エンタステージが「役者」さんの人生を深堀りする新企画「役者名鑑 on Youtube」。昨年Twitterで行っていた「#エンタステージ役者名鑑」を、新たな形で展開します。毎回、お誕生日を迎えた方を迎え、ロングインタビューと動画で「役者」という人生にスポットを当てて、アレコレお聞きしていきます。
第2回のゲストスピーカーとして登場してくださったのは、前山剛久さん。前山さんは1991年2月7日生まれ。2010年に行われた「D-BOYSスペシャルユニットオーディション」のファイナリストに選ばれ、同年12月にD2(現在所属するワタナベエンターテインメントの俳優集団 ※D2メンバーは2013年にD-BOYSへ加入した)のメンバーとなりました。
2011年1月にミュージカル『忍たま乱太郎』の中在家長次役として役者デビュー。『仮面ライダーウィザード』ではソラ/グレムリンというヒール役を演じたほか、オールメールで上演されたシェイクスピアの『お気に召すまま』(2016年)や『十二夜』(2020年)では女性役を見事に演じきったり、『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』の天祥院英智役や、舞台『刀剣乱舞』の鶯丸役、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stageの夢野幻太郎役など2.5次元作品でも人気の役を次々と射止めてきました。さらに、2021年8月にはミュージカル『王家の紋章』への出演も控えています。
今年は役者デビューをして10周年。そして、30歳を迎えた節目の年でもあります。そんな前山さんが、今の自分を表す言葉として挙げたのは「不器用」「思いやり」「愛情」という3つのキーワード。影響を受けたものは“ロック”だと言います。
前半では、これらの言葉を軸に、前山さんの役者としての黎明期から、「芯」となっている考えなどを語っていただきました。
憧れた芸能界に足を踏み入れるまで
――今年で俳優デビュー10周年の節目を迎えられるということで、改めて、前山さんの「これまで」を紐解かせていただければと思います。まず、デビューのきっかけについて教えていただけますか?
元々は、高校一年生の時に親が「ジュノンスーパーボーイコンテスト」に応募してくれたことが、芸能界を志すきっかけでした。もともと芸能界に憧れを持っていたのを親が知ってくれていたんです。でも、そこでは残念ながら結果を出せなかったので、東京の大学に受かったらまた挑戦しようと決めていて、今所属しているワタナベエンターテイメントが開催していた「D-BOYSスペシャルユニットオーディション」を受けて、今に至ります。
――子どもの頃から芸能界に憧れがあったんですか?
小学生の頃、自分の夢を書く機会があるじゃないですか。それには「獣医さん」って書いていた気がします。多分、犬とか好きだからそう書いたんだと思うんですけど、幼稚園ぐらいの頃から芸能界に憧れはありました。親がKinKi Kidsさんが大好きで、音楽番組とか、よく録画して観ていたんですね。それを観ながら、いつか自分もこの仕事やるだろうなって感じてました。でも周りには言い出せなかったから、夢は獣医さんって書いていた気がしますね。
――ちなみに、オーディションの時のことって覚えていますか?
覚えてますね、めちゃくちゃ緊張しました(笑)。三次審査の段階で、すでにかなり人数を絞られていたんですけど・・・特にその時のことをよく覚えています。山田裕貴とか、堀井新太もいて、不思議なもので、受かる時って分かるんですよね。
――どういう瞬間にそれは分かるんですか?
これ、オーディションとかもそうなんですけど、審査してくださっている人の「目」で分かるんですよ。「あ、見てるな」って。これ、役者はみんな経験したことあると思います。
――緊張の中でも、人を見ていらっしゃるんですね・・・。
でも、余裕があったわけじゃないんですよ。最終審査の前にレッスンを受ける機会があったんですけど、その時は必死でした。いきなり、歌・ダンス・芝居を「はい、やってください」みたいな感じだったので。かなり苦戦した記憶がありますけど、なんとかがんばって、最終審査の時は無我夢中というか、我を忘れてやれていました。振り返れば、あの時に表現の“面白さ”っていうものを初めて理解できたのかもしれません。
自然に好きになっていった「役者」の仕事
――そんな前山さんにとって、初めて舞台に立った時の景色はどんなものでしたか?
すごいパワーもらえるものなんだと感じました。僕は、ミュージカル『忍たま乱太郎』(2011年/ミュージカル『忍たま乱太郎』第2弾~予算会議でモメてます!~・中在家長次役)で初舞台を踏ませていただいたんですが、幕が開いた時、稽古では分からなかったエネルギーをもらえてすごく楽しいと感じた記憶があります。
毎日が楽しくて、僕、千秋楽でめっちゃ号泣したんですよ。半年後に再演をすることも決まっていたのに(笑)。一緒に初舞台を踏んだメンバーや、お客さんとの間に“絆”が生まれていることに気づいて、思わず泣いてしまったんですよね。
――仕事として、役者という仕事に「面白さ」を感じたのはいつでしたか?
役者という仕事については、だんだん好きになっていきました。正直、芸能界に憧れてはいたけれど、自分が役者をやりたいかも分かっていなかったんです。入り口がKinKi Kids さんだったから、歌手とか、アイドル的なものに憧れていたもので。最初、「舞台に出る」と決まった時も、とりあえずやってみよう的な気持ちだったので。自然に好きになっていった感じなんです。あんまり考えず、気づいたら好きになっていた、みたいな。
あえて言うのならば、『仮面ライダーウィザード』をやらせていただいた時に、「お芝居ってこんなに楽しいものなんだ」と、腑に落ちた感じがします。その前から応援してくださっていた人にはめちゃくちゃ申し訳ない話なんですけど・・・(笑)。一つの役について一年間向き合う時間が、自分のお芝居、役に対して考えていたことが演じ続ける中で変わっていくこともあって、役を突き詰めることが「すごく面白いな」と思えたんですよ。その経験を経て、また舞台に立った時、楽しさが倍増しました。
――デビューした頃、今のご自身の姿はイメージできていましたか?
想像はできていなかったですね。多分、その時はずっと続けられるかも分かっていなかったし。憧れはあったけれど「実際に自分がずっとその世界で戦えるか」という自信は、当時はなかったですから。だから当時の自分が今の自分を見たら嬉しいかもしれないですね。これぐらい、がんばれたんだって。
――振り返って、役者として挫折を感じたことはありますか?また、一番の喜びは?
挫折は・・・ほぼ毎年していますね。細かいことを言ったら、一つの作品に関わるごとに。その度に克服しようともがいて、今もずっともがき続けているから、これが一番というものはないかもしれません。喜びは、それを克服した時。この落差がたまらないんでしょうね。すごく悩んだ分、乗り越えられた時の楽しさを味わうことが、一番の喜びですね。
芸能生活を重ねるごとに意思が強くなっている
――なんとなく前山さんにはスマートな印象を抱いていたので、ご自身を表すキーワードの最初に「不器用」を挙げたのが意外でした。
役者を始めた頃なんて、とにかく不器用だったんですよ。今も不器用なところはあります。でも、できないからこそ「がんばろう」と努力するし、戦っている。「不器用」は、自分を構成する一つの要素だなと思っています。
――「思いやり」と「愛情」についても、お聞きしてもいいですか?
人といて生きていく上でも、「思いやり」って大事ですよね。舞台をやる時も同じで、自分のことだけ考えていたら、やっぱりお芝居も破綻しちゃう。これは芝居の中だけの話ではなく、すべての仕事においても当てはまることだと思います。周りの方々を思いやっていかないと、すべてが駄目になってしまいますから。個人としても、お芝居の上でも、「周囲を思いやる」ということは常に重要視しています。
「愛情」も思いやりと似ているんですが、家族のことのように、役に対しても愛情を持つことを大事にしています。愛情があるからこそ、感情を大爆発させたいとか、そういう心の動きが出てくると思うので。役だけでなく、全てのものに対して「愛情」を持つことが大事だなと思っているので、この2つの言葉をキーワードに挙げました。
――そんな前山さんが影響を受けたものが「ロック」というのも、また意外な一面でした。
学生時代にギターをやっていたこともあって、昔からロックが好きなんですよね。僕自身の性格とか立ち居振る舞いに関しては、ロックとはかけ離れているかもしれないんですけど(笑)。僕、実はとことん話し合わないと気がすまないタイプなんです。たまに「え?そんな喋る?まだ話す?」って、相手が嫌な顔になっちゃう時もあるぐらい(笑)。でも、言うことは言わないとダメだと思うから、徹底的に話し込むようにしています。常識にとらわれず、流されず、己を貫く“ロック”さは持ち続けていたいですね。
――ここまで、前山さんの「これまで」についてお話を伺ってきましたが、10年という歳月の中で、柔しく剛く、さらに「剛久」の名前がしっくりくるようになりましたね。
3年前に写真集を出した時、名前のお話をしましたね。今、すごく思い出しました。名前がしっくりくるようになったのは、役者という仕事をしてきた影響が大きいですね。周りでサポートしてくださっている方々、先輩方、ご指導くださる方々のおかげで、芸能生活を重ねるごとに自分自身の意思がすごく強くなってきているのを感じています。3年前にしっくりくるって言っていた時よりも、さらに今の自分がしっくりきているって思えますね。
※後半では、大きなターニングポイントとなったシェイクスピア作品の経験、夢野幻太郎役として出演中の『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stageのこと、鶯丸役として出演した舞台『刀剣乱舞』のこと、そしてミュージカル『王家の紋章』など続々と控える大作への出演予定のことなど、前山さんの現在と未来に迫ります。お楽しみに!
前山剛久さんの今後の出演作品
『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.2- replay
2021年3月11日~3月21日 東京・品川プリンスホテル ステラボール
【原作】EVIL LINE RECORDS
【演出】植木豪
【脚本】亀田真二郎
【音楽監督】Ts
【テーマソング】井手コウジ
【出演】
世古口凌、前山剛久、滝澤諒/
鮎川太陽、荒木宏文、宮城紘大/
加藤良輔、和田泰右、結城伽寿也/
Toyotaka、RYO、gash!、SHINSUKE、Dolton、KENTA、GeN、KIMUTAKU
【公式サイト】https://hypnosismic-stage.com/track2-replay/
ミュージカル『王家の紋章』
【東京公演】2021年8月 帝国劇場
【福岡公演】2021年9月 博多座
【原作】
細川智栄子 あんど芙~みん「王家の紋章」(秋田書店「月刊プリンセス」連載)
【脚本・作詞・演出】荻田浩一
【作曲・編曲】シルヴェスター・リーヴァイ
【出演者】
メンフィス:浦井健治/海宝直人(Wキャスト)
キャロル:神田沙也加/木下晴香(Wキャスト)
イズミル:平方元基/大貫勇輔(Wキャスト)
アイシス:朝夏まなと/新妻聖子(Wキャスト)
ライアン:植原卓也
ミタムン:綺咲愛里
ナフテラ:出雲綾
ルカ:前山剛久/岡宮来夢(Wキャスト)
ウナス:大隅勇太/前山剛久(Wキャスト)
イムホテップ:山口祐一郎