16世紀のスコットランド女王メアリとイングランド女王エリザベスの歴史的な対立を描く舞台『メアリ・スチュアート』が、森新太郎と世田谷パブリックシアターがタッグを組んで送る第5弾作品として、2020年1月より上演される。これに先立ち、12月10日(火)に制作発表会が行われ、長谷川京子、シルビア・グラブ、三浦涼介、吉田栄作、鷲尾真知子、山崎一、藤木孝、演出の森が登壇した。
本作の舞台は、16世紀末のイギリス。イングランド女王エリザベスのもとに身を寄せたスコットランド女王メアリだったが、エリザベスはイングランドの正当な王位継承権を持つメアリの存在を恐れ、彼女を幽閉し続けていた。
そして、エリザベスの暗殺計画にメアリが関わったのではないかという嫌疑がかけられ、裁判の結果、メアリに死刑判決が下されたのである。刻一刻と迫る処刑の中、己の正当性を訴えるメアリと、その処刑を決行するか苦悩するエリザベスの姿が繊細な心理描写によって描かれていく。
森は「若い頃に、所属している劇団から借りたままだった『メアリ・スチュアート』の戯曲をひょんなことから読み返していたら、なんてステキな戯曲なんだと驚愕して、すぐに『これをやらせてくれ、今すぐやらせてくれ』と世田谷パブリックさんにお願いしました」と本作を上演するに至った経緯を説明した。
さらに「シラーの戯曲は、二人の女王の対決、そしてその周りでうごめく権力を持った男達の右往左往ぶりをリアルに描いています。それは、笑えるくらい必死で・・・。それに加えて、男社会で生きる二人の女王は、一番共感し合える存在でありながら、最後まで分かり合えず、許し合えないというのが皮肉で、これは現代と重なると思いました。胸が痛くなるほど、“今の日本の話”だと思います」と本作の魅力を熱弁。「やりたい一心で選んだ本ですので、上演できる喜びと同時に、覚悟を持ちながら演出に挑んでいきたいと思います」と力を込めた。
2012年以来の舞台出演となる、メアリ役の長谷川は「大役をいただいて、背筋が伸びる思いです」と胸の内を明かす。久しぶりの舞台出演に挑むため、この日の会見前に3日間ほどの読み合わせ稽古を行ったそうで「私の緊張をほぐすための期間でした」と振り返る。
そして「稽古を重ね、思った以上に、いろいろな意味で大変だと実感しています。この作品は非常に人間関係がおもしろい話。女王の周りの男たちが権力に目を光らせて動く姿は現代と変わらず、実は女王の二人が一番男前だったと感じています」と本作を分析すると「稽古では森さんに、自分の癖や今までなんとなく誤魔化しながらやってきたところまで細かくご指摘いただき、痛いところを毎日突かれていますが(笑)心が折れないように、毎日精進してまいります」と意気込んだ。
また、長谷川は、8年ぶりとなる舞台出演について「私としては舞台は切望していて、なかなかご縁に至らなかっただけで、いつでもウェルカムな状態だったんです。今回、いただいたのがこんな大役だったので、一瞬どうしようかと思ったんですが、信念として『山を越えないという選択肢はない』と思っていますし、やれると思ってキャスティングしてくださっているなら絶対にできるという根拠のない自信もあって、今回、挑戦させていだくことになりました」とその思いを述べた。
メアリと対立するエリザベス女王を演じるシルビアは「台本と向き合いながら、あまりのセリフ量に怯えています(笑)」と冗談めかして挨拶すると「今はまだすごいキャストの中に入っちゃったなと怯えている状況ですが、覚悟を決めて、どれだけ厳しい状況にも耐えていこうと思います。本番が怖いけれど楽しみです」とコメント。
メアリ、さらにはエリザベスから思いを寄せられるレスター伯ロバート・ダドリー役の吉田は「森さんが日本に投影できるとおっしゃっていましたが、基本は外国の歴史が題材。なので僕はその世界観を調べていて、その中で、映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』も観ました。とてもおもしろく、参考になったのですが、映画ではメアリが断頭台に上がるまでの部分が描かれていません。今回の舞台ではその過程を描いているので、映画とセットで観てもいいと思います」と提案し「この二人の女王の心を掴んだであろう男を演じますので、ぜひお楽しみに!」と笑顔を見せた。
メアリに恋心を抱き、メアリを救うべく奔走するモーティマーを演じる三浦は「3日間のプレ稽古で、すでに心が折れかけております」と苦笑いを浮かべるも「でも、膨大なセリフ量で綴られる、歴史ある作品に出演させていただけることに心から感謝しています。森さんのご指導のもと、たくさんの先輩方に学ばせていただき、精一杯、僕なりのモーティマーを演じさせていただければと思っています」と意気込みを語る。
メアリの乳母のハンナ・ケネディ役の鷲尾は「この作品に出させていただくことは私の新たな挑戦。今回の私のテーマはメアリをいかに愛して、愛しぬけるか。身勝手な男ばかりの中で、私はメアリを愛したいと思います」
バーリー役の山崎は「(バーリーは)エリザベスの重鎮で片腕なんですが、すごく嫌な奴なんです。とにかく冷酷で強硬派で、メアリを追い詰めていく存在。でも、森さんの話を聞いて、日本の政治と似ているということからヒントが得られると思って、今、ほくそ笑んでいます。とにかくいじめ抜いて、嫌われたいと思います」
シャローズベリー伯タルボット役の藤木は「この作品のスクリプト(台本)を読んで感じたことは『スリル』『スピード』『サスペンス』。もっと言えば、ワクワクとドキドキです。これはお客様がこの作品を観てくださったときに、まず感じることだと思います。みんなで力を合わせて、お客様に楽しんでいただけるような作品にできたらと思っています」とそれぞれが思いを語った。
舞台『メアリ・スチュアート』は1月27日(月)から2月16日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアターにて上演。
(取材・文・撮影/嶋田真己)