パリ・オペラ座バレエ シネマ『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』試写会レポート


世界最古で最高峰のバレエ団によるパフォーマンスを日本に居ながらにして楽しめる映画上映企画、パリ・オペラ座バレエ シネマ。6月24日(金)より、新作となる『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』が東劇・新宿ピカデリーほかで上映される。この記事では、公開に先立って行われた試写会にて一足先に本作を鑑賞し、そこで感じた見どころを紹介したい。

ジェローム・ロビンズとは?

20世紀の偉大な振付家であるジェローム・ロビンズは、アメリカン・バレエ・シアターやニューヨーク・シティ・バレエの成長に大きな役割を果たした。また、ブロードウェイ『王様と私』『ウエスト・サイド物語』『屋根の上のバイオリン弾き』でトニー賞を受賞し、映画『ウエスト・サイド物語』(1957年)では共同監督としてアカデミー賞を受賞するなど、バレエ作品だけでなく、エンターテイメント界でも大きな功績を残している。

ジェローム・ロビンズ

『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』とは?

ロビンズの生誕100周年を記念してパリ・オペラ座バレエ団が上演した『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』。パリ・オペラ座バレエ団のスターダンサーたちが踊る、彼の代表的な4作品を堪能できる。

『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』レポート

「ファンシー・フリー」(原題:Fancy Free)

時代は第二次世界大戦中。1日だけの休暇を許された3人の水兵たちが憧れのニューヨークで束の間の休息を楽しむ。3人は訪れたバーで魅力的な女性たちと出会って…。

ロビンズが手掛けてきた数多くのミュージカルに通じる、軽快で分かりやすく、ウキウキと心が弾むような楽しい演目だ。歌やセリフなどは一切ないのに、頭の中には登場人物たちの声が聞こえてくるようで、終わったあとに「あれ、これセリフなかったんだっけ…?」という不思議な感覚に陥ってしまうほど。

2018年の大晦日にヌレエフ版『シンデレラ』でバレエ団を引退したカール・パケットが出演。まさにシンデレラのお相手の王子様が良く似合う、“貴公子”のイメージが強い彼のコミカルな演技はとっても新鮮でチャーミング。今年6月12日に東京文化会館にて行われる牧阿佐美バレエ団『ノートルダム・ド・パリ』にゲスト出演するステファン・ビュリヨン、先日4月23日にパリ・オペラ座バレエ団の最高位であるエトワールに昇格したフランソワ・アリュと共に、陽気で生き生きとした作品の世界に連れて行ってくれる。

「ダンス組曲」(原題:A Suite of Dances)

「ダンス組曲」

“ミーシャ”の愛称で日本でも親しまれてきたミハイル・バリシニコフのためにロビンズが振り付けたという本作。バッハのチェロ組曲を奏でるチェロ奏者も舞台に上がり、ダンサーとのデュエットを繰り広げる。

全身赤の衣装を纏ったダンサーがパキっとしたブルーを背景に踊り、どことなく、ジャン=リュック・ゴダール監督の映画を思い出させるような印象的な色使いに引き込まれる。

高度なテクニックをさらりとこなし、しなやかな動作で魅せるマチアス・エイマン。チェロ奏者と視線を交わらせる瞬間もあり、どうやったって切れるはずのない、音楽とダンスの親密でリスペクトのある関係が見えてくるようだ。

「牧神の午後」(原題:Afternoon of a Faun)

「牧神の午後」

「牧神の午後」といえばニジンスキー版のものを思い出す人が多いかとは思うが、本作の舞台はなんとバレエスタジオ。客席がスタジオの鏡に見立てられているそうだ。

とにかく目を奪われてしまったのは、なんといってもダンサーのつま先。この作品は、仰向けに寝そべっているユーゴ・マルシャンが足を動かすところからスタートするのだが、彼の肉体美もさることながら、そのシンプルな動きにいきなり目が釘付けになってしまう。さらに、アマンディーヌ・アルビッソンの完璧といっても過言ではない脚のラインも素晴らしい。トウ・シューズを履いたことがある人なら、あんな風に美しく甲が出たポアントに憧れを抱いたことが絶対にあるはず。

鏡である客席を見つめるのは、自分たちの姿を見つめること。二人の視線、4つの瞳はいったい何を見ているのか、神秘的で美しい作品世界にどっぷりと浸かりたい。

「グラス・ピーシズ」(原題:Glass Pieces)

「グラス・ピーシズ」

単純な音型の繰り返しを特徴とするフィリップ・グラスによる音楽に乗せて、カラフルな衣装に身を包んだ群舞が踊る、とてもモダンな作品。「ルーブリック」「ファサード」「トライバル」の3部構成となっている。

一緒くたにするのは良くないが、一言でいうと“現代アートのような作品”と言えばイメージがつきやすいのではないだろうか。初演が1983年だなんて信じられないほどに、舞台上には洗練された空間が広がる。

ソリストたちの踊りやパ・ド・ドゥの完成度の高さはもちろんなのだが、演出の仕方がとても面白い本作。第2部「ファサード」では、その背景に思わず視線を奪われてしまった。一列に並んだ女性ダンサーたちが、一定の動きを繰り返しながら、上手側から下手側に流れている様子はまるで壁画。こうした演出の仕方から、ロビンズのグラスの音楽に対する理解の深さが感じられる。

全く表情の違う4作品を一気に楽しめる『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』。ダンサーの細かな表情や所作の細部まで堪能でき、そこには劇場で見るのとはまた違った気づきがあるのかもしれない。是非ともパリ・オペラ座の華麗で心躍る世界に浸る至福を大スクリーンで味わってみては。

(取材・文/エンタステージ編集部 場面写真/© Sébastien Mathé / OnP )

『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』詳細情報

【場所】パリ・オペラ座 ガルニエ宮
【上映時間】1時間54分
【振付】ジェローム・ロビンズ
【音楽】ワレリー・オブシャニコフ
【演奏】パリ・オペラ座管弦楽団
【芸術監督】オーレリ・デュポン

<収録演目>
「ファンシー・フリー」(原題:Fancy Free)
【音楽】レナード・バーンスタイン
【振付】ジェローム・ロビンズ
【装置】オリヴァー・スミス
【衣裳】カーミット・ラヴ
【照明】ジェニファー・ティプトン

【出演】エレオノーラ・アバニャート/アリス・ルナヴァン/ステファン・ビュリオン
カール・パケット/フランソワ・アリュ/オーレリア・ベレ/アレクサンドル・カルニアト

「ダンス組曲」(原題:A Suite of Dances)
【音楽】ヨハン・セバスチャン・バッハ
【振付】ジェローム・ロビンズ
【衣裳】サント・ロカスト
【照明】ジェニファー・ティプトン
【チェロ】ソニア・ヴィーダー=アサートン
【出演】マチアス・エイマン

「牧神の午後」(原題:Afternoon of a Faun)
【音楽】クロード・ドビュッシー
【振付】ジェローム・ロビンズ
【装置】ジャン・ローゼンタール
【衣裳】イレーヌ・シャラフ
【照明】ジェニファー・ティプトン
【出演】ニンフ:アマンディーヌ・アルビッソン(ニンフ役)/ユーゴ・マルシャン(牧神役)

「グラス・ピーシズ」(原題:Glass Pieces)
【音楽】フィリップ・グラス
【振付】ジェローム・ロビンズ
【装置】ジェローム・ロビンズ/ ロナルド・ベイツ
【衣裳】ベン・ベンソン
【照明】ジェニファー・ティプトン
【出演】セウン・パク/フロリアン・マニュネ

【料金】一般:3300円、学生:2500 円(学生証の提示が必要になります)

【公開情報HP】https://www.culture-ville.jp/parisoperaballetcinema
【公開情報Twitter】@cinema_ballet

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