春、新型コロナウイルスの影響を受け、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と古田新太のタッグ企画舞台『欲望のみ』が中止になった東京・本多劇場。これまでKERAと古田がタッグを組み、過去3本ナンセンスコメディの舞台を上演してきたが、そのレギュラーメンバーが集結し、7月12日(日)にCUBE produce『PRE AFTER CORONA SHOW』に挑んだ。
本作は、劇場でのリーディングアクト『プラン変更 〜名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険〜』の無観客上演生配信と、コント映像作品『PRE AFTER CORONA SHOW The Movie』配信、という二つのコンテンツで構成され、PIA LIVE STREAMにて公開された。
また、前日の7月11日(土)には、下北沢本多劇場で、”公開ゲネプロ”(無配信)が行われ、このゲネは、緊急事態宣言解除後初めて、本多劇場に一般観客が足を踏み入れた公演となった。以下、オフィスレポートをご紹介。
7月11日(土)の公開ゲネプロは、約100名の観客が観劇。劇場入口では、全入場者にサーモグラフィ検査、手指の消毒、フェイスシールド配布などの感染症対策が行われ、客席は3席ごとに仕切り版で間仕切りされ、客席入口の扉はすべて開放されたまま、フルキャパシティの約30%の配席で上演された。
前説でKERAが登場し観客に挨拶。7月11日(土)が偶然にも本多劇場の創始者本多一夫の誕生日である事を観客に伝えると拍手が起こった。KERAの冗談に、穏やかな空気で応える客席。劇場に観客が戻って来たことが実感された。
16:00からは『PRE AFTER CORONA SHOW The Movie』の上映。KERAが脚本・構成・総合演出を担当したモンティ・パイソンさながらの、ナンセンスコントのオムニバス。人形劇、オフィスコント、劇場コント、サスペンス調コント・・・盛り沢山の容赦ないコント映像が一気に畳み掛けられる。
大竹しのぶ、宮沢りえ、井上芳雄、小池栄子、ファーストサマーウイカなどスペシャルゲストが次々と登場。上映終了後、観客は暖かい拍手を送った。
そして、休憩を挟み、18:00からは、リーディング『プラン変更 〜名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険〜』上演。舞台上、7名の出演者がアクリル板で分けられたエリアでリーディングを行う形式・・・と思いきや、キャストは次々に役を変え、衣装を着替え、立ち上がり、時には台本を手にせずに演じている。リーディングの枠を超えた舞台となった。
KERA×古田シリーズではお馴染みの古田新太演じるアラータ探偵、犬山イヌコ演ずるアルジャーノン、大倉孝二演じる神様・・・入江雅人演じる”あの”キャラクターも登場。山西惇、入江雅人、八十田勇一のKERA組お馴染みのメンバーがナンセンスを支え、奥菜恵は可憐ながらヘンテコな世界に解け込んでいる。
KERAのナンセンスコメディを演じ続けてきた”鉄人キャスト”が規格外のセリフの応酬を紡いでゆき、登場人物一人として普通の人がいない、という異次元空間が繰り広げられる。観客がセリフの応酬を聞き逃すまいと集中していることが肌で感じられた。終演後は、カーテンコールにキャストが正面に一列に並ぶと約100人の観客からは惜しみない拍手が起こった。
次の日12日には、15:00から、リーディング『プラン変更〜』の無観客生配信がPIA LIVE STREAMより行われた。昨日とは打って変わって客席には配信用のカメラが立ち並び、俳優たちはカメラの向こうの視聴者に向け高いテンションで演じていた。
KERAだからこそ創り上げた映像と演劇の2本立ての企画、『PRE AFTER CORONA SHOW』。まだまだコロナ禍の中忍耐が求められる時節だが、この作品を見て、一時、シニカルに笑い飛ばして、楽しんでもらいたい。
◆ケラリーノ・サンドロヴィッチ
11日の公開ゲネプロは、劇場に約100人のお客様がいらしてくださいました。観客と空間を共有することで、キャストのテンションが俄然高まるのを実感しました。今まで沢山やってきた「ナンセンス」ですが、ナンセンスはラフには作れないものだなと改めて思いました。ここの間尺で、このトーンで、と緻密に作っていかなければならず、それをこの短期間でまとめ上げてくれた、キャスト・スタッフに感謝しています。このチームでこれまで3本の作品を創り上げてきた経験は大きく、このメンバーだからこそ出来たのだと思います。
『プラン変更』を観ていて、やはりここでやるはずだった中止公演『欲望のみ』のことがチラチラちらつきましたね。もし上演できていたらどんな作品になったのだろう、と。
一方、映像作品『PRE AFTER CORONA SHOW The Movie』については、僕が学生時代から手本にしていたモンティ・パイソン同様、ナンセンスな上にストーリー性がない。日本では少なくとも地上波でも映画でも上映は難しいのではないかと思います。コロナ禍で嫌なことばっかりですけど、こういうことがなければ創る機会もなかったでしょう。奇しくもこのコロナ禍から受けた恩恵、というと変な話ですが、それは良かったなと思います。
芝居はお客さんが劇場に入り、様々な反応があって初めて完成すると思いますが、配信の場合はお客様の顔は見えません。視聴者にそれぞれの場所で受け止めてもらうことで完結するのではないでしょうか。スマホ画面で見るのと客席で見る劇場観劇との落差はなかなか大きいと思うので、出来る限り大きい画面でご覧になって頂けると嬉しいです。アーカイブも観られますので、初回はただ楽しんでもらって、次はどんな作りになっているのか、見直すような楽しみ方もあるんじゃないかなと思います。
◆古田新太 コメント
やっぱり皆でものを創るのは楽しいなと思いました。まあ自由ではないけれど。不自由な中でもおもしろいものが出来たと喜んでおります。劇場はまだ満員には出来ないので、早く満員の中でやりたいですね。
配信をご覧になる方は、一所懸命デタラメを作っていますので、お家で過ごす時に少しでも楽しんで頂けたら幸いです。また観たら感想を何かにあげてください。
CUBE produce『PRE AFTER CORONA SHOW』有料アーカイブは以下URLにて配信中。
【PIA LIVE STREAM】https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2062521
(撮影/引地信彦)