2022年6月9日(木)に東映ムビ×ステ 舞台『死神遣いの事件帖 -幽明奇譚-』が東京・ヒューリックホール東京にて開幕した。初日前には公開ゲネプロと取材会が行われ、出演者より鈴木拡樹、小林亮太、神尾佑、凰稀かなめ、脚本・演出の毛利亘宏が登壇した。
【東映ムビ×ステ】とは、ひとつの作品世界で語られる「ムービー(映画)」と「ステージ(演劇)」を公開&上演するプロジェクト。映画と演劇はそれぞれ独立した作品ながら物語が連動しており、メディアの境界線をまたいでその世界観を広げるものとなっている。
本作は、その東映ムビ×ステ第2弾の舞台『死神遣いの事件帖 –鎮魂協曲-』(2020年7月・8月上演)の続編。死神を操る「死神遣い」にして、江戸で探偵業を営む主人公・久坂幻士郎が、死神の相棒・十蘭を残し黄泉へと向かった前作映画『死神遣いの事件帖 – 傀儡夜曲-』(2020年6月公開)のその後を描く。さらに、2022年冬に公開予定の映画『死神遣いの事件帖 -月花奇譚(げっかきたん)-』(以下、『月花奇譚』)とも連動する。
出演は、久坂幻士郎役に鈴木、本作で新たに登場する死神・亞門(あもん)役に小林。幽霊の幻士郎のことが見える霊媒師・恐山寂蓮役に凰稀、幻士郎の父・久坂衒太夫役に神尾佑。
そして事件が起こる一座に関わる登場人物として、幻士郎と同じく幽霊の市村左十朗役を廣瀬智紀。升屋庄吉郎役を安西慎太郎、市村松之助役を稲垣成弥、市村亀吉役を飯山裕太、市村蟹造役を山川ありそ、市村鶴丸役を北村健人、市村百翁役を清水宏が演じる。
レポート
囲み会見では、まず主演の鈴木が「『死神遣いの事件帖』は、ムビステの中では初めて続編を描いた作品となっています。前作を楽しんでいただいた方、今作から入っていただく方、両方の方に楽しんでいただいて、映画『月花奇譚』の開演を心待ちにしたいと思いますので、今日からが勝負だと思っています」と気合い十分に挨拶。
続けて「台本を見た時点で、毛利さんの脚本だと感じ、温かさというものが伝わったんです」と稽古を振り返り、「それが集まったキャストの個性がぶつかり合うと生まれてくるものがあって、そういうものも連続で作ってこれたのかなと思うと、この作品が毛利さん主宰の劇団 少年社中と同じような魂を持っている作品に仕上がっているんじゃないかと思えて、すごく嬉しくてワクワクしています」と久しぶりの毛利作品への出演への喜びを語った。
小林は「朝からすごく緊張していまして、舞台裏で先輩方にたくさん笑わせてもらいました」と笑顔を見せながら、「コロナ禍の中で、こうやって無事に初日を迎えられたことがあらためて嬉しいです。『死神遣いの事件帖』シリーズの中で新たに登場する死神として皆さんに受け入れられてもらえるような楽しい亞門を演じていきたいです」と意気込んだ。
神尾は「拡くん演じる幻士郎の父親・衒太夫として、名前だけは以前から出ていましたが、ようやく満を持しての登場ということと、共演するのがほとんど初めての若い方々なのでワクワクしております」と期待に膨らむ胸の内を明かした。
凰稀は「ずっと長い期間、皆さんと稽古をしてきまして、今日無事に初日を迎えられて本当に幸せです。この『死神遣いの事件帖』シリーズの中で初めて登場する役ですけど、皆さんに楽しんでいただけるように精一杯がんばっていきます」と意気込みを語った。
毛利は「2作目ではありますが、初めて私は久坂幻士郎、拡樹に会うことができました(笑)」と、前作舞台版には鈴木が登場しなかったこともあって喜びを露わにすると、「そんな思いを全力でぶつけて、非常に良い作品が出来上がっています。キャストの皆さんが本当に素晴らしくて、稽古をしていても本当に毎日が楽しくて、本当に自信を持って皆さんにお送りできる作品ができました」と自信をのぞかせた。
本作について、毛利は「よせばいいのに1作目で主人公・幻士郎を黄泉へと送ってしまい、本作でそれを復活させてくれと発注を頂きまして、なんとか発注に答えられたなと思っています(笑)」と冗談交じりに語ると、「それと、映画『月花奇譚』が素晴らしい出来上がりになっていまして、豪華だと本当に思えるつながりになっていますので、楽しみになると思います」とアピールした。
物語は、幻士郎が黄泉から現世に戻るが、幽霊となってしまうところから始まる。とある歌舞伎一門で起こった殺人事件で幽霊となった左十朗と、その左十朗を追って現れた死神・亞門の2人に出会った幻士郎は、ひょんなことから亞門とコンビを組んで、“幽霊探偵”として左十朗殺しの事件捜査に乗り出すのだが・・・。
歌舞伎一門の殺人事件が舞台ということもあり、本作の見どころとして、鈴木は「本作では、傾くというのが一つテーマになっています。仰々しい感じの格式高い歌舞伎ではないんですが、ところどころ生きざまを見せるようなかぶくとか、そういうものが随所に見られますので、それぞれのキャラクターをしっかり愛してもらえる作品になっていると思います」と語った。
シリアスな殺人事件をメインストリーとして据えつつ、キャラクターたちのコミカルで笑える演技も本作の魅力。その点を踏まえて、小林は「キャストの方々が個性豊かな方が多いので、稽古から笑ってしまうシーンがかなり多くてそういうところが、見どころです。稽古場で、毛利さんから「天丼(同じ笑いのネタやギャグを繰り返す手法)しようか」と、初めてお笑いのオーダーを演出家から頂きました(笑)。そういうコメディータッチの部分も楽しんで、幻士郎と亞門のコンビを楽しんでください」と呼びかけた。
その中でも、神尾が「今回のお話の一つのテーマとして、「父と子の愛情」というのもテーマになっています」と語る点について、「衒太夫は幻士郎の父親なんですけど、今回はあまり言葉では交わすことはなく、息子との会話はほとんど剣でしか語りません。そこを見ていただければと思います」と見どころとして挙げた。
そして、悪霊との戦いなどで展開する派手で傾いた殺陣も本作の注目ポイント。その点を、凰稀が「皆さんの立ち回りがすごくカッコイイんです。なんと言っても鈴木拡樹さんの立ち回りが天下一品です。そこがかなりの見どころです」と語ると、登壇者たちから「かなめさんもすごいですよ」と称賛の声が上がり、「ちょっと戦わせていただいています」と照れ笑いを見せた。
幻士郎を演じる鈴木は、普段は調子のいいかぶき者でありながら、事件を捜査する際の探偵としての有能さを持つ幻士郎という男を、鈴木らしい殺陣の華麗な所作と共に実に魅力的に演じている。そして、新死神にして幻士郎の新相棒である亞門を演じるは小林は、年下キャラのような可愛らしさとアクロバティックな立ち回りで、前回の死神・十蘭とはまた違った死神として、ステージに存在感を示す。
さらに、死神遣いとして名高い衒太夫を演じる神尾が、威厳のある振る舞いと力強い殺陣、息子・幻士郎への愛情といった深い演技を見せれば、凰稀がコミカル&チャーミングでありながら、能ある鷹は爪を隠す的な物語の展開に欠かせない役割を担う新キャラクターの恐山を見事に演じきっていた。また、一座の登場人物たちもそれぞれがユニークでにぎやかなキャラクターが揃っており、声の出演として声優・鳥海が作品にミステリアスさを加え、ストーリーに深みもたらしている。
コメディータッチな演出とシリアスな殺人事件の推理パートに、幻士郎と衒太夫だけでなく、左十朗と百翁の父と子の関係も織り交ぜられた人間ドラマ、そして殺陣。見どころ満載の毛利演出が存分に堪能できる非常にエンターテインメントした本格推理ファンタジー時代活劇という欲張りな舞台だ。
東映ムビ×ステ 舞台『死神遣いの事件帖 -幽明奇譚-』は、6月9日(木)から6月19(日)まで東京・ヒューリックホール東京、6月23日(木)から6月26(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。上演時間は約2時間(休憩なし)を予定。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)
東映ムビ×ステ 舞台『死神遣いの事件帖 -幽明奇譚-』公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2022年6月9日(木)~6月19(日) ヒューリックホール東京
【大阪公演】2022年6月23日(木)~6月26(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
スタッフ・キャスト
【原案】須藤泰司
【脚本・演出】毛利亘宏(少年社中)
【出演】
鈴木拡樹 小林亮太
廣瀬智紀
安西慎太郎 稲垣成弥 飯山裕太 山川ありそ 北村健人
清水宏 神尾佑 凰稀かなめ
杉本佳幹 夛田将秀 永森祐人 久留康太
【声の出演】
鳥海浩輔
【公式サイト】https://shinitsuka.com/(※舞台・映画共通)
【公式Twitter】@toei_movie_st
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