エンタステージが「役者」さんの人生を深堀りする新企画「役者名鑑 on Youtube」。昨年Twitterで行っていた「#エンタステージ役者名鑑」を、新たな形で始動させます。毎回、お誕生日を迎えた方を迎え、ロングインタビューと動画で「役者」という人生にスポットを当てて、アレコレお聞きしていきます。
第1回のゲストスピーカーとして登場してくださったのは、岡本悠紀さん。グランドミュージカルから2.5次元ミュージカルまで幅広く活躍する岡本悠紀さん。岡本さんは1989年1月7日生まれ、2013年にミュージカル『ミー&マイガール』ボブ・バーキング役でデビュー。『RENT』をはじめ、ミュージカル作品へ多数出演するほか、最近では舞台「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stageのプレゼント・マイク役、舞台『リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!!』の間柴了役、ミュージカル『新テニスの王子様』The First Stageの鬼 十次郎役など、活躍の場を広げています。
前半では、岡本さんを表す3つのキーワード「宝塚」「アメリカンフットボール」「ハッピー」を軸に、役者としての黎明期を語っていただきました。
「宝塚」との出会いが人生を変えた
――まず、岡本さんが役者になるまでの話を聞かせていただければと思います。何をきっかけに役者に興味を持たれたのですか?
大学時代に就職活動をしたんですが、勤めたいと思える企業に出会えなかったんですね。そのタイミングで、ちょうど家族が宝塚にはまっていて、ある日、車で一緒にミュージカル『エリザベート』のCDを聞いていたんです。そうしたら、ちょうど白羽ゆりさんの「私だけに」という曲が流れ始めまして。それを聞いた時、「宝塚の人って、こんなに歌が上手いのか!なんて綺麗な声をしてるんだ!」と興奮が止まらなくなったんです。その後、「私だけに」を聞きたくて家でDVDも見たんですが、もう、見終わった時に涙が止まらなくて!
正直、最初は宝塚って濃いメイクでスパンコール着て踊るんでしょ?って偏見を持っていたんです。でも実際に宝塚を観て、芸術に対する価値観そのものに対していろんな感情が湧いて放心状態になって、「こんな楽しそうな世界があったんだ!」という興奮の波が止まらなくて・・・人生、狂わされてしまいましたね(笑)。
――それが、岡本さんを表すキーワードの一つ「宝塚」ですね。
そうですね。僕は男である以上、宝塚に出演することはできないので、永遠に憧れ続けるものですね。宝塚みたいなことがやりたいけど、僕は宝塚には出られない。じゃあどうしたらいいのか。恥ずかしながら宝塚以外の演劇を観たことがなかったので、他の舞台を観てみようと思って、劇団四季、東宝作品、下北沢の小劇場と、いろんなところに足を運んで、作品を拝見させていただきました。それで、改めて「自分は純粋に舞台が好きなんだ!」ということを自覚してからは、半分就職活動的な意味でも劇場に通いましたね。
――それからはどんな行動を?
東宝さんや松竹さんなどミュージカルに関わる企業に就職したかったんですが、エントリー期間が過ぎていて。じゃあ、ミュージカルを勉強するには?と思って調べたら、東宝ミュージカルアカデミーを見つけたんですけど、それも締め切りが過ぎちゃってたんです(笑)。最終的には、別のミュージカルの基礎を学べる専門学校を見つけて、「バイトしながら学費を払うので行かせてくれないか?」と両親に話したところ奇跡的にOKしてくれて、通うようになりました。
――岡本さんといえば、パワフルな歌声が魅力ですが、歌を学んだのは専門学校に通ってからですか?
そうですね。歌は好きだったんですけど。でも一人で歌うことが好きだったわけではなく、カラオケでみんなで歌うのが好きだったんですね。舞台にも通じると思うんですが、みんなで歌う空間を共有するのが好きだったんです。
――役者として生きる覚悟を決めたのはいつですか?
それはやっぱり、専門学校に入学を決めた時かなあ。大学を卒業した=就職しなければならないという文化がなんとなくある中で、その道を逸れるということは、役者として生きる覚悟がなければしなかったでしょうし。漠然と就職活動をして企業を決められなかった自分が、入学という決断をできたのは俳優になる覚悟があったからだと思っています。強い覚悟があったから、今こうやって奇跡的に皆さんの前に立てているのかなと。
――ちなみに、小さい頃の夢って何でした?
それが、これ!というものがなかったんですよ・・・(笑)。中学になるぐらいまでは、とにかく受け身の人間で。習い事も、お兄ちゃんがやってたからサッカー始めたとか、お姉ちゃんがやってたから一緒に絵画教室に入ったとか、自分から始めたことはほとんどなくて。
小さい時に夢がなかった分、焦燥感が生まれたのかもしれません。今、人生の目標の一つが「プロフェッショナルになる」というということなんです。例えば、小さい頃からバレエやヴァイオリンを学んでいた方はその道のプロフェッショナルですよね。一つのことを極めるということをしてこなかったので憧れがあり、その分、今の目標としているんだと思います。
――先ほどキーワードに挙げられていた「アメリカンフットボール」は、どれくらい続けられていたんですか?
大学での4年間やっていました。アメフトをやることで「組織の中で生きるというのはどういうことか」を学びましたし、勝利というゴールに向かって皆で考えたり、トレーニングをする中にも様々なドラマがあることを知ったり、人間的にも成長させてもらったものなので、僕を表すキーワードの一つになっていますね。
――ここからは、役者になってからのことをお聞きします。最初に、初舞台のことをお聞きしてもいいですか?
初めて立った舞台は、専門学校在学中の発表会でした。それはもう、緊張の嵐でしたね(笑)。観に来てくださっている方は関係者がほとんどだったんですが、台詞ひとつ言うにしても、歌うにしても、がちがちに緊張してしまいました。それまで客席から見て憧れる立場だったので、自分自身が初めて舞台に立った時の緊張感はもう・・・忘れられないですね。もちろん今も緊張感はありますが、種類が違っていました。
――プロとしての初舞台は?
プロとして初めて立った舞台は『ミー&マイガール』です。学生のまま、休学しながら出させていただきました。最初、歌稽古でプロの方々の歌声を聞いた時は、こっそり泣いていましたね・・・。あまり良くないことなのですが、その頃はまだお客様気質が抜けていなくて。舞台のファンだったので、「プロってすごい!」とか「剣幸さんのビルだ・・・!」とか、すべてに感動していました。今思い返しても、熱いものが蘇りますね。
人を「ハッピー」にするためには、まず僕自身が「ハッピー」でないと
――オーディションでたくさん役を得られてきたと思いますが、どのように臨んでいらっしゃいますか?
僕、オーディションが大好きなんですよ。もともとスポーツをやっていたので、勝ち負けの世界で生きてきたんですよね。舞台に立つことは勝ち負けではないんですが、オーディションは勝負の場だと思っているので、元体育会としてはアドレナリンが出て「よっしゃいくぞ!」って気合いが入る瞬間のひとつなんです(笑)。
今は元宝塚歌劇団の演出部にいた姉と個人事務所をやっていますが、最初はフリーだったので、全くオーディション情報が耳に入って来なかったんですよ。だから、一つ一つのオーディションは絶対に負けられないという思いが強くて。なので、人一倍気合いを入れています。
例えば、『RENT』のオーディションを受けた時は「Seasons of Love」を心から歌うために、自分なら一年をどう数えるかな?と考えながら街中を歩いてみたり。ただ暗記して目の前の審査員に披露することもできますが、時間をかけられる時はしっかり長い時間をかけて、徹底してオーディションへ行くようにしています。オーディションには、やっぱり受かりたいですからね。
――オーディションでは、どういった部分を見られていると思いますか?
技術はもちろんなんですが、絶対に関係ないところも見られると思っています。全く同じようなスキル・容姿を持った人がいたとしたら、最終的には「人柄」で決めると思うんです。この人と一緒に仕事をしたいって思わせたもん勝ちだと思っているので、審査員を笑わせたり、僕と一緒に仕事したら楽しいですよってアピールすることを大事にしています。僕は現場が明るいほど良い作品が生まれると考えているので、オーディションの時はそれも大事にしていることの一つです。
オーディションって、みんな緊張感でいっぱいなんですよ。その雰囲気も変えたいと思っていて。例えば、歌披露では楽譜どおりに歌う人が多いんですけど、フェイク入れてみたり、俳優・歌い手として自分の能力や個性をアピールしつつ、せっかくなら楽しませたいなと思って。
――課題曲以外で歌披露をされる時は、どういう曲を選曲するんですか?
オーディションで最後に何か歌ってくださいとか言われたら、『エリザベート』の「最後のダンス」を歌います。水夏希さんが宝塚在団中に演じたトートが歌う「最後のダンス」(2007年/宝塚歌劇団 雪組公演)がかっこよくて、大好きでして。J-popでと言われたら「勇気100%」にするんですけど。
――「勇気100%」?!気になります。
「勇気100%」は、「ゆうき100%」として自己紹介も兼ねて歌います(笑)。オーディションは爪痕を残せたもん勝ちだと思っているので、審査員が振り返った時に「あいつ、やばかったな(笑)」と思い出してもらえるような、自分だけの“ハッピー”な雰囲気を伝えられる曲はないかな?と探したら、「勇気100%」に辿り着きました(笑)。
――ご自身を表すキーワードの一つが「ハッピー」であることの意味がよくわかりました(笑)。
“ハッピー”は意識することが多いです。まだ舞台に立ち始めて10年も経ってない、経験の浅い僕が言うのも何ですが、遊び心ってすごく大事だと思うんですよね。ベテランの方とご一緒すると、力が抜けた状態、フラットな状態だなと思うことが多いんですよ。最初の頃は緊張が先に立ってしまって、そんな意識はとても持てなかったんですが、ある程度余裕がある方が人間的にかっこいいなと気づいて。だから、オーディションでも作品作りの現場でも、常に遊び心は忘れないようにしたいなと思っています。
僕が宝塚を見て影響を受けたように、皆さんの元気や一歩踏み出すきっかけになれたら。そのためには、まず僕自身がハッピーでないといけないと思うので、いつもハッピーでいたいと心掛けていますね。
人生で影響を受けた言葉を一つ挙げるならば
――すごく前向きな岡本さんですが、役者になってから挫折を感じたことってありますか?
挫折はいろいろありますね~。一番悔しかったのは、いただいた役を別の人に変えられてしまったこと。アンサンブルで出演した舞台だったのですが、一つ役を任されたんです。みんなを束ねるリーダー的役だったので統率力を求められたのですが、当時の僕には引き出しがなかった。台詞とか立ち回りとか、演出の方の要望に応えられなくて、ベテランの別の俳優さんに変えられてしまいました。せっかく任命していただいたのに応えられなかったことがすごく悔しくて。もう二度と経験したくないというあの思いは、今にも活きていますね。
――では、逆に一番嬉しかったことは?
『RENT』に出演できたことです(2015年版・2017年版)。宝塚と出会った時と同じくらい衝撃を受けた作品が『RENT』だったんです。宝塚は夢や理想を見せてくれるのに対して、『RENT』はリアルにキスしたり、「Over the moon」というナンバーではモーリーンが思いっきり客席を煽ったり、そのリアルさにものすごい衝撃を受けまして。大好きな作品になりました。
『RENT』は全キャスト公開オーディションで、誰でも受けることができるんです。大好きすぎて、出たいなんておこがましいと思っていたんですが、一念発起してオーディションを受けました。最終オーディションに残った顔ぶれも、そうそうたる方々で・・・。そんな中で合格の連絡をいただけた時は、周りの景色が変わって見えましたね!ちょうど喫茶店にいた時だったんですが、嬉しすぎて座席から立ち上がって「よっし!!」って叫んじゃって・・・迷惑なお客さんだと思うんですけど(笑)。それぐらい、自分が憧れた作品に出られたということは嬉しかったです。
――先ほど『エリザベート』も憧れと言っておられましたが、出たいという思いは?
難しいですね~。僕、人生で影響を受けた言葉を一つ挙げるならば『エリザベート』の「死ねばいい」という一言が浮かぶんです。ちなみにこれは、大好きな水夏希さんが演じたトートの「死ねばいい」です(笑)。とあるシーンでトート閣下が言う台詞なんですけど・・・、かっこいい、かっこいいんですよね・・・(しみじみ)。死神という存在じゃなかったら言えない言葉だし、日常生活では決して口にすることのない言葉で。
何回も見すぎて、一人『エリザベート』できるくらい台詞もナンバーも頭に入っているんですけど、こだわりが強すぎて、出たいなんておこがましいと思ってしまう・・・でもやっぱり憧れる!複雑ですね(笑)。
※後半では、舞台「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stageやミュージカル『新テニスの王子様』The First Stageの鬼 十次郎役など、2.5次元ミュージカルへの出演などのお話を交えながら、岡本さんの現在と未来に迫ります。お楽しみに!
公演情報
ミュージカル『新テニスの王子様』The First Stage
【東京公演】2020年12月12日(土)~12月24日(木) 日本青年館ホール ※終了
【大阪公演】2020年12月29日(火)~2021年1月10日(日) メルパルクホール大阪 ※終了
【東京凱旋公演】2021年2月5日(金)~2月14日(日) 日本青年館ホール
※開演時間変更
昼公演【変更前】13:00開演/13:30開演→【変更後】11:00開演
夜公演【変更前】18:00分開演/18:30開演→【変更後】16:30開演
【原作】許斐 剛「新テニスの王子様」(集英社「ジャンプSQ.」連載)
【出演】
越前リョーマ 役:今牧輝琉、手塚国光 役:山田健登、桃城 武 役:寶珠山 駿/
橘 桔平 役:GAKU/跡部景吾 役:高橋怜也/切原赤也 役:前田隆太朗/
白石蔵ノ介 役:武本悠佑、千歳千里 役:松島博毅、遠山金太郎 役:平松來馬/
リリアデント蔵兎座 役:新谷デイビッド/
徳川カズヤ 役:小野健斗、鬼 十次郎 役:岡本悠紀、入江奏多(Wキャスト) 役:相葉裕樹 泰江和明、中河内外道 役:チャンヘ、大和祐大 役:松島勇之介、都 忍 役:鈴木凌平、松平親彦 役:田内季宇、鈴木 惷 役:高橋駿一、鷲尾一茶 役:釣本 南/
黒部由起夫 役:村上幸平、齋藤 至 役:和泉宗兵/三船入道 役:岸 祐二/
<テニミュボーイズ>
飯島康平 小黒直樹 中西智也 福冨玄刀 古田伊吹 持田悠生 山野 光 吉川康太
【公式サイト】https://www.tennimu.com/
【テニミュ・モバイル】https://tennimu.jp/