韓国で異例の国民的大ヒットを放ち、日本キャストでの上演が決定した舞台『私に会いに来て』。9月13日(金)の初日公演前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、藤田玲と中村優一、兒玉遥、西葉瑞希、グァンス(SUPERNOVA)、栗原英雄が登壇した。
本作は、実際の猟奇殺人事件の資料をもとに創作されたラブサスペンス舞台。次々と起こる猟奇殺人事件の捜査を担当するため、ソウルから派遣されたエリート若手刑事のキムと彼の周りの捜査本部の人間模様を描く。第72回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞したポン・ジュノ監督は、この作品を原作として映画『殺人の追憶』を2003年に公開。観客500万人を記録する大ヒットとなった。
今回、上演される日本キャスト版では、演出をヨリコジュンが担当。主演のキム・インジュン刑事役は、本作が舞台単独での初主演となる藤田が務める。
会見で、藤田は「ちゃんと一個一個、詰めて稽古ができたので、韓国の作品に恥じないような日本バージョンができたかなと思っています。楽しみに見ていただければ」と胸を張った。物語が物語だけに、稽古期間中は「(疲れ切って)毎晩ぐっすり眠れましたが、悪夢にうなされました(笑)」と冗談めかして話したが、「体を動かす舞台ではないですが、脳がカロリーを使っています。観に来られる方もすごく考える(ことになる)重いテーマだと思いますが、心にも体にも良いストレスがかかる舞台になっていると思います」と自信をのぞかせた。
また、ミスキム役の西葉は「とても重い作品ではありますが、皆さんに観ていただきたいと思いながら稽古をしました。ぜひ観に来てください」とア ピール。パク・ヨンオク記者役の兒玉も「稽古場からみんなで丁寧に作り上げていって、すごくいい作品に仕上がっていると思います。観に来てくださったら、200パーセント、良かったと思ってもらえる舞台だと思います」とにっこり。
キム・セゴン課長役の栗原は「気力、体力、集中力をすごく必要とする舞台です。そんな作品がついに初日なので、淡々とできたらいいなと思っています」、容疑者役のグァンスは「原作がいい作品ですが、今回、改めてヨリコさんの演出で新しい世界観がたっぷり入った作品になったと思います。演者の一人として、丁寧に演じたいと思います」と意気込んだ。そして、チョ・ナンホ刑事役の中村は「限られた公演数となっているので、ぜひ早く来ていただきたいです」と呼びかけた。
兒玉は、これがHKT48卒業後の初仕事、初の舞台出演となるが「稽古中はうまくできなくて悩んだ日もありましたが、皆さん、丁寧にアドバイスをくださいました。今まで練習して来たことを信じて本番に臨みたい」と改めて力を込めた。自信を聞かれると「あります!できます!・・・と自己暗示しています」と笑顔をのぞかせた。
冒頭では、シンプルなセットの中に浮かび上がった仮面の女の姿が不穏な空気を漂わせ、幕開け前から本作のストーリーを予感させる。凄惨な殺人事件と、それを追う刑事たちの物語を軸に描かれている本作だが、同時に登場人物たちのキャラクター性を丁寧に描いており、それが深い人間ドラマへと繋がっていた。
際立っっていたのは、藤田演じるキムと中村演じるチョの対比だ。ソウル大学出身のエリートで、ポエムを書き、科学捜査にも精通するキム。一方、田舎の警察に務める刑事で、武術に長けていて、強引な手段であっても容疑者を自白さえようとするチョ。捜査の仕方も性格も真逆の二人は、ことあるごとに対立する。そして、この二人が揉めれば揉めるほど、殺人事件を解決できない刑事たちの焦りや怒り、やりきれない思いを表しているように感じ、ヒリヒリとした緊張感が劇場を包んだ。
二人の女性キャストも見逃せない。キム刑事に恋をするミスキムは、女性らしい華やかさでまさに物語に花を添え、仕事に邁進する強い女性記者のパクはその信念とひたむさきで男たちを動かす。本作の「人間ドラマ」を担う、大事な役どころであり、刑事たちのプライベートな顔を描き出す一助になっていた。
そして、特筆しておきたいのが、グァンスの体当たりの演技。今回、グァンスは容疑者4人を1人で演じているが、そのいずれも強烈なインパクトを放っていた。大人気グループ「SUPERNOVA」のメンバーとしても活躍する彼が度肝を抜く姿を披露しており、本作に強い思いを持って臨んでいることが伺えた。ぜひ、その目で確かめてもらいたい。
舞台『私に会いに来て』は、9月16日(月・祝)まで東京・新国立劇場 小劇場にて上演。その後、9月19日(木)・9月20日(金)に大阪・サンケイホールブリーゼで公演を行なう。上演時間は、2時間30分(休憩15分含)を予定。
(取材・文・撮影/嶋田真己)