2019年12月28日(土)に東京・明治座にて『明治座の変~麒麟にの・る~』が開幕した。本作は、演劇製作会社る・ひまわりと創業140年超の老舗大劇場・明治座がタッグを組み、歴史ものをテーマに上演を続ける“祭”シリーズ最新作。今年は演出を原田優一、脚本を赤澤ムックが手掛け、W座長を平野良と安西慎太郎が務めている。本記事では、初日前日に行われた公開ゲネプロの模様をレポートする。
今回の出演者は、平野、安西のほか、神永圭佑、木ノ本嶺浩、大山真志、井阪郁巳、松田岳、小早川俊輔、吉村駿作、土屋神葉、林剛史、谷戸亮太、川隅美慎、二瓶拓也、井深克彦、中村龍介、加藤啓、内藤大希(31日のみ出演)・原田優一(Wキャスト)、椿鬼奴、辻本祐樹、粟根まこと、凰稀かなめ(特別出演)。
【あらすじ】
「この世に名君現るとき、麒麟もまた現る――」
昔々、神獣・麒麟がいた。
麒麟は天下人だけが見ることができる不思議な神獣だった。
それ故に、天下を目指した人々は麒麟を奪い合い争った。
令和元年、何かを探して客席から現れた“きりん”(加藤)と飼育員田村さん(中村)は、現代の青年・竹中くん(井阪)に声をかけ、「竹中半兵衛の代役を探している」と強引にタイムワープする。一方、語り部として現れた紙芝居屋のおっちゃん(粟根)は、徳川家康(原田/内藤)は、神獣“麒麟”の話を語り始める・・・。
そして時は永禄十年(1567年)、戦国時代――。
少しサイコパス気味の安土の武将・織田信長(安西)は、いつか自分にも麒麟が見えることを疑わず、戦に明け暮れていた。
信長をこころよく思っていない朝廷は、将軍・足利義昭(川隅)に命じ、ある策略を巡らせる。
それは、将軍家に近い武将・明智光秀(平野)に織田側のスパイをさせること。
しかし呼び出された光秀は、ものの数秒で将軍の命令を断り、その場から出奔する。
どうやら、光秀は何か大きな秘密を抱えているようで・・・。
「何故、明智光秀は織田信長を討ったのか」という、歴史上の最大の謎を、そうくるか!という“たられば”として盛り込んだ巧みなギミックを盛り込んだストーリー。もちろん、年末恒例の祭り感もたっぷり。自由なアドリブ(?)あり、殺陣あり、笑いあり。この年末“祭”シリーズの常連に加え、新しい顔ぶれの奮闘が光った。
そして、今年の特色としては“歌”だろう。これまでも、劇中で歌われることはあったが実力者たちが、結構とんでもない歌詞を本気で歌い上げる様は、笑っていいのか、聞き入っていいのか分からなくなる。ミュージカル俳優としても活躍する原田らしい演出が、新たな風を吹き込んだ。
そして何より、W座長の平野と安西の存在感と、そのコントラスト。二人が牽引する芝居が、ぐっと座組の感情を高め、物語に奥行きと深みを生み出していた。明治座という劇場ならではの演出も必見。本能寺で、明智光秀はなぜ織田信長を討ったのか・・・二人の芝居が導き出すこの物語の真実は。
そして、第二部では「LMS歌謡祭」として、歴史上の人物に扮した俳優たちがアイドルユニットを結成してショーを行う。今年は三上真史の総合司会のもと、新たな試みとして“3.5次元舞台”と打出し、ライブだけでなくミュージカル、恋愛シミュレーションゲーム、寸劇、ネタ見せなど、様々なエンターテインメントに挑戦している。
ゲスト審査員には、日替わりで多和田任益、佐藤貴史、佐奈宏紀、永田崇人、永田聖一朗、 杉江大志、近藤頌利、山崎大輝、内藤大希が登場。なお、この日替わりゲストは第一部でルイス・フロイス役としても参加する(永田崇人、内藤は除く)。
以下、平野と安西、演出の原田のコメントを紹介。
◆平野良(明智光秀役)
令和元年の締めくくりにこのお祭りに参加できて光栄です。6年ぶりですが、臆することなく、余すところなく楽しみたいと思います。一部のお芝居パートは例年とは一味違った空気感になっていると思います。笑えるおもしろさ、巧みなおもしろさ、物語自体のおもしろさが綺麗なマーブル模様を成していますので、存分に体感していただければと思います。二部はとりあえず、ものすごいことになってます、と言っておきます。ご期待あれ。
◆安西慎太郎(織田信長役)
再び明治座に立ち、平野良さんと共に座長を務めることが出来て幸せに思います。心境としましては、良い緊張感が流れ、ドキドキしています。今回もおもしろい作品を作るべくカンパニー一同懸命にやってきました。お客様からいただいた時間を誠心誠意、大切に扱わせていただきます。また一味、いや三味違う年末祭シリーズをお楽しみください。
◆原田優一(演出)
2019年は皆様にとってどんな年でしたでしょうか。早くも年末を迎え、共に明治座で盛り上がって締めくくるに相応しいパフォーマンスになるべく、一丸となって最後の準備をしてきました。観劇後に劇場を出る時、新たな年を明るく迎えていただけるような、壮大でお馬鹿なスペクタクルになっていればと。“とんでも設定”で必死に生きる人間模様にご注目ください。
本作には、11月13日に突発性虚血心不全で急逝した滝口幸広が浅井長政役で出演予定だった。本シリーズ常連だった滝口の姿を、もう見ることができないのはとても悲しい。悲しいけれど、劇場にはいくつもの楽しい芝居の思い出が残っているし、これまで彼が携わってきたお弁当などの味が思い出されるし、彼の戦友とも言える俳優たちがしっかりと芝居で楽しませてくれる。記憶は永遠だ。ありがとう、たっきーさん。
『明治座の変 麒麟にの・る』は、12月31日(火)まで東京・明治座にて上演。上演時間は、上演時間は<第1部>第一幕1時間、休憩30分、第二幕1時間10分、休憩30分/<第二部>45分の計3時間55分を予定。なお、千秋楽となる12月31日(火)夜公演ではカウントダウンが行われる。
【公式サイト】https://le-hen.jp
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)