KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『未練の幽霊と怪物』が2020年6月に上演されることが明かされた。
本作は、国内外で活躍する作家・演出家・チェルフィッチュ主宰の岡田利規が、現存する世界最古の舞台芸術「能」に触発された新作を、日本の俳優たちと共に創作するプロジェクト。
出演者には、俳優、そしてダンサーとしても知られる森山未來をはじめ、片桐はいり、栗原類、石橋静河、チェルフィッチュ作品にも多数出演し、映画監督としても知られる太田信吾が名を連ねている。さらに、シンガー・ソングライターの七尾旅人が出演。七尾は劇中では謡をつとめ、内橋和久率いる演奏家とともに音楽劇としての能の根幹を担う。
構想中の演目は、ザハ・ハディドをシテにした『挫波』と、高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる『敦賀』。能の上演形式にのっとり、間狂言を挟む二つの演目を上演する。
『挫波』―2012年に新国立競技場の設計者としてコンペで選ばれ、日本でも一躍脚光を浴びた天才的な建築家「ザハ・ハディド」。後にその採用を白紙撤回され、その後失意のうちに没した彼女が、2020年の千駄ヶ谷に現われる。
『敦賀』― 1985年の着工以来1兆円を超す巨額の資金が投じられながら一度も正式稼動することなく廃炉の道を辿る高速増殖炉「もんじゅ」。夢のエネルギー計画を実現するべく、希望を抱いて「もんじゅ」の設立・計画にかかわってきた人々の思いが、もんじゅを臨む敦賀の浜辺に現れる。
目に見えないもの、霊的な存在がその想いを語る「夢幻能」の構造を借り、岡田が原題に問いを投げかける。
◆岡田利規
社会とその歴史は、その犠牲者としての未練の幽霊と怪物を、ひっきりなしに生み出して来て、今だって生み出し続けています。 わたしたちはそれら幽霊や怪物のことを見ないこと忘れてしまうことを、その気になればできちゃうし、そのほうが快適な向きは確かにある。 でもそれらに、つまり直視しないこと忘却することに、抗うために、能という演劇形式が持つ構造を借りて、音楽劇を上演します。
音楽は維新派の音楽監督に32年にわたって携わり、作・編曲、プロデュースのほか、即興演奏などでも自在に活躍する内橋和久が担当。ダクソフォン3重奏を率いて、能の囃子方の役を担う。
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 『未練の幽霊と怪物』は6月3日(水)から6月24日(水)まで神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場にて上演される。その後、豊橋、新潟、兵庫を巡演予定。
【豊橋公演】6月27日(土) ・6月28日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
【新潟公演】7月1日(水) りゅーとぴあ 新潟市民芸術 文化会館 劇場
【兵庫公演】7月4日(土)、7月5日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
岡田利規(C)Kikuko Usuyama