小西遼生、北村諒、横田龍儀らが怪異な難事件に挑む!ミュージカル『鉄鼠の檻』レポート

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ミュージカル『鉄鼠の檻』

2024年6月14日(金)に東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて、イッツフォーリーズ公演 ミュージカル『鉄鼠の檻』が開幕した。初日当日に公開ゲネプロと取材会が行われ、京極夏彦(原作)、板垣恭一(演出)、小西遼生、北村諒、横田龍儀、神澤直也が登壇した。

ミュージカル『鉄鼠の檻』

目次

『魍魎の匣』に続いて『鉄鼠の檻』をミュージカル化

京極による「百鬼夜行」シリーズ第4弾として刊行され、17年にはコミック化もされた長編推理小説「鉄鼠の檻」を原作とし、作曲家・いずみたくが作った、日本のオリジナルミュージカルにこだわり続けるミュージカルカンパニー イッツフォーリーズによって初ミュージカル化される本作。イッツフォーリーズによる京極作品のミュージカル化は『魍魎の匣』に続く2作目となる。

上演台本・作詞・演出を、幅広いジャンルの作品を手掛け、日本版脚本&歌詞・演出を担当した『FACTORY GIRLS ~私が描く物語~』で第27回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞し、人間そのものや、その内面を丁寧に描く作風に定評のある板垣、作曲・音楽監督を、演劇『ハイキュー!!』、『僕のヒーローアカデミア The“Ultra”Stage』、舞台『鬼滅の刃』ほか数多くの舞台音楽を手掛ける和田俊輔が務める。

ミュージカル『鉄鼠の檻』

出演は主人公・中禅寺秋彦役に前回のミュージカル『魍魎の匣』から続投の小西。探偵の榎木津礼二郎役は前作から引き続き北村と、さらにミュージカル『刀剣乱舞』で注目された横田がWキャストで演じる。小説家の関口巽役も前作同様、イッツフォーリーズの神澤が務める。

また新たに、ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』でシン役を演じて人気の上田堪大や、舞台『刀剣乱舞』の数珠丸恒次役や映画『帝一の國』、さらにモデルとしても活動している高本学、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage-New Encounter-の神宮寺寂雷役などで活躍する小波津亜廉、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞し、映画『クローズZERO』シリーズなどで俳優としての活動のみならず、現在は音楽活動など精力的に活動する伊﨑右典、そしてイッツフォーリーズ公演には3度目の出演となる畠中洋らが出演する。

イッツフォーリーズ公演 ミュージカル『鉄鼠の檻』は、2024年6月14日(金)から6月24日(月)まで東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA、6月28日(金)から6月29日(土)まで大阪・サンケイホールブリーゼで上演。

『鉄鼠の檻』は通称“ツルミュ”?「ミュージカルでこんな作品は観たことない」と小西も胸を張る

取材会では、まず原作者の京極が「前回も歌ったんですけど、今回は歌がより多くなっています。難しい言葉は、喋るより歌うほうが覚えやすいかもとは思います。ぜひ全編を通じて、京極堂だけではなく歌を聴いてください」と難解な用語の多い本作のミュージカルシーンをアピール。

ミュージカル『鉄鼠の檻』

演出の板垣は「前代未聞のお坊さんミュージカルということが見どころです」と笑顔を見せつつ、「情報量のあまりに多さに、稽古をしていて僕がクラクラしていました(笑)。先ほど先生おっしゃってくださったように、背景のセットに用語を映しておりますし、まさに難しい言葉は歌ったほうが意外といけると思っています。決して難しい話ではないです。ついつい禅の話をしたくなっちゃうんですけれど、素敵なエンタメでもございますので、どうぞ犯人捜しなど楽しんでいただけたらと思います」と“禅”がキーワードになっている点も取り上げながら、本作の魅力を訴えた。

演出面について質問を受けた板垣は、原作のボリューム量に言及しながら「いかにこの情報を休憩入れて3時間の中に落とし込んで、お客様の体力を残しつつ終われるかということに全てがかかっております。映像の情報もパワーアップしていますし、関口を積極的に語り部に起用したりして、話が進むようにしています」と解説しつつも、「だけど、僕が思う原作の大切な部分は落としたくなかったんですね。僕が1番やりたかったのは“悟り”とは何かということと、やはり“禅”とは何かということです。それを舞台上に載せてみたいということに尽きています」と明かした。

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主演で、「京極堂」こと中禅寺を演じる小西も「禅には言葉が通じないという作品をミュージカル化することに対して、本当に覚悟がいりました。それぞれの言葉は知っているんですけども、それが通じない禅というものに対して、お客様にどうやって楽しんでもらおうかというのを、稽古からずっと試行策として作ってきました」と禅の話題と絡めて稽古の苦労を語った。

続けて「ミュージカルでこんな作品は観たことないと僕は思います。きっとお客さんもないと思います。そういう新しい作品が出来上がったと思いますし、通じない言葉ですけども、京極先生の言葉はすごくかっこいいと思うところがたくさんあります。その言葉そのものの意味というだけではなくて、言葉の響きとか、それがメロディーに乗ったりするときに、2乗でかっこよくなる、作品が大きくなるという手応えもあるので、そういう、いろいろな楽しみ方をしていただければと思います」と見どころを語った。

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Wキャストで榎木津を演じ、公開ゲネプロに出演した北村。「すごい情報量が多い中で、軽快な男が紛れておりますので、皆様がその情報量でパンクする前の癒しになればいいなと思って挑んでおります。楽しんでください」と初日を迎えて挨拶。

同じくWキャストで榎木津を演じ、2日目からの出演となる横田は開口一番に「僕は今日は出ません!」と笑いを誘うと、「この作品を初めて読ませてもらった時に、人間の欲についてすごく面白い作品だなと感じました。お客様には、その言葉の難しさだとかはあるかもしれませんが、その奥深くにある部分を楽しんでもらえたらなと思いますし、僕自身この作品を見てすごく禅に興味が湧いたので、そういう風な見方ができるんじゃないかなと思います」と本作の魅力を力説。

本作のストーリーテラーも務める関口役の神澤は「ちょうどゲネプロが終わって、僕もクラクラしているんですけど。今回も出ている場面が多く、その情報量も伝えていかなきゃいけないですし、それでお客さんもパンクしちゃうとかあるんですけど、まず僕自身がパンクしないようにこの後の初日を含めてやれたらなと思っています」と意気込んだ。

前作から同役で出演している小西、北村、神澤の3名。本作に臨む心構えを問われると、小西は「前回、僕の役は個人的な遺恨もある話だったので、メインストーリーに結構入っていたんですけど、今回はすごく腰が重いんです。最後の最後までメインストーリーに関わらないようにいるので、どう演じようかと最初に悩みました」と苦悩を明かし、「でも結局やることは一緒で、”読む隕石”と称される原作を読みまくりました。そして原作と台本を照らし合わせて、やっぱり書いてない情報、それから僕が知っていなきゃいけない情報を整理して、出ていなくても言葉を吐いた時にそれが説得力のあるようにする準備をたくさんしてきました」と語った。

ミュージカル『鉄鼠の檻』

本作へ臨むに当たって、前回の稽古動画を見返していたという北村は「どういう風に稽古していたのかなとか、歌の雰囲気だったりとか、なんとなく前回の記憶を呼び覚まそうとしていました。『俺はこの遼生さんの歌声にめっちゃ惹かれた』みたいなのがあったりとかして(笑)、今回の稽古に臨むのが楽しみになりました」と振り返った。

神澤は「僕は逆に前回を全く振り返らず、もう一度新しく関口を作り直そうと考えました。というのも、今回はストーリーテラーとして物語を語っていく部分も多いですし、前作から続く本作への期待もあるので、それを超えていかなきゃいけないというので、今回全く新しい関口を作って、それをまたこの作品として愛されるような作り方をしたいなと思って挑みました」と打ち明けた。

今回からカンパニーに加わることに関して、横田は「怖い人がいたらどうしようって思っていました(笑)」と答えると、登壇者たちも爆笑。改めて「でも、本当に役者さんたちも演出家さんもスタッフさんもみんな優しい方ばかりだったので、スッと入ることができました」とコメント。

さらにWキャストであることについては、「大先輩の諒くんとやらせてもらうということで、その緊張感はずっとありました。前回を観たお客様は絶対に諒くんの榎木津のイメージがついていると思いますので、なぞったほうが怪我はしないと思うんですが、同じことをやっても面白くないので、僕がまず率直に読んで感じた榎木津を演じて、稽古はやらせてもらっていました」と役作りを思い返し、「その中で注意されたところを直していこうという感じだったんですが、演出の板さん(板垣)が『それ面白いね』という風になんでも言ってくれて、逆に不安になりました(笑)」と稽古場でのエピソードを披露。

そして、「だからこそ、明日の僕にとっての初日に受けるお客さんからの反応が正解なのかと思っています。あとは”変人”という言い方は良くないですが、榎木津はちょっと一般の方からしたら変人に見られがちのため、僕は結構まともな人間ですが(笑)、ちょっと変人だと思われるように頑張りたいです」と茶目っ気たっぷりに語った。

ミュージカル『鉄鼠の檻』

取材会の最後には、公開ゲネプロを観劇した京極から「見どころがたっぷりあるので、初めて観る人もびっくりして喜ぶと思います。前作を観た人もガッカリすることはないと思うので、自信を持って、気楽にやっていただければと思います」と登壇者たちにエールが送られ、小西たちも気を引き締めた。

その小西は、メッセージとして「ミュージカルが好きな人もいれば、それぞれの役者が好きな人もいれば、演劇ファンもいれば、京極先生の作品のファンもいれば、本当にたくさんの方が来てくださるものになるかなと思いますし、そうなってほしいです。そうなった時に、それぞれの場所のそれぞれの出自の方が違う一面で楽しんでもらえるような、多重の結界が張られている作品になっていると思います」と原作のキャッチコピー「京極堂、結界に囚わる」を交えながら、「難しいものは難しいまま届けますけども、その難しいものも面白くなるような工夫をしていますので、そのまま体で受け止めて、感覚で受け止めて楽しんでいただければなと思います」と呼びかけた。

加えて、「あとは個人的にですが、坊さんがいっぱい並んで舞台上にひしめき合っているミュージカルは初だと思います(笑)。ツルツルしています。ツルミュです。ぜひ皆さん、こうご期待。楽しんでください」と笑顔で締めた。

禅と悟りが深く関わる連続殺人に挑む京極堂らの活躍を描く

Wキャストの榎木津役は北村で公開されたゲネプロ。物語は、戦後まもない昭和28年の箱根において、山中に建てられた大寺の明慧寺(みょうけいじ)を舞台として展開する。

ミュージカル『鉄鼠の檻』

明慧寺の僧侶である小坂了稔から、とある古物の買い取りの依頼を受けた古物商の今川雅澄は、箱根で、老医師の久遠寺嘉親、明慧寺に取材で訪れていた鳥口里美と中禅寺敦子と知り合う。そんな彼らの前に、座禅を組んだような姿勢の小坂の遺体が現れる。一行に、久遠寺が呼び寄せた探偵の榎木津も加わり、彼らは事件を捜査する。

一方、箱根山中の蔵から見つかった書物の鑑定のために、箱根を訪れていた「京極堂」こと中禅寺と、彼の友人で作家の関口だったが、彼らもまた事件に巻き込まれて行く。

ミュージカル『鉄鼠の檻』

見立てのような僧侶連続殺人事件、山中を彷徨する振袖の娘、そして鼠の僧と檻にまつわる怪談。陰鬱な箱根山中の大寺で起こる怪奇の連続と、言葉・言霊が通用しない禅と悟りが関わる事件に、“憑物落とし”専門の神主も務める京極堂も苦闘する・・・。

本作は、今川と榎木津ら一行と、京極堂と関口の2つのシーンで物語が進んで行く。ミュージカル仕立てによるキャラクター紹介やストーリー展開によるテンポの良さに加えて、今回は関口がストーリーテラーとしての役割を務めることにより、大ボリュームとなっている原作を舞台としてまとめ上げる演出となっている。

さらに、原作の魅力の一つでもあるが、禅や悟りにまつわる仏教の歴史や宗派の難解な用語の数々、ミステリー作品の醍醐味でもある謎を秘めた多くの登場人物たちについて、背景セットへの映像による解説などによって、観客へ分かりやすくするための工夫が随所に見られる。その演出の数々により、謎多き明慧寺で、僧侶が次々と殺されていく事件に巻き込まれる京極堂たちの活躍を、ミュージカルとしてエンターテインメント性を高めながらステージ上に描いている。

取材会でも小西が語っていたが、今回の京極堂はここぞというところでの登場となっているが、京極堂によるミュージカル化された“憑物落とし”という本シリーズならではの見せ場も交えながら、前作から神秘的な人物である京極堂を存分に演じている。

北村は、常軌を逸したような振る舞いと傍若無人な様を発揮し、名探偵ぶりを披露する眉目秀麗な榎木津を軽妙に演じ、緊張感が張り詰める本作の中で、アクセントとしてのエンターテインメント性をもたらしている。そして、神澤は関口としてのキャラクターとしての役割と、物語のストーリーテラーを兼ねる難役を演じきっていた。

ミュージカル『鉄鼠の檻』

その3人を中心として、上田、高本、小波津、伊﨑らが、僧侶たちの俗人が計り知れない世界や精神と、その裏に秘められた人間的な欲を演じ上げることで、禅と悟りが深く関わる原作の魅力を引き立てた重厚なミステリー・ミュージカルとなっている。

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

『鉄鼠の檻』あらすじ

舞台は昭和28年初春。古物商を営む今川雅澄は、明慧寺の僧侶、小坂了稔から<世に出ることはあるまじき神品>を買い取って欲しい、との依頼を受け、箱根山中の「仙石楼」に投宿する。食客として逗留していた老医師、久遠寺嘉親と碁を打つ日々を送りつつ、了稔からの続報を待つ今川。

しかし、そんな彼の前に突如現れたのは、座禅を組んだような姿勢のまま死んでいる、小坂了稔の遺体であった。周りに足跡はなく、不可解な現場に旅館は騒然となる。

一方、時を同じくして箱根を訪れていた憑物落としの古本屋、「京極堂」こと中禅寺秋彦と、その友人で陰気な作家、関口巽も事件に巻き込まれてしまう。更に、神奈川県警の横暴な捜査に業を煮やした久遠寺が、探偵の榎木津礼二郎を呼んでしまったことにより、榎木津も事件に関わることに。やがて一行は、仏弟子たちが次々と無惨に殺される謎の巨刹・明慧寺を舞台にした「箱根山連続僧侶殺害事件」の只中に飛び込んでいくこととなるのだった。

ミュージカル『鉄鼠の檻』公演情報

<上演スケジュール>
【東京公演】2024年6月14日(金)~6月24日(月) 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
【大阪公演】2024年6月28日(金)・6月29日(土) サンケイホールブリーゼ

<スタッフ・キャスト>
【出演】
中禅寺秋彦:小西遼生
榎木津礼二郎:北村諒・横田龍儀(Wキャスト)
関口巽:神澤直也
和田慈行:上田堪大
山下徳一郎:高本学
杉山哲童:小波津亜廉

鳥口里美:大川永
中禅寺敦子:宮田佳奈
松宮仁如:伊﨑右典
大西泰全:森隆二
中島祐賢:吉田雄
飯窪季世恵:近藤萌音
菅野博行:藍実成
今川雅澄:原悠輝
和田智稔:岡田翔大郎
加賀英生:山下真人
鈴/松宮鈴子:身内ソラ
益田龍一:光由
小坂了稔:志賀遼馬
菅原剛喜:宮村大輔

桑田常信:松原剛志
久遠寺嘉親:福本伸一
円覚丹:内田紳一郎

仁秀:畠中洋

<カンパニーキャスト>
岩城風羽
吉田美緒
塩嶋一希

【原作】京極夏彦「鉄鼠の檻」(講談社文庫)
【上演台本・作詞・演出】板垣恭一
【作曲・音楽監督】和田俊輔

ミュージカル『鉄鼠の檻』公式サイト・SNS

【公式サイト】https://www.tessonoori-musical.com/
【公式X(Twitter)】@tessono_musical



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