結成25周年を迎える地球ゴージャスの祝祭公演となる『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』の公開ゲネプロが舞浜アンフィシアターで3月上旬に行われた。理想を求める国の戦の中で、たくさんの血と涙が大地を濡らした時代に、記憶をなくし、小さなタバラの島に辿り着く青年・シャチと島民との交流を描いた本作。舞台初主演となる新田真剣佑の他、笹本玲奈、松本利夫(EXILE)、湖月わたる、愛加あゆ、島ゆいか、森公美子、そして、岸谷五朗、寺脇康文らが壮大な物語を歌とダンスと共に紡いでいる。
物語は、勇ましく日本のために戦うことを宣言する男が大海原に投げ出されタバラの島に辿り着くところから始まる。体中に響きわたる和太鼓の音に合わせ展開される盾や棒を使った群舞で会場を圧倒。さらに、その中を走り抜けキレの良い殺陣と見得を披露する新田真剣佑の姿に目を奪われてしまう。大義のために尽くそうと奮闘する、気迫溢れるピリッとした空気から始まるが、目を覚ました男の前に現れたタバラの民の太陽のように輝く笑顔と歌声、ダンスで一瞬にして晴れやかな気持ちにさせられる。冒頭からこの緩急に心を掴まれて物語に引き込まれてしまう。
言葉が通じず、“キス”の概念でもすれ違い、それでも大らかな心でシャチと呼んで受け止めてくれるタバラの民との交流の中で、シャチは自分の消えた記憶の中に忌まわしいものがあるのではないかと悩み始める。民との交流を純粋に喜び、楽しみ、その中で葛藤する・・・そんなシャチの姿を新田真剣佑が愛くるしさとほどよい哀愁を纏いながら繊細に演じている。柔らかくしっとりとした歌声と鍛え上げられた体で表現されるキレの良いダンスも見どころ。新たな新田真剣佑の魅力を感じることが出来る。
そんなまるで何も知らない赤子のように純粋な瞳でタバラの民と向き合うシャチの輝きに目を惹きつけられるが、他の登場人物もとても魅力的だ。
初めて島にたどり着いた得体のしれない男をどうするべきか迷う島民の中で、その命の尊さを説く女性・ステラ。笹本が演じるステラは母性に溢れ、人の“善”を信じ、違う文化を持つ人間同士の共存を信じる女性だ。あたたかく澄んだ歌声に聴き惚れ、その清らかさと愛に溢れる姿にシャチと同様に心癒される。
さらに、よそ者のシャチに敵意を向け、力強いダンスでその勇猛さを表現するカイジ(松本)の勇ましさ、華やかなダンスで島民を引っ張る強き女性・メリュー(湖月)の美しさ、ひと際笑顔が輝くちょっぴり変わり者なアンジュリ(愛加)の可憐さ、しなやかで軽やかなダンスで魅せてくれるステラの妹・シーナ(島)の麗しさ、圧倒的な歌声と存在感を持ち、お茶目な一面も見せる長老(森)の安心感など、沢山の魅力を持つ個性豊かなキャラクターたちが、幻想的ながらリアルを含んだ壮大な物語を盛り上げる。
そして何より、シャチと同じく記憶を無くしタバラの島にたどり着いた男・トドを演じる岸谷、島民のリーダー的存在でメリューをこよなく愛し尽くす男・ザージャを演じる寺脇の物語にメリハリをつけるその演技力と存在感が素晴らしい。トドとザージャ、異なる国の者同士が理解し合い、共存することが出来るのか・・・という物語の核の答えの鍵ともなる二人の関係性は、観ているものに笑顔と緊張感を与えてくれる。幅広い層から支持を得る“地球ゴージャス”を25年間けん引してきたベテランの力強さを感じた。
楽しく華やかなダンスと歌声に心を躍らせられ、異文化を持つ人と人とがどうすれば一緒に手を取り合って生きていけるのかを深く考えさせられる本作。シャチに隠された秘密、ステラとの関係、タバラの民たちの行く末・・・予想できない展開で観客の心を揺らし続けるドラマに溢れた物語の結末となっている。
ダイワハウスSpecial 地球ゴージャス二十五周年祝祭公演『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』は2020年4月13日(月)まで舞浜アンフィシアターで、5月3日(日・祝)から5月14日(木)まで大阪・フェスティバルホールで上演。上演時間は休憩込みの約3時間だ。※3月10日(火)~3月19日(木)、3月28日(土)~4月13日(月)までの公演は、新型コロナウイルスの影響で中止。
なお、劇場では感染症予防の取り組みが徹底され、劇場スタッフは全員マスクを着用し接客、劇場内各所に消毒用アルコール液の設置、赤外線サーモグラフィーによる体温測定などを実施。客席内及びロビーは、アンフィシアターの換気システムにより、常時外気との換気を行い、上演前後と休憩時間には外扉を開け、より徹底した換気を図っている。また、体調を懸念する観客には、会期中の全日程で払い戻しの対応を行っている。
◆公演情報
ダイワハウスSpecial 地球ゴージャス二十五周年祝祭公演『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』
【作・演出】岸谷五朗
【演出補】寺脇康文
【出演】
新田真剣佑、笹本玲奈/松本利夫(EXILE)、湖月わたる、愛加あゆ、島ゆいか/森公美子/岸谷五朗・寺脇康文
【公式サイト】https://www.chikyu-gorgeous.jp/25th/
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 3号)