いよいよ、「Dream Stage(ドリームステージ)-読奏劇-」が始まる。第1弾に登場するのは太田基裕。太田は、シャルル・ペローの『眠れる森の美⼥(原題:眠る森のお姫さま)』を読む。“「朗読」を楽曲の「Music Video」のように届ける”ことをコンセプトとした本企画は、一体どんなものに仕上がるのか?その撮影現場を取材した。
舞台やゲームなどの楽曲制作を手掛けてきた株式会社ドリームラインによるこの企画には、有澤樟太郎、太田基裕、大平峻也、北村諒、崎山つばさ、佐藤流司、橋本祥平、牧島輝(50音順)が参加する。
朗読するのは、彼らの“読みたいイメージ”から国内外のパブリックドメインとなった名作をピックアップ。配信のトップバッターを務める太田は、“多くの人が知る、馴染みのある作品”を希望したという。
『眠れる森の美女』は、ヨーロッパに伝わる古い民話だ。ディズニー映画やバレエの演目としてご存知の方も多いだろう。民話にはバリエーションがつきものだが、今回太田が読む「ペロー版」も、最も知られる「グリム版」と多々違っている。それを“声”と“映像”で感じる味わいは・・・?
撮影は、アンティーク調のスタジオで行われた。密を作らないために最小限のスタッフで撮影は進められた。カメラは全部で5台。自動で動くカメラなども設置されており、スタンバイ中も太田は「あんなところにもカメラがあるんですね!」と、ニコニコと眺めながら、撮影チームの仕事ぶりに興味津々だった。
リハーサルでは、入念に読み方や言葉の並びに違和感がないかが確認されていた。今回の朗読では、基本的には大正から昭和初期にかけて活動した楠山正雄の翻訳に沿っている。そのため、言葉も当時のまま・・・例えば、「誰」を「たれ」と読む(時代の中で発音が「だれ」に変化した)など、字面で見ると現代と変わらないが読み方が違っている言葉も散見する。また、音として聞いた時に違和感が生じる部分などもあり、太田も「こっちの方が自然では?」などと提案しながら、一つ一つ読み進めながら調整していった。
映像作品は、撮影中にはなかなか全容が分からない。すべては監督の頭の中にある。今回、監督を務めている鎌田哲生は、想定していたプランに現場で湧いたアイデアをフットワーク軽く取り入れていくタイプのようだ。「章ごとに撮る方向を変えてみようか?」などと、限られた時間と空間の中で、ひらめいた案をどんどん形にしていった。
そして、大きな食卓の上におかれていたティーカップに「紅茶」を注いでおいた方が、臨場感が増してさらに良いのでは、という案を思いついたようだ。さらに太田が「紅茶好き」であるということも聞き、「湯気が立ち昇るようアツアツのお茶を注ごう!」とさらにリアリティを求めて動く。時勢柄、飲むことはできなかったが細部へのこだわりをにじませる動きだった。
編集された映像には音楽がのっているが、この中の一部は太田が自作した楽曲。この楽曲使用は、自粛期間中に楽曲や動画作成などにチャレンジしていたという話を聞き、制作側からコラボレーションを提案して実現したのだという。収録中の姿を見ていて感じたのが、太田はフランクかつリスペクトを持って、とてもよく人とコミュニケーションを取っているということ。人に興味を持ち、人に興味を持たれる。そんなよい距離感が、太田を人としても俳優としても豊かなものにしていっているように感じた。
朗読をする姿はクールだが、撮影の合間に見せる太田の表情はとてもチャーミングだ。読みながら、昔ながらの少々残酷な表現に思わず「ひどいな~(笑)」と呟いたり(太田自身はけっこうバッドエンドものも好きらしい)、最後の美しい演出に「僕が一番特等席で見ていますね」と喜んだり。同時に、現在公演中の舞台『ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~』でも感じたことだが、翻訳もの特有の独特な言い回しも身体に馴染む、俳優としての強度も感じさせた。この模様は、本編映像に加えてメイキング映像でも観ることができるので、お楽しみに。
ペロー版の『眠れる森の美⼥(原題:眠る森のお姫さま)』の最後は、先人の“教訓”のような一言で結ばれている。今、演劇を観に劇場へ足を運ぶことにハードルを感じている人も多々いるだろう。演劇好きにとって、自分の目で観ることができないことほどつらいことはない。しかし今、それぞれの形で発信される作品がエンターテインメントを求める心を支え、“生のお芝居”を目にできた時の喜びを倍増させてくれるに違いない。美しい映像と寄り添う音楽に乗せて、物語る太田の声が優しく沁みる「読奏劇」をご賞味あれ。
◆『Dream Stage -読奏劇-』
【#1】8月12日(⽔)21:00~
太⽥基裕
朗読「シャルル・ペロー 著/眠れる森の美⼥(原題:眠る森のお姫さま)」
https://ima-ticket.com/event/117
【#2】8月22日(⼟)21:00~
⼤平峻也
朗読「⼩泉⼋雲 著/雪⼥」
https://ima-ticket.com/event/118
【#3】8月29日(⼟)21:00~
崎⼭つばさ
朗読「太宰治 著/⾛れメロス」
https://ima-ticket.com/event/119
【#4】9月5日(⼟)21:00~
橋本祥平
朗読「ヴィルヌーヴ 著/美⼥と野獣(原題:ラ・ベルとラ・ベート『美し姫と怪獣』)」
https://ima-ticket.com/event/120
※以降順次出演者・配信⽇・朗読作品を発表予定!
【公式Twitter】@dreamline_inc
【公式サイト】https://dreamline.link/dream_stage
【チケット】イマチケ https://ima-ticket.com/dreamstage
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号、2・4・11枚目 写真提供/水津惣一郎)