2020年2月28日(金)に東京都内で行われた「第27回読売演劇大賞贈賞式」。本レポートでは「杉村春子賞」を受賞した菅田将暉のスピーチを紹介する。「杉村春子賞」は、文学座の協力のもと第6回より設けられた賞。新劇の名女優・杉村春子氏の業績を讃え、年間の活躍が目覚しく、これからの活動が期待される新人に贈られる。前年は松下洸平が受賞した。
菅田は、2009年に『仮面ライダーW(ダブル)』でデビュー。当時、16歳だった。舞台では、蜷川幸雄演出『ロミオとジュリエット』(2014年)、トム・ストッパード作『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(2017年)など、話題作に出演してきた。受賞対象となった『カリギュラ』は、20世紀のフランスを代表する作家アルベール・カミュの作品で、“不条理の哲学”で知られるカミュ自身が『異邦人』『シーシュポスの神話』と共に“不条理三部作”と位置づけた傑作戯曲の一つ。演出は栗山民也。菅田は、愛する妹を亡くしたことで絶望した孤高の暴君を、知的かつ妖しく演じきり、その豊かな表現力が高く評価された。
プレゼンターとして登壇した松下は、『カリギュラ』の東京千秋楽を観劇したそうで、「感動という言葉では言い表せないぐらい、胸が痛かったです。苦しくて苦しくて。そういう作品に巡り会えることはそうあることではないでしょうし、そんな作品を作り上げた演出の栗山さんと、カリギュラ役を演じた菅田将暉さんに“完敗”という感じでした」と感想を語った。
「たくさんの敬意とリスペクトを込めて贈呈させていただきます」という松下から、少々緊張した面持ちでブロンズ像を受け取った菅田。「この度は、このような賞をいただき本当にありがとうございます。普段、作品が終わるとすぐに忘れるんですけど・・・」と、作品について話し始めた。
「この『カリギュラ』は、終わって数ヶ月経つ今でも台詞とかが頭にこびりついていまして・・・、最近はちょっとうんざりするぐらいだったんですけど(笑)。それぐらい、身体と心に残る作品と出会えたことに感謝です。何よりも、稽古場からすごく楽しい現場でした。栗山さん、キャストの皆さんが自由にやらせてくださったことが、このような賞に繋がったことに心から感謝しています」と、改めて謝辞を述べた。
また、この日は新型コロナウイルスによる感染症対策として、出席者全員にマスク着用が求められていた。菅田は、会場を見渡し一息つくと「これからも、ただただお芝居をできることに感謝をして、自分らしく、楽しく、自由にやっていきたいなと思います。ありがとうございました」と深々と頭を下げた。
菅田は、現在27歳。俳優としてだけでなく、歌手などにも活動の幅を広げ、表現者として脂が乗ってきた。今回の受賞について、選考委員の大笹は「このカリギュラ役で、菅田将暉を“発見”したとの思いが強い。その意味では新人であり、だから杉村春子賞がふさわしい。(中略)あれだけの表現力を発揮し得た俳優に、洋々たる未来のないはずがない。これからを大いに期待してる」と評している。
菅田は、杉村春子賞のほか、優秀男優賞も受賞した。
なお、舞台『カリギュラ』は3月14日(土)にWOWOWライブにて放送予定(放送時間18:30~21:00)。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)