『ネバー・ザ・シナー -魅かれ合う狂気-』辰巳雄大×林翔太×演出・君塚良一インタビュー「毎日、誘惑していきたい」


映画『グラディエイター』『ラストサムライ』などの脚本を手がけたハリウッドの脚本家ジョン・ローガンが「ローブとレオポルド事件」を題材に執筆した戯曲『ネバー・ザ・シナー -魅かれ合う狂気-』。

「ローブとレオポルド事件」とは、ミュージカル『スリル・ミー』の題材としても知られ、裕福な家庭に生まれ、天才と呼ばれた恋人関係にあった大学生2人が、誘拐殺人事件を起こした事件。本作では、辰巳雄大を主演に迎え、これをストレートプレイで描く。演出は、「踊る大捜査線」シリーズを世に送り出したことでも有名な君塚良一。君塚にとっては、本作が初めての舞台演出作品となる。

今回、主人公リチャード・ローブを演じる辰巳と、ローブとともに事件を起こしたネイサン・レオポルド役の林翔太のビジュアル撮影現場を取材。2ショット撮影の模様をレポートとインタビューでご紹介する。

(取材・文/嶋田真己)

ビジュアル撮影レポート

ビジュアル撮影が行われたのは、某都内ホテルにあるバー。天井からはシャンデリアがぶら下がり、英国調のクラシカルなインテリアで統一された落ち着いた雰囲気の店内だ。辰巳と林は、そこに3ピースのスーツをビシッと着こなした姿で登場した。

最初の撮影は、2人が身を寄せ合いダンスを踊る姿からスタート。カメラを向けられると、2人はまるでいつもそうしていたかのようにスッと身を寄せ合ってポーズを決め、様々な表情を見せる。林に触れる指先にまで色気を感じさせる辰巳と、それを当たり前のように受け入れる林の姿は、この作品の役柄同様、恋人のそれだった。

続いてソファを使った撮影が行われた。林がソファに腰掛け、その後ろから辰巳が絡み付くように抱きつく。自然と手を握り合う姿も見られ、息もピッタリの様子。撮影中には、林から「辰巳くん、セクシーだね」という声も上がる。撮影が終わると、辰巳が林を労うかのように肩をポンと叩いたのが印象的だった。

最後に、立ち姿でのカット。少しずつ場所を変え、表情を変えて行われた。撮影終了の声がカメラマンから上がると、2人はその場でハグ。満面の笑みを浮かべた。

インタビュー

――本作は、実際にあった「ローブとレオポルド事件」を原案にしていますが、この事件のどんなところに興味を惹かれたましたか?

君塚:僕は、事件のことはぼんやりとしか分からなかったから、まずは台本を進めていただいたんです。それで、(出来上がったものを)読んだら、とにかく面白かった。非常に大変な事件を扱っているのに、テンポが良いんですよ。それから、この作品には、いくつかのテーマがあって、その一つがおそらく歴史上初のサイコパス殺人を描いているということ。それから、LGBTQ。さらにもう一つ、死刑の是非についても問題提起されています。こんなにもテンポが良くて、事件ものとしても面白いのに、きちんとテーマが問いかけられているすごく良くできた本だな、と。見終わった後、観客の方はきっと彼ら二人の青春ドラマを感じると思います。重い事件なのに、ちょっと爽やかでキラキラしていて、非常に魅力的な物語であり、台本だと僕は思います。

辰巳:僕は、この事件のことを『スリル・ミー』というミュージカルを通して知りました。前知識がないまま『スリル・ミー』を見て、この「ローブとレオポルド事件」を題材にしているというのを後から知って。この役に決まる前に、興味を惹かれて事件のことも調べたことがあるんですよ。僕が興味深いなと思ったのは、天才で頭がキレる二人で、「完璧な犯罪を犯そう」「俺らは完璧人間だ」と言っているのに、殺してしまった方法はすごく子どもっぽく突発的なものだったりする部分。「二人でいれば完璧だ」っていう二人だからこそ、完全犯罪に対してはどうでもいいの?って。それなのに「僕らならバレない」っていう変な自信もあって・・・どんな人物なんだろうって興味を持ちました。

それから、今はSNSで発した一言で炎上してしまう時代ですが、この作品で描かれている当時も、新聞の情報にみんなが振り回されていたり、凶悪犯なのに人気が出てしまったり、今の時代の僕たちが見ても興味深いものが詰まっています。君塚さんがおっしゃったように、今現在も討論されている問題やテーマが書かれているので、今、このタイミングでこの作品をやることに責任感を感じます。役者として、実話を“生きる”というのはなかなか体験できるものでもないので、そういう意味でもこの役を生きる楽しみもあります。真摯に突き詰めて演じたいと思っています。

林:僕はこの事件のことは全然知らなくて、台本を読ませてもらって、初めて知りました。こんな二人が本当にいたというのは衝撃的で、どうして自分の哲学を証明するためにそこまでしなくちゃいけなかったのかとか、どんなことがあってこんな二人の人間が出来上がったのか、すごく興味が湧きました。これからたくさん調べて、しっかり自分の中に落とし込んで演じたいと思います。

――君塚さんは、舞台の演出を手がけるのは本作が初めてですが、それを決められたきっかけは?

君塚:この本が極めて優れていて、僕の好きなエンターテインメントでありながら、見た後に考えさせてくれるテーマがちゃんとある作品だったということです。なかなかエンタメとアートを同時に入れ込んだ本は作れないんですよ。僕もずっとそれを目指して書いているけれども。面白いだけじゃなく、最後にちょっと残るというのがいいと思っているので、それが叶う台本だったからというのが大きいですね。

――演出面では、「舞台だからこそ」というプランはありますか?

君塚:僕は、映画には映画の、舞台には舞台の、それぞれのプロフェッショナルな優れた人たちがいるから、その人たちにそれぞれを作ってもらって、僕は役者さんのお芝居だけに集中したいと思っています。普段、映画を撮っている時も僕はそうしているんです。日本を代表する、優れたカメラマンさんと照明さんが撮っていて、すごく優秀な助監督さんが動かしてくれているから、そこはお任せして、僕は役者さんと向き合う。今回もそうしようと思っています。

――では、そのじっくりと向き合うことになるキャストのお二人の印象は?

君塚:まだ今日、ほんの少しお会いしただけですが、話していてすぐに勘がいい方たちだなって思いました。それから、まぶしいくらい舞台に対する真摯な思いを持っているのが伝わってきたから、これは大丈夫だ、と。あとは話し合って、お互いにアイディアを出し合って、「こういう人生もあるのかな。こういう若者がいるのかな。ただこいつらを断罪するだけでいいのかな」とか、あるいは「こんなのは断罪して当然だよ」と思わせられるか。または、青春ものとして、「キラキラしたすごくいい青春ドラマを見た」と思わせたいというところもあるので、どうなるか楽しみです。

――ここからは、辰巳さんと林さんにお話を伺います。まず、今回、演出を君塚さんが手がけると聞いた時はどう感じましたか?(君塚さんはここで退席となったため)

辰巳:嬉しい限りですよ。僕はここ数年、舞台のお芝居と映画のお芝居とドラマのお芝居、全部が違うと分かった上で、それでも「一緒だ」と思ってるんですよ。これまで色々な役者さんと共演してきましたが、芝居の根底は同じなんだと感じました。(それを感じている)今、このタイミングで映像やドラマでたくさんの作品を手がけている君塚さんとご一緒できるというのは運命を感じます。

林:僕は、子どもみたいなことしか言えないですが、「あ、踊る大捜査線の人だ。すごい!」って(笑)。今回、君塚さんとご一緒させていただいて、そしてこんな素敵な作品に出逢わせていただいて、絶対にいいものになるだろうと確信しています。辰巳くんもいるので、これはもらったな、と(笑)。みんなで1からお芝居を作っていくのがすごく楽しみです。

――お二人は今回、恋人同士という役どころですが、率直にどう思いますか?

辰巳:僕たちは、若い時、同じグループだったんですが、翔ちゃん(林)がどういう芝居をするのか意外と知らないので、すごく楽しみです。今日、ビジュアル撮影をした時に、僕が動いたことに対してすぐにリアルな反応をしてくれたり、逆に動いてくれたりしたので、今からワクワクしてます。きっと、僕が何をやっても受け入れてくれると思います(笑)。

僕は元々、お芝居をするというよりも、その役で生きるというタイプなんです。決めたものを見せるというよりは、稽古場でその役たちの生き方を決めて、舞台の上で生きればいい。決められた動きじゃないから動けないというのが嫌なんですが、翔ちゃんとはそれが完璧にできそう。信頼がすでにできているので、演じるのが楽しみです。

――恋人としてアリですか?

辰巳:アリです(笑)。僕たち、恋人としてもめちゃくちゃ相性いいと思いますよ。僕が自由にやるのを、翔ちゃんは全部受け止めてくれそう。

――林さんは、恋人として辰巳さんはいかがですか?

林:安心感しかないですし、ついていこうという感じです。僕も(恋人として)めちゃくちゃアリですよ(笑)。

辰巳:「アリ」いただきました(笑)!見てくれるお客さまをドキドキさせるためには、まずは僕たちがドキドキし合わないといけないと思います。なので、僕は、ローブとしてレオポルドを毎日、誘惑していきたいと思っています。恋人として、「アリ」って言ってくれましたから(笑)。

林:お芝居を重ねていくうちに、またどんどん楽しくなっていくだろうと思います。僕は、レオポルドとして、ローブはどうしたらもっと輝くのかを考えて、どんどんぶつけていきたいと思います。

――昔から知っている間柄だけに、照れくささはないですか?

辰巳:実は、今日の撮影までは、僕もどうなるか分からないと思っていたんですが、実際に撮影していたら、全然恥ずかしくなかった。僕、(撮影中に、要望されれば)キスできましたよ(笑)。全然いけた(笑)。むしろ、しそうだった。

林:全然いけちゃうよね(笑)。すでに距離感がかなり近かったですから。

辰巳:翔ちゃんは昔から肌がモチモチなんですよ。その質感が男っぽくないしね。

林:15年くらい前に同じグループだった時から、ずっと言ってくれます(笑)。

――台本上も、観客の方がドキドキするシーンはたくさんありそうですか?

辰巳:そうですね。コロナの状況次第だとは思いますが、台本通りできる状況であれば、ドキドキはいっぱいあります。

林:僕、(このオファーを受けて)最初にマネジャーさんから「辰巳くんと絡むシーンが結構あるけど、大丈夫?」って確認されましたもん。「全然大丈夫です」って(笑)。

辰巳:「絡みオッケーです!」って(笑)。

――演劇ファンの間では、「ローブとレオポルド事件」というとやはり『スリル・ミー』がイメージしやすいと思いますが、同作とは違う、この作品ならではの魅力や見どころを改めて教えていただけますか?

辰巳:『スリル・ミー』はミュージカルですので、たくさんの歌があって、その中で作品として昇華されている部分があると思いますが、この作品はいい意味で美化していない、人間のリアルな“粗(あら)”も描かれています。ローブとレオポルドの事件をメインとしていますが、それだけでなく、彼らを取り巻く人物たちにも焦点が当たっていて、彼らの正義や、その正義がぶつかり合う人間模様がよりしっかり描かれている作品になります。ローブとレオポルドという実名で、彼らそのものとして登場するので、リアリティや再現度が必要だと思っていますし、だからこそより濃く演じられると思います。ドラマみたいな事件で犯罪者になってしまった二人ですが、周りから見たら魅力的だったというところもしっかりと演じていけたらいいなと思います。

林:ストレートプレイだと重いんじゃないかと思われると思いますし、僕自身もそう思っていましたが、台本を読み終えた時、重たい後味が残るということはありませんでした。作品としてすごく面白いし、きっと何かを感じ取っていただけると思います。この作品を通して実際にローブとレオポルドのファンになるくらい、リアルに演じられたらと思っています。

『ネバー・ザ・シナー -魅かれ合う狂気-』公演情報

上演スケジュール

【東京公演】2021年9月2日(木)~9月12日(日) 品川プリンスホテル クラブeX
【大阪公演】2021年9月18日(土)・9月19日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

スタッフ・キャスト

【作】ジョン・ローガン
【演出】君塚良一

【出演】
辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)

林 翔太

荒木健太朗
前島亜美
山岸拓生(拙者ムニエル)

姜 暢雄
磯部 勉

【公式サイト】http://www.nts-stage.jp
【公式Twitter】@nts_stage ※ハッシュタグ:♯ネバシナ

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