橋本良亮と佐藤流司“2人の天才がシノギを削って作り上げた”音楽劇『逃げろ！』ゲネプロレポート

演劇

橋本良亮（A.B.C-Z）が主演する、音楽劇『逃げろ！』～モーツァルトの台本作者ロレンツォ・ダ・ポンテ～が、2023年2月10日（金）に福岡にて開幕する。これに先駆け、2月3日（金）に都内で公開ゲネプロが行われ、橋本のほか、佐藤流司、渡邉美穂、弓木大和、内河啓介、細見大輔、篠井英介、村井國夫が取材会に登壇し、意気込みを語った。

本作は、モーツァルトの３本の傑作オペラ『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』の台本を書いたイタリアの詩人で台本作家ロレンツォ・ダ・ポンテの奇想天外な”逃げる”人生を、史実をもとにロック・アレンジされた疾走感あふれる音楽に乗せれ鋭く描き出す音楽劇。主人公の“自称天才” ロレンツォ・ダ・ポンテを橋本、言わずと知れた“天才”モーツァルトを佐藤が演じる。演出は鈴木勝秀が担当。

取材会で、橋本は「一人ひとりの衣裳を見ていただいて分かる通り、ここから何が生まれるんだろうと不思議な空間だと思います。中身もすごいんです。セットも何もないので、3D映画のような舞台です。幕が開いたら、僕たちがセットとなって出てくる、飛び出し絵本のような作品になっています」と本作について言及。

演じるダ・ポンテについては「あまり知られていない人物で、どんな人物かもわからなかったので最初は不安でした。ですが、台本を読んで陽気な人だなと思いました。演じるのは難しいですが、がんばりたいと思います」と語った。

一方、佐藤は「（今作は）公演時間は2時間以内に収まりますが、それでも“VHSの3倍録画”くらいボリュームがあると思います。結構な台詞量があり、感情の起伏も目まぐるしいですが、普通の舞台以上に楽しませられるんじゃないかなと思います」とアピール。

ココ役を演じる渡邉は「お話にも注目してほしいですが、それに加えて音楽も楽しんで観てもらえたらいいなと思います。女性キャストが私一人なので、皆さんのかっこよさに加えて、華やかさや艶やかさを添えられたらいいなと思っています」と意気込んだ。

また、バレッラ役の弓木は「明るくて、ダ・ポンテさんを心から尊敬している役柄なので、その明るさで皆さんの心を明るくしたいと持っています」、カサノヴァ役の細見は「この舞台は2人の天才が登場しています。2人の天才が稽古場からシノギを削って、今日の舞台を作り上げていますので、そこが見どころだと思います。2人の天才をぜひ見てください」、ラザロ役の内河は「村井さんのお付きの役なので、粗相がないように最後まで務めていきたいと思っています」とそれぞれコメント。

そして、サリエリ役の篠井は「時代物ではありますが、奇想天外。スピーディーに展開していって、かなりアバンギャルドな舞台になっていると思うので見ものです。グングン引き込まれることは間違いありません」、ヨーゼフ2世役の村井は「老骨に鞭打って頑張りたいと思います。頭からロックが流れているので、刺激的な舞台になると思います」と思いを寄せた。

これまでの稽古について聞かれると、橋本は「１ヶ月以上ありましたが、飽きたことはなかったです。毎日、みんな芝居を変えてくるんですよ。それを観るのが楽しいんです。それを観ていたからこそ成長していきたいと思えたんだと思います」と話した。そんな橋本の座長ぶりについて、渡邉は「女性が一人ということもあって、正直不安もあったんですが、たくさん話しかけてくださり、毎日『ココ、元気か？』『寝てるか？』と確認してくださっていました。そうした一言で緊張がほぐれました。素敵な座長に必死についてきました」と明かした。

最後に橋本は「この作品は『ヤバくなったら逃げろ』という言葉がキーになっています。僕自身、この言葉に助けられました。コロナ禍で色々とありますが、ヤバくなったら逃げ出していいんだと考えたからこそ、ここまでやってこられたんだと思います。なので、皆さんにも『ヤバくなったら逃げていいんだよ』と伝えたいと思います」と語り、取材会を締めくくった。

物語の舞台は、1779年のウィーン。ヴェネツィアを追放され逃げ出してきたダ・ポンテが、オーストリア・ウィーンで桂冠詩人として成り上がり、そして神聖ローマ帝国皇帝ヨーゼフ2世の死とともに追い詰められ、ウィーンも逃げ出す羽目になる彼の人生の栄枯盛衰を描いた本作。橋本の言葉通り、ステージには紗幕がかかり、その裏側にバンドメンバーが控えるだけで、セットの類は一切ない。それゆえ、キャストたちの会話のやりとりで観るものを惹きつけていく。

全編に渡って台詞の掛け合いが続くが、大嶋吾郎が率いるバンドが合いの手を入れたり、バックミュージックを生演奏することで、緩急がつき、観客を物語の世界にグッと引き込んでくれる。

ダ・ポンテは、女好きでギャンブル好き、話術で世の中を歩いてきた人物。そうした役柄を橋本が演じることで、仄暗さのない、爽やかさやクールさも感じられるキャラクターになっていた。だからこそ、物語のラストでモーツァルトを諭すシーンの説得力が増していたのではないかと思う。ダ・ポンテの言葉に「逃げてもいいんだ」「必要とされるところに行けばいいんだ」と勇気をもらえた。

一方、佐藤が演じるモーツァルトは、常識はずれで、天真爛漫さを感じさせるキャラクターに仕上がっていた。ニコニコしながら辛辣な言葉を吐く姿は、とても愛らしくもあり、同時に面倒そうな人物にも映る。そのバランスが絶妙で、“天才”をポップに、明るく表現していた。

最後に、本作の見どころの一つである音楽にも触れておきたい。橋本や佐藤をはじめとしたキャストたちによって歌われる楽曲はどれも耳馴染みがよく、盛り上がること間違いなし。モーツアルトのオペラをロックアレンジした楽曲は、クラシックを知らない人でも「聞いたことある！」という曲ばかりなので、身構えずに楽しめることだろう。橋本と佐藤の歌での掛け合いにも注目だ。