三谷幸喜新作『大地』ソーシャルディスタンスを取り開幕 大泉洋、山本耕史らと「先陣を切る」

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2020年7月1日(水)に東京・PARCO劇場にて、三谷幸喜による新作舞台『大地(Social Distancing Version)』が開幕した。本作は、新しくなったPARCO劇場のオープニングシリーズ“夏の陣”として、三谷作品を3ヶ月連続で上演する1作目。大泉洋、山本耕史らが出演する本作の、初日前に行われたフォトコールの模様をレポートする。

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PARCO劇場は、建て替えのため2016年8月より一時休館となっていたが、今年はじめにこけら落とし公演を行い、3月にグランドオープンした。オープニング作品第1弾として渡辺謙主演の『ピサロ』を上演していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で4月15日(水)以降の公演がすべて中止に。2ヶ月半を経て、この『大地(Social Distancing Version)』にて再開する。

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1994年の『出口なし!』以来、PARCO劇場をホームグラウンドとしてきた三谷が、今回書き下ろしたのは“三谷流俳優論”。とある共産主義国家を舞台に、「演じる」行為を禁じられた俳優たちが極限状態の中で織りなす群像劇として仕上げた。

出演者には、大泉、山本のほか、竜星涼、竜星涼、栗原英雄、藤井隆、濱田龍臣、小澤雄太、まりゑ、相島一之、浅野和之、辻萬長という顔ぶれが揃った。

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【あらすじ】
とある共産主義国家。独裁政権が遂行した文化革命の中、反政府主義のレッテルを貼られた俳優たちが収容された施設があった。強制的に集められた彼らは、政府の監視のもと、広大な荒野を耕し、農場を作り、家畜の世話をした。過酷な生活の中で、何より彼らを苦しめたのは「演じる」行為を禁じられたことだった。

正義のために演劇で社会を変えようとする俳優、観客からのオベーションをもう一度味わいたいとひたすら努力する俳優、生まれた瞬間にその家柄のために俳優となった俳優、なんとなく俳優になってしまった俳優・・・。理由はどうあれ、皆、役者としてしか生きる術を知らない者たち。極限状態の中で彼らは――。

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フォトコールの開始前には、作・演出の三谷による前説が行われた。三谷は、「今、舞台俳優たちは、なかなか演劇に携わることができず、苦労しているところであります。この作品は、ほぼそれと同じような設定で“演じる”ことができない人たちが集まっております。本を考えたのは去年だったのですが、なんという先見の明なんだと我ながら思っております」と、笑いを織り交ぜながら創作過程を説明した。

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上演に向け、スケジュールや配席も見直すだけでなく、タイトルも『大地』から『大地(Social Distancing Version)』と変更。舞台上にも三密を避ける様々な工夫がされていると説明した。傾斜のある八百屋舞台は、9つのブロックに分けられている。ベッドの置かれたそのマスごとを各自の部屋のように見せ、俳優たちはそのスペースの中で主に芝居をする。そうすることで、自然に“ソーシャルディスタンス”を取った形で場面が作られていく、という具合だ。

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舞台セットも換気に適した隙間のある作りになっており、舞台美術における巧みの技が光る。また、演出面でも「俳優たちも、お互いにあまり近寄りすぎないようにしておりますが、『2m以上近づくな』とするのではなく、距離を取るその意味をつけて作っております。喧嘩するシーンなども、接近せずにどうやって喧嘩するのか?それも見どころの一つです」と三谷。

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公開されたのは冒頭のワンシーン。映画スターのブロツキー(山本)が収容所に到着した翌日、収容所の管理官であるドランスキー(小澤)が、大手劇団出身・裏方兼務のチャペック(大泉)たちのバラックを訪れる。

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そこでは、女形の役者ツベルチェク(竜星)、ものまね芸人のピンカス(藤井)、学生のミミンコ(濱田)、大手劇団出身で演出家兼務のツルハ(相島)、サーカス団出身のプルーハ(朝野)、大手劇団出身のバチェク(辻)が共同生活を強いられていた。指導員のホデク(栗原)は、彼らをドランスキーに紹介していく。ホデクと違い、演劇・映画といったものに一切関心がないというドランスキーだったが・・・。

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挨拶の最後、三谷はこんな話をした。

「1924年、築地小劇場という劇場(日本初の新劇の常設劇場)が誕生しました。現代演劇のスタートだと思われるこの劇場では、幕が開く時に銅鑼(ドラ)を鳴らして始めたという話があります。今、なかなか舞台ができない時間が続いていますけれども、必ずもとの状態に戻りたいという思いがあります。そして、僕らはその先陣を切ることになりました。ということで、今回の芝居もドラの音から始まります」

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演じるとは何か?笑うとは何か?生きるとは何か?制限された世界で、俳優たちは「何としても生き延びなくてはいけない」ともがいている。偶然重なった、現実と舞台の向こうの世界。個人主義でありながら集団の中でしか生きることのできない「俳優」という存在を、真正面から見つめながら、今をどう生きるか考えていきたい。

PARCO劇場オープニング・シリーズ 三谷幸喜三作品三ヶ月公演『大地(Social Distancing Version)』は、以下の日程で上演。上演時間は、第一幕75分、休憩25分、第二幕75分の計2時間55分を予定。

なお、本作はWOWOWメンバーズオンデマンドにて7月11日(土)17:00よりライブ配信されるほか、「PARCO STAGE@ONLINE」の一貫としてイープラス「Streaming+」でもライブ配信されることが決定している。詳細は、公式サイトにてご確認を。

【詳細】https://db.enterstage.jp/archives/2830

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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