お互いに話し合いながら重ねていって、今日までやってこられました。これも同年代の俳優さんたちの存在のおかげです」と共演者たちへ感謝を述べた。
そんな2人に対して、鈴木(勝)は「僕は甘やかしたりするのが好きじゃないので、逃げられないようにしていました(笑)」と冗談交じりに語ると、2人も思わず笑顔を見せた。続けて「とにかく顔を上げて、前を向いて、全部見せて、なんだったら全部脱いでもいいぐらいの気持ちだったんです。それはできないですけど(笑)。今日のゲネも、2人だけでなく全員がさらけ出しているので、ぜひ本番を楽しみにしていただきたいです」とアピールした。
さらに、鈴木(勝)は「和田くんは主役だし、大河くんも準主役なので、2人が引っ張って『君たちが全力でやらないとあとはついてこないぞ』と言いながらやったんで、泣きながら引っ張っていました(笑)。与えられた役と与えられた台詞を全力で演じるというその一点だけだったので、どちらかというとやりやすかったと思います。剛速球投げるだけ、変化球はいらない。実際に剛速球しか投げなかったです(笑)」とコメント。
鈴木(勝)の言葉を受けて、和田も「まったくもってそのとおりでございます(笑)」と答えると、「僕ら自身がガッツリお芝居をするというのはなかったですし、事前の演技の引き出しも一切なかったので、全力でストレートを投げるだけでした。なので、やりやすかったところはやりやすかったです」と同調した。
鈴木(大)は「初めてのストレートプレイだったので、演出家さんか指示を言ってくれる現場を想像していたんです。だけど最初は、すずかつ(鈴木勝秀)さんから本当に何も言われなくて(笑)。和田と一緒に帰りながら『何も言われなかったね』と話したんです。自由にやらせていただける環境というのに最初は戸惑ったんですけど、あとから考えたらやりやすい環境だったなと思います」と稽古を振り返った。
ほぼ同年代の俳優が多いカンパニーということで、稽古場の雰囲気について尋ねられると、和田は「パンフレット用に座談会をしたんですが、それが稽古が始まって2、3日目ぐらいで。稽古前の顔合わせがこのご時世でなかった上に、会って3日目で『カンパニーについてどう思いますか?』みたいなが座談会をやるというので、みんなで慌てて集まって相談して、そこで初めて打ち解けました(笑)」と裏話を披露。また、カンパニーの中でも少し年上の多和田について「多和田くんが本当にひたすらアニキで(笑)。ひたすら話しかけてくれて、しゃべりやすくて助けられました。多和田くんに感謝です」と称賛した。
ステージ上のセットは、演者たちが自ら回転させる長方形の回り舞台とイスとして使用する箱があるぐらいと最小限となっている。演出について、鈴木(勝)は「さらけ出して、役者しか見ることのないという部分に持っていきたかった。優れた戯曲なんですけど、それ以前にこの若者たちがそのまま見られる、それしか見るものがないというところに持っていきたかったんです。最初はセットとかプランはあったんですけど、稽古しながらどんどんなくしていったら、これだけになりました(笑)。小道具とかも最初は使うつもりで用意したりしたんですけど、結局使わないで、とにかくこの若者たちを見てほしい、それだけでやってきました」と解説。
その言葉どおりに、思春期ならではのまっすぐな情熱と思考、権力闘争、階級社会への疑問、資本主義と共産主義の対立など様々な社会の縮図を名門パブリックスクールの学生たちの学園生活へと落とし込み、その中で抑圧されながらも心をさらけ出す、若い演者たちにとことんフォーカスしている。
役柄について、ガイ役の和田は「本当に明るくて、ひたすら自分のやりたいことをやっている役です。やりたいことをやりたいようにやるという性格は自分に似ているところはあるかなと思います」と説明し、「やりやすさもある反面、やりたいことをやるにしても、これをやりたいと外に表すというのはなかなかお奥手なところもありました。ただ、ベネットになりたいなという部分と憧れの部分もあって、いろいろやらせてもらいました。まず全力で楽しんで、自分だったらどうするか、このキャラだったらどうするかというのを考えていろいろやりました」と役作りを語った。
ジャッド役の鈴木(大)は「台詞に難しい単語がすごくあって、自分が初めて言うような単語ばかりで言い回しが難しかったです。だけど、どんどん言っているうちに普段の生活が回りくどい言い回しになっちゃうぐらい練習しました(笑)」と役作りについて明かすと、理屈っぽい役柄に対して「僕自身、もともと理屈っぽいところがあるんですけど、さらに拍車がかかってしまいました」とはにかんだ。
ステージ上で、時折見せる愛くるしい表情が印象的な和田は、同性愛だけでなく振る舞いそのものが自由奔放に自身をさらけ出すガイを力演。複雑な心情を内包し、物静かで思慮深いトミーを演じきる鈴木(大)。特にガイの理解者として和田を見つめる彼の表情の変化にもぜひ注目してほしい。
そして、ベテランとして若手俳優たちを支えるおかやま。「しゃべる役なので、自分のスピードに口が着いていけるかどうかの真剣勝負でやらせてもらっています」と語る彼の存在は作品に重厚さと安定感をもたらしている。
取材会の最後に、和田は「『アナザー・カントリー』は映画や舞台で、いろんな国で上演されてきました。これまで演じてきた俳優さんたちが作ってきた看板を汚さないように務めて参りたいと思います。外部の初舞台だとか、主演初だとかは始まってしまえば言っていられないので、最後の最後まで全力でやりきりたいなと思っておりますので、ぜひ楽しんでいただけたらと思います」と呼びかけた。
たおやかで壮大なホルスト作曲「木星」が流れる中、ステージ上に繰り広げられる静と動の若者たちの情動を見事に演じきる俳優陣の好演が光る舞台となっている。
舞台『アナザー・カントリー』は6月24日(金)から7月3日(日)まで東京・よみうり大手町ホール、7月7日(木)から7月10日(日)まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール、7月12日(火)・7月13日(水)まで福岡・キャナルシティ劇場にて上演。上演時間は約105分(休憩なし)を予定。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)
舞台『アナザー・カントリー』公演情報
上演スケジュール・チケット
【東京公演】2022年6月24日(金)~7月3日(日) 東京・よみうり大手町ホール
【大阪公演】2022年7月7日(木)~10日(日) 大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
【福岡公演】2022年7月12日(火)~13日(水) 福岡・キャナルシティ劇場
スタッフ・キャスト
【作】ジュリアン・ミッチェル
【訳】北丸雄二
【上演台本・演出】鈴木勝秀
【出演】
和田優希(Jr.SP/ジャニーズJr.)
鈴木大河(IMPACTors/ジャニーズJr.)
多和田任益 嘉島陸 山時聡真 岡田翔大郎 中山咲月 近藤廉
浦上晟周/おかやまはじめ
【公式サイト】https://another-country.com/
【公式Twitter】@ACountry_stage