2022年2月1日(火)にミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』が上演される。日本初演となる本作について、ビジュアル撮影時の写真と、平間壮一、小関裕太のコメントを交えながら紹介する。
本作は、ニューオーリンズに実在した「アップステアーズ・ラウンジ」という同性愛者クラブで1973年に実際に起きた“アップステアーズ・ラウンジ放火事件”を題材にしたもの。事件は今も、同性愛者に対する衝撃的な事件の一つとして米国史に刻まれている。
ブロードウェイの若手作家マックス・ヴァーノンの作・作詞・作曲で2017年にアメリカ、オフ・ブロードウェイで初演。その後、全米各地、2018年にはオーストラリア・シドニーで初海外プロダクションが開幕、2019年のロンドン版に続き、2022年に日本版が誕生する。
平間が演じるのは、主人公で現代から突然1973年にタイムスリップしてしまう、若きデザイナー・ウェス役。そして小関は、突如現れたウェスに興味を持ち、次第に惹かれていく若い男娼パトリック役を演じる。
同じ事務所の先輩後輩でもある二人。同事務所主催の『ハンサムライブ』のステージなどに一緒に立ったことはあるが、共に作品作りをするのは12年前の『BLACK&WHITE』ぶりとなる。共演が決まった時、平間は「裕太と一緒にやれるんだ!という嬉しい気持ちはもちろんあったんですけど、舞台上に一緒に立つのは何年ぶり?という感じで、いろんな経験をしてきた僕らが一緒に作品作りをしたらどうなるのか、想像がつかなくて」と語った。
一方、小関は「僕は『FROGS』という、初めて共演した時のことをすごく思い出しました。当時、壮一さんだけじゃなくて、皆さんすごくお兄さんで。そんな頃から考えると本当に感慨深いというか、こういう形で共演できる未来があったんだということに驚きでした」と振り返った。
それもそのはず、当時の小関は小学校6年生。「待機時間中に濡れたティッシュを冷凍庫に入れ、稽古をして、終わった頃に凍っているのを見て喜んでいた」・・・そんな無邪気な子どもが、人を惹きつけてやまない青年に成長した。
物語の舞台は、ニューオーリンズ。現代を生きる若きファッションデザイナー・ウェス(平間)は、フレンチクォーターにある廃墟と化した建物を購入する。クスリでハイになった彼が窓にかかるボロボロのカーテンを引き剥がすと、その瞬間、活気に満ちた70年代のゲイバー「アップステアーズ・ラウンジ」にタイムスリップしていた。
そこは、同性愛がまだ罪とされていた時代に強い絆で結ばれた“はみ出し者”たちの拠り所。ウェスは、様々な事情を抱えた人々と触れ合い、時に厳しい70年代の現実を体感しながら、人と人の絆の意味を学んでいく。そして、パトリック(小関)との間に芽生えるささやかな恋。しかし、やがて「アップステアーズ」の秘密が明かされる“その時”が訪れて・・・。
あらすじには、「クスリでハイになる」「同性愛がまだ罪だった時代」など、センシティブな言葉が並ぶが、二人は「今、やることの意味」を強く意識していた。「実際にあった話ということもあり、説得力があるし、設定も曲も綿密に作り込まれている印象です。悲しさ、むなしさもすべて肯定して、芸術にしてこの思いを表そうとしているところは、コロナ禍の今と通ずるところがあると感じます」と小関。
平間も「まだ理想とする世界には遠いと思うんですが、日本でもLGBTQという概念が少しずつ受け入れられ始めていますよね。人はどうあるべきなのか。どんな人でも生きやすい世の中になればいいなあなんて思いながら、今やる意味を見出したいと思います」と意気込んだ。
平間は、過去にミュージカル『RENT』でドラァグクイーンのエンジェル役を演じた。演じるまでは、「自分自身は男の人を好きになるなんて想像できない」と思っていたそう。「でも、いろんなことを教えてもらって、実際に演じてみたら、男性が男性を“かっこいい”と思う気持ちはなんとなく分かったんですね。言葉ではなかなかうまく伝わらないかもしれないんですけど、人として見ているのかも!って。『RENT』を通して、人と出会った時に思うことが全然違うことを知ったんですよね」と、その感覚の変化を大事にしているようだ。
小関もまた、約1年かけてこの作品と向き合ってきた。「お話をいただいて、すごくやりたい!と惹かれたんですが、実際に演じるにはどう向き合っていけばいいのか、すごく悩みました。でも、一人で考え込むよりいろんな人を頼ることで視野を広げられる作品なのかなって。そして、それが今回のテーマに合っているんじゃないかなと思って取り組んでいます」。有言実行、小関は演出の市川洋二郎に長文のLINEで質問を送ったりして、研究してきたそう。
本作のビジュアルを撮影したのは、レスリー・キー。ビビットな赤と緑のライトが交わる中で、70年代と現代が入り交じる衣裳に身を包んだ平間と小関が身を寄せ合う。それぞれの片目にほどこされたきらびやかなメイクは、炎に包まれた「アップステアーズ」をイメージしたという。
レスリーからは「もっと頬くっつけて!もっと!」と要求が飛ぶ。二人はその言葉に高められながらも、自然と距離を縮めていく。「小さい頃から知っている裕太とだから、無理もなく、変な緊張もなく。でも、レスリーは容赦なかった(笑)」と平間。
「緊張はなかったと言いつつ、緊張しかけていました」という小関だったが、「くっついてみて、『わりと裕太って男なんだなって思ったよ。優しいし、女性に対してもどっちかというと下手(したて)なタイプだと思ってたんですけど(笑)。結構引っ張っていくタイプなのかもしれないって思った』と平間に言われると、爆笑が止まらずになったが、「壮一さんが演じるウェスに恋する気持ちを大事にしました」ときっちり付け加えた。メインビジュアル以外にも、パンフレットなどで使用される濃密な写真もお楽しみに。
そして、日本初上演で楽しみなのが、新たなミュージカル楽曲との出会い。小関は「いろんなジャンルが取り入れられていて、バラエティに富んでいます。ニューオーリンズの背景を感じられるポップな楽曲から、恋愛にガツガツしながらも繊細な部分をたくさん描いた楽曲まで。僕が演じるパトリックはバラードが多いので、強化してお届けしたいです」と気合十分だ。
平間も「ミュージカルというよりは、ライブみたいに聞ける曲が多いかもしれない」とその魅力を表現した。二人が出会い、恋に落ちていく細やかな心情を、古き良き時代を想起させながら響く楽曲との出会いを楽しみに待とう。
二人のほか、女性と結婚して子供もいる“クローゼットゲイ”のバディ役に畠中洋、シングルマザーのイネズ役にJKim、昼は建設作業員、夜はラテン系ドラァグクイーンで、イネズの息子フレディ役に阪本奨悟、孤独なホームレスの男娼デール役に東山義久、経験豊富な黒人男性ウィリー役に岡幸二郎。さらに関谷春子、大村俊介(SHUN)、大嶺巧と強い個性を持ったメンバーが揃う本作。しかし、ぶつかり合うのではない。多様性を認めるように、背中を預け合う彼らが作る日本初演の幕開けはもうすぐだ。
公演に向け、平間は「閉鎖された世界が開けるように、勢いをつけて進んでいきたいなと思いますので、皆さんぜひ観に来てください」、小関は「楽曲も素敵だし、ストーリーの持っているテーマも強いし、楽しんで観てもらいです。舞台だから、このタイミングでしか味わえないものがあると思うので、ぜひそれを共感してもらえたら嬉しいです」とそれぞれメッセージを寄せた。
ミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』は、2022年2月1日(火)から2月13日(日)まで東京・日本青年館ホール、2月24日(木)から2月27日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
ミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2022年2月1日(火)~2月13日(日) 日本青年館ホール
【大阪公演】2022年2月24日(木)~2月27日(日) 森ノ宮ピロティホール
スタッフ・キャスト
【脚本・作詞・作曲】Max Vernon
【演出・翻訳・訳詞・振付】市川洋二郎
【出演】
平間壮一 小関裕太/畠中洋 JKim 阪本奨悟
関谷春子 大村俊介(SHUN) 大嶺巧
/東山義久/岡幸二郎
【公式サイト】https://theviewupstairs.jp/
【公式Twitter】@viewupstairs_jp