切り開き続ける“北園涼”という領域「Frontier」ライブレポ(アコースティックver.)


約2年前にアーティストとしてメジャーデビューした俳優の北園涼。2021年2月3日には、2枚目となるオリジナルアルバム「Frontier」を発売。これを引っさげ、福岡、名古屋、神戸、大阪、東京を巡る全国ツアーを開催。本記事では、2月27日(土)に東京・HY TOWN HALLで行われた1部アコースティックLIVEの模様をレポートする。

北園のアーティスト活動に興味を持ったのは、今年1月に行われたミュージカル『刀剣乱舞』五周年記念 壽 乱舞音曲祭で、北園が小狐丸役として披露した歌声が、あまりにも進化していたからだ。様々な作品に関わる中で切磋琢磨してきた結果でもあると思ったが、それだけではない、歌声を裏打ちする何かがあるような気がした。

ゆっくりと客席の電気が落ち、ステージにゆっくりと北園が現れる。アコースティックLIVEということで、ギタリストの中嶋康孝が爪弾くギターの音色に乗せて、「東京1日目ということで・・・よろしくお願いします。では、この曲から」と、アルバム「Frontier」のラストを飾る「Over the little night」でライブをスタートさせた。この曲は、映画『BLOOD-CLUB DOLLS2』の主題歌にもなっていたが、ギター1本の演奏で聞くとまったく違う表情を見せる。

2曲目も「Frontier」収録の「Road」。希望を持ち、自分自身を信じて進もうと鼓舞する歌詞を、北園の高音が、春を待ち望む澄んだ空気の中をまっすぐに飛んでいく。歌い終えると、「客席を少し明るくしてもらえますか?」と呼びかけた北園。明かりの中、じっくりと音楽に聞き入っていた観客の姿を目にして、薄く微笑む。

アルバム発売から約1ヶ月かけて全国を回ってきたが、「早いですね・・・」とぽつり。実は、昨年夏にも同タイトルで全国4ヶ所のツアーを予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、無観客での配信ライブとなったため、東京だけでなく、全国各地で様々な観客を目の前にしてライブを行えたのは、感慨深いものだったようだ。

今回のツアーは、アコースティック形式で行うことが多く、合間に中嶋と交わすMCもゆったり。各地域の名産品の話から、北園が読んでいる本(AIについて書かれている本を読んでいたそう)の話など、いつかお正月をハワイで過ごしたい話など、今の北園の等身大の姿が伺える内容だった。

続いて3曲目は、1stシングル「Long way to Go」を披露。切れ味の良いギター音と、中嶋のハモリと呼応するように、北園の歌声にも熱が帯びる。「・・・間奏のギターの音が好きなんですよね。中嶋さんのギターの音、本当にかっこいい」と北園。ツアーで初めて舞台上で褒められたと照れる中嶋に、「リハーサルを客席から見たりもしたんですけど、やっぱ、楽器できるってかっけぇなあって思ったんですよね」と、北園は憧れを口にした。

このツアーで、北園はアコースティックギターを始めてみたいと思ったそうで、それを聞いた中嶋はすぐに楽器選びができるように動いたという。「でも、試奏するほどギターに詳しくないからなあ・・・。どうやって決めたらいいんだろう?」と悩む北園に、中嶋は「この音好き、見た目が好き、自分が“弾きたい”と思う感覚を大事にしてほしい」と言う。

ギターは木で作られているため、一つとしてまったく同じ音が鳴るものはない。なお、北園のイベントでは以前に中嶋のギター音を聞き分けるクイズが出題されたそう。「もちろんすぐ分かりましたよ。その時、こんなにギターって音が違うんだって分かったんです」と、北園は見事に全問正解したそうだ。

そんな北園に、「家で鳴らして、『この音いいな』と思ったら、曲が浮かびますよ」と中嶋は一言。北園はすでに作詞にチャレンジしているが、いつか“作曲”にクレジットされる日が来るのかもしれない。

4曲目「Drive」も、小気味良いギター音が気持ちいい1曲。舞台上の高まるテンションに、客席も楽しそうにリズムに乗っている。コロナ禍で声を出して盛り上がることはできないが、静かな中にも一体感が生まれた。

次の5曲目は、一転してしっとりと聞かせるバラード「君のそばで」。大切な人へ伝えたいコトバを、丁寧に丁寧に紡いでいくその歌声は、非常にドラマティックで、アコースティックver.に映えた。

北園にとって、初となったこのライブツアー。「いろんな場所で、いろんな人に会えて、ライブができて本当に楽しかったです。また出来たらいいなと。各地で『必ず戻ってきます。また新しい曲を作ってくるので、また一緒に楽しみましょう』と言ってきたので、叶えられるよう、がんばっていきたいですね」と、決意も新たにしたようだ。

2月9日に、29歳の誕生日を迎えた北園。特別何かあるわけじゃないけれど、どこか意識する年齢。だけど、北園はフラットだ。そして、冷静。だから、リリースしたばかりのアルバム表題曲「Frontier」で彼自身が手掛けた詞を読んだ時には驚いた。まっすぐな道の先に昇る朝日に駆け出していくような、そんなイメージを抱いた。それは、俳優として見てきた彼の印象とは少し違っていた。

6曲目として「Frontier」を披露する時、彼はこう言った。「これから先も、こういう曲を増やしていきたい」と。夢を見るだけでは終わらせない、強い意思を感じる一言だった。

そして、ライブは終盤へ。7曲目は2ndシングルとしてリリースした「Just call me the Beast」、ラストナンバー「ヒカリアレ」へ。曲に入る前、北園は「振り返れば、お金がなくて自分の面倒もちゃんと見れていない時期もありました。余裕がなかった。でも、そういう時期を乗り越えたから、人に優しくしたいし、がんばっている人を応援したいという気持ちも芽生えた。あの時期は無駄じゃなかったけど、できれば戻りたくないなあ・・・。皆さんも、今一生懸命やっていることを諦めないで、その先を見つけてほしいなと思いました」とぽつりと語った。

「自分を認めていけば見える景色が変わるだろう――」。北園は、この歌詞を体現しているように思えた。アーティストとして活動するということは、俳優として「役」の言葉を伝えることとは少し違い、一人の「個人」として、音楽を通して自分の言葉も伝えていくということ。MCの中で北園は、いつか地元である鹿児島でライブをしたい、いつか両親へ家を贈りたい・・・など、個人的な夢も語っていた。自分の「現在地」を言葉にすることで、広がる“北園涼”という領域。

以前、北園をインタビュー取材した際「この人はとても聞き上手な人だな」と感じた。こちらが求めるものに的確に答えてくれるだけでなく、共演者に話を回してくれる。とてもクレバーで、冷静。それは、舞台上で見せる芝居の中でも北園に感じる、個人的な印象だった。それ故に、刀ミュ「乱舞音曲祭」で感じた変化への驚きは大きかった。冷静さの一歩先へ、彼の背を押したのはなんだったのか。

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ライブを見てその驚きが納得に変わった。「ヒカリアレ」のラスト、彼はアカペラで歌い上げた。その歌声はエモーショナルで、祈りのようで・・・内面から湧き出てくるものすべてが、輝いて見えた

北園は、このアーティスト活動を糧にするだけでなく、「表現者」としてのもう一つの軸として、さらなる自分の可能性を切り開いていくことだろう。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

北園涼 LIVE TOUR 2021「Frontier」

【福岡】2月6日・2月7日 bar evoL
【名古屋】2月20日 HOLIDAY NEXT
【神戸】2月22日 VARIT.
【大阪】2月23日 MUSE
【東京】2月27日・2月28日 HY TOWN HALL

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