2021年9月3日(金)に東京・新国立劇場 小劇場にてシス・カンパニー公演『友達』が開幕した。本作は、安部公房の戯曲『友達』で、一人の男の日常見知らぬ「9人家族」が忍び寄る様を描いた不条理劇。出演は、浅野和之、キムラ緑子、山崎一、有村架純、林遣都、ほか。
小説、戯曲、映像作品と幅広い分野で活躍した安部公房は、その後半生の情熱を演劇活動に傾けていた。本作は、彼の小説「闖入者」をベースに戯曲化したもので、1067年に青年座で初演され。同年の「谷崎潤一郎賞」を受賞したほか、三島由紀夫に「安部公房氏の傑作」と言わしめた作品だ。
演出を手掛けるのは、NHKよるドラ『きれいのくに』(脚本)や、『たむらさん』でもシス・カンパニーとタッグを組んでいた加藤拓也。和やかで楽しそうに響きのタイトルだが、物語に足を踏み入れれば、裏腹にどこか怖いような、滑稽なような不思議な別空間が広がる。
ある夜、ひとりの男(鈴木浩介)の日常に忍び寄る、見知らぬ「9人家族」の足音。祖母(浅野和之)、父母(山崎一・キムラ緑子)、3人兄弟(林遣都・岩男海史・大窪人衛)、3人姉妹(富山えり子・有村架純・伊原六花)から成る9人家族は、それぞれに親しげな笑みを浮かべ、口々に隣人愛を唱えながら、あっという間に男の部屋を占拠してしまう。
何が何だかわからないまま、管理人(鷲尾真知子)、警官(長友郁真・手塚祐介)、婚約者(西尾まり)、弁護士(内藤裕志)と、次々に助けを求め、この不条理な状況説明を試みるが埒があかない。しかも、彼らはどんどん「家族の論理」に加勢していく流れに・・・。
一体、この「9人家族」の目的は何なのか?どこからが日常で、どこからが非日常なのか?この男を待ち受けるのは、悲劇なのか、はたまた救済なのか?不条理な論理の辿り着く先を、お見逃しなく。
シス・カンパニー公演『友達』は、9月3日(金)から9月26日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場、10月2日(土)から10月10日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。
なお、東京公演でライブ配信が実施されることが急遽決定。配信日時、視聴方法、視聴券についてなど、詳細は後日発表されるとのこと。
(写真/宮川舞子)
コメント紹介
◆鈴木浩介(男役)
この戯曲は、僕がかつて所属していた劇団青年座で初演された伝説的な戯曲です。今、こうして「男」という役を演じる機会をいただけるなんて、不思議なご縁を感じています。安部公房作品は初めてですが、演出の加藤拓也さん、共演の皆さんと、とにかくいつ初日が来てもいいくらいの覚悟で、練りに練り、深めに深め、稽古を進めてきました。男の日常があっという間に侵食されていく物語は怖いけれど怖すぎて笑えます。ぜひ笑いながら観ていただきたいですね。
◆山崎一(父役)
もともと別役実さんが大好きで不条理劇には長く親しんできましたが、安部公房作品は僕にとっては全く質感が違うもの。
そこに、初めてご一緒する加藤拓也さんの視点を通して作られたこの世界観です。
加藤さんの稽古の進め方から言葉、指示に至るまで初めてのことばかりの稽古場でした。
この新世代の“得体の知れなさ”に出会えたこと、探求できたことに、ずっとワクワクし続けている自分がいます!
ぜひ、お楽しみください!
◆林遣都(長男役)
舞台は、僕にとっての鍛錬の場です。そして、稽古は自分の余計な部分を削ぎ落し、時間をかけて芝居を追究できる大好きな場所な
んです。今回の作品は、自分の価値観とは違う次元で生きている役で、加藤さんは自分では到底到達できない視点を提示してくださ
いました。ずっと頭を働かせ、神経を張り詰めて稽古をしてきて、気が付くと1日が終わっている感覚でした。それが何よりも楽しくて、
役にも戯曲にも発見がとても多く、それをきちんと自分の身に落とし込んで、毎日の本番に臨みたいと思っています。
◆有村架純(次女役)
安部公房さんの戯曲が演出家の加藤さんの手によって文字に起こされ、何度台本を読んでも、私の頭だけでは到底理解には辿り着けないだろうと思いながらの稽古でしたが、そんな時間も心底楽しく、カンパニーの皆様と一緒に、無事に初日を迎えました。とても幸せです。男と9人の家族による、正義の分断、正義のぶつかり合い。お客様が観劇し終わったあと、心に残るものがどんなものなのかとても気になりますが、是非余韻に浸っていただけたら、と思います。カンパニーの皆様全員で完走します!
『友達』公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2021年9月3日(金)~9月26日(日) 新国立劇場 小劇場
【大阪公演】2021年10月2日(土)~10月10日(日) サンケイホールブリーゼ
スタッフ・キャスト
【作】安部公房
【演出・上演台本】 加藤拓也
【出演】
鈴木浩介 浅野和之 山崎一 キムラ緑子 林遣都 岩男海史 大窪人衛 富山えり子
有村架純 伊原六花 西尾まり 内藤裕志 長友郁真 手塚祐介 鷲尾真知子