新作ならではの創作の格闘!音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』海宝直人平間壮一インタビュー


モーツァルトの名作オペラに関する影の立役者・ダ・ポンテを描いたオリジナル音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』が、プレビュー公演を終え、7月9日(日)より東京・愛知・大阪を巡る。本作では、海宝直人がダ・ポンテ役、平間壮一がモーツァルト役を演じ、2つの才能が出会い、共に過ごしたかけがえのない時間をオリジナルの音楽と共に綴る。

何事も、最初に課される生みの苦しみ。本作でも、カンパニー一丸となった創作が行われ、日々壁にぶち当たりながらも「よりよい作品になるように」と、新作ならではの創作の格闘が行われてきたようだ。その過程を、海宝と平間の二人に聞いた。

――新作の創作となりましたが、いかがでしたか?

海宝:基本的には、順調ということはなく(笑)。課題に直面しながら、みんなで頭の中をぐちゃぐちゃにしてやってきました。

平間:直した先に、また壁があるみたいな状態だったよね。

――史実のダ・ポンテを調べると、なかなか破天荒なエピソードが満載で、海宝さんが演じられることに驚きを感じていました。

海宝:作品全体がポップな方向性で描かれているので、ダ・ポンテもチャーミングなんですよ。前半は特にね。女好き故に「詐欺師」として法廷に上がるシーンもあるんですが、そういうところも楽しく描かれているので、少し史実のイメージとは受け取り方が変わるかも。

平間:ポップはポップなんですが、伝えるべき芯が感じられるのは、海宝くんが細かいところまで大事に演じているからだと思うんだよね。「詐欺師」って言われるぐらいやっていることはひどいことだったりするんだけど、それもなんか許せちゃう気がして。きっと、お客さんも詐欺られちゃうような、面白い感覚になると思います(笑)。

海宝:(笑)!

――歌唱披露イベント時、平間さんは、いろんな形で描かれてきたモーツァルトという人物を「普通の青年」に感じるとおっしゃられていましたよね。

平間:そうですね。モーツァルトって、名前が広く知られていて誰もがイメージできるじゃないですか。その分、みんなの想像するモーツァルト像として、どこに着地させるのかがすごく難しいなって。最終的な形は幕が開くまで模索することになると思いますが、できるだけ普通の青年として演じたい。モーツァルトは天才と謳われているけれど、そうじゃなくて、人一倍やってきただけで、僕らと変わらない存在として受け取ってもらえたらいいなと思っています。

海宝:壮ちゃんがそもそも持っているもの・・・自分ではあまり意識していないであろうアーティスティック性が自然と乗っかっているんですよ。それが、この作品におけるモーツァルトのピュアさや熱さとない交ぜになって、壮ちゃんだけのモーツァルトが着実に出来ているなって感じがしています。

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――お二人もとても仲良しですが、座組全体もほんわかした感じですよね。

海宝:それぞれの思っていることを出しやすい空気があります。演出の豪さんも「みんな意見を出して」というスタイルで稽古を進めていらっしゃるので。新作を作る時は意見や考えが衝突することもあるけど、みんな建設的に進めていこうという空気が漂っているよね。

平間:そうそう。ちょっと家族みたいだよね。上辺だけで話してないというか、みんな素のままでいるから、行き詰まった時はやばい空気になるの(笑)。みんな正直なので、「このままいくのは無理だ!」ってなったら、稽古中のシーンを途中で止めて冷静に考えます。キャスト側からも「こうした方がいいかな?」と思ったら正直に申告して豪さんと相談しながらやってきました。この現場ならではだよね。

――青木豪さんの演出を受けるのは、お二人とも初めてですよね。

平間:『黒白珠』で豪さんの本をやらせていただいたことはあるんですけど、演出を受けるのは初めてです。豪さんは、台本に書かれている言葉一つ一つがどんな意味合いを持っているのか、すごくこだわっていらっしゃるんだなと思いました。豪さん自身が脚本を書かれる方なので、脚本のことをリスペクトしていらっしゃるのが分かるので、僕らも言葉の順序なども大事にやっていけたらと思っていますし、すごく勉強になっています。

海宝:あと、すごく役者目線でいてくださるよね。新作をやる時って、本として読む分には成立していたものが、いざ立って演じてみるとノッキング(スムーズにしゃべれないこと)が起きたり、うまく嚙み合わなくなってしまうことがどうしても出てくるんです。そういう時も、すごく柔軟に演じる側の整理に合わせて作っていこうという思いでやってくださっているなという印象です。

あとは、すごく楽しいことが好きな方なんですよ。稽古中、笑いの方向に振り切りすぎて「ちょっとふざけすぎちゃったね・・・」って反省したり(笑)。

平間:見た目のイメージとちょっと違うよね(笑)。すごく楽しいことが好きな方なんだなあって思った。

海宝:そうだね。ふと見ると楽しそうに笑っていらっしゃったりして、そういうのもきっと作品に反映されているよね。特に、一幕はとても楽しい空気なので、皆さんにもきっとそれを感じていただけると思います。

――いい雰囲気の中、オリジナルを生み出す戦いが繰り広げられていたんですね。

海宝:みんな、ミュージカルを多く経験している人が集まっているし、稽古序盤はすごく平和に、するするっといけたんですよ。2幕まで全部演出がついたあたりからですね、オリジナルの戦いが始まったのは。通してみて、問題点を洗い出してからがね。

平間:それも、豪さんとみんなで話しながら修正していけたのが、よかったよね。

海宝:「こんな台詞はどうですか」とか、役者側から提案して、「それいいね、採用しよう」みたいなことがあったり。リアルタイムに僕らが積み上げてきたものを、オリジナルとしてお見せできると思います。

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――お二人のお気に入りの場面なども教えていただきたいです。

平間:僕たち(ダ・ポンテとモーツァルト)の出会い方が特殊!

海宝:確かに。出会いのシーンは印象的かもね。

平間:僕はそこ、好きですね~。多分、あんまりこういう描かれ方はしないと思う(笑)。

海宝:歌もね、僕ら二人とみんなで歌うビッグナンバーがありまして。一幕の終盤、ぜひご注目ください。

平間:逆に難しいところでもあるんだけど、時間の流れがちゃんと伝わるといいよね。シーンが変わるごとに年代が進んでいって、二人は少しずつ歳を重ねていくんですが、話の流れの中で時間が進んでいくので、その間にあったことを含めて表現していかないといけないんです。若い頃から80歳過ぎまでを描くから、その変化の過程も楽しんで観てもらえたらいいな。

海宝:映像の演出も結構あるらしいので、そこは僕らも楽しみだったりします。

――また、本作は「音楽劇」ですが、すごく曲数も多いと聞きました。

海宝:そうなんです。蓋を開けてみたら30曲以上ありました(笑)。でも、いわゆるミュージカルとは少し違って、作品の時代に即して、当時の音楽を取り入れつつ構築されているのが「音楽劇」としてのおもしろさになっていると思います。

平間:ずっとクラシックが流れているように、曲が流れていくんですよね。その中でも僕は、海宝くんが歌う「言葉の媚薬」が好き。あれ、めちゃくちゃかっこいいから、皆さんにも楽しみにしていてほしい。あと、コンスタンツェの「行ってらっしゃい、待ってるから」もかわいいよね。

海宝:「行ってらっしゃい、待ってるから~♪」(歌う海宝さん)。あれ、かわいいね。壮ちゃんが歌う「僕が拍手するんだ」も好きだな~。とてもいい曲。あと、ナンシーがダ・ポンテに歌ってくれる「思い出して、ロレンツォ」もいいね。挙げだしたらきりがないな(笑)。

平間:この作品の音楽、総じて素敵ですよね。愛らしいというか、曲に温かみがあるんです。それが、この音楽劇の良さになってると思う。

海宝:確かに!あとは、ヴィヴァ!だね。サリエリを演じる相葉くんの歌う「ヴィヴァ、イタリア!」。

平間:あれは本当にいい!カーテンコールとかでも流してほしい。

海宝:みんなであれ歌いながら劇場を後にしてほしいぐらい!

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――やはり、あの曲は皆さんのお気に入りなんですね。

海宝・平間:お気に入りです!!

――劇場でたくさんの音楽と物語に触れることを楽しみにしています!

平間:ぜひ!今はいろんなエンターテインメントがありますが、オペラは昔から愛されてきた芸術です。詞で人を魅了するって、本当にかっこいいことだなと思いました。人間、みんな言葉を使ってコミュニケーションを取っているけれど、それを当たり前にしない。観に来てくださった人たちにも、この作品の音楽と言葉が届いて力にしてもらえたらいいなと思います。

海宝:稽古が進む中で、登場人物のキャラクター性がどんどん魅力的になっていくのを感じました。楽曲も30曲以上あって、それぞれのソロもあり、見どころがたくさんあると思います。創作の過程ではたくさん壁にぶち当たって、中にいると麻痺して何が正解か分からなくなったりもするんですが、それを乗り越えて、楽しい作品、観て元気になれる作品にきっとなっていると思います。ぜひぜひ、劇場へお越しください!

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』公演情報

上演スケジュール・チケット

【プレビュー公演】2023年6月21日(水)~6月25日(日) シアター1010
【東京公演】2023年7月9日(日)~7月16日(日) 東京建物Brillia HALL
【愛知公演】2023年6月30日(金)・7月1日(土) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
【大阪公演】2023年7月20日(木)~7月24日(月) 新歌舞伎座

スタッフ・キャスト

【脚本】大島里美
【音楽】笠松泰洋
【演出】青木豪

【出演】
ロレンツォ・ダ・ポンテ役:海宝直人
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト役:平間壮一
アントニオ・サリエリ役:相葉裕樹
フェラレーゼ役:井上小百合
ナンシー/オルソラ役:田村芽実
コンスタンツェ役:青野紗穂
皇帝ヨーゼフ二世役:八十田勇一

ほか

公式サイト

【公式サイト】https://www.tohostage.com/dp/
【公式Twitter】@da_ponte2023







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