2019年6月10日(日本時間)に、「第73回トニー賞授賞式」が開催された。WOWOWでは、華やかな授賞式の模様をニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールから生中継。ナビゲーターの井上芳雄と、スペシャル・ゲストの堂本光一がその行方を見守った。
トニー賞は、該当期間中にアメリカ・ニューヨークのブロードウェイの劇場で公演が開始された作品が対象に贈られる賞で、アメリカ演劇界で最も権威のある賞とされている。演劇部門・ミュージカル部門それぞれに、作品賞、俳優賞、演出家、デザイナーなどのスタッフ部門、そして再演に贈られるリバイバル作品賞が設けられており、1年間のブロードウェイを総括するアワードとなっている。
写真:『ハデスタウン』
今年のトニー賞は、ミュージカル部門でレイチェル・チャフキン演出の『ハデスタウン』が13部門14ノミネートという圧倒的な強さを見せつつも、『トッツィー』『ビートルジュース』といった80年代の大ヒット映画のミュージカル化も多部門にノミネートされ、混戦が予想されていた。結果は、『ハデスタウン』が最多8部門を受賞したほか、女性演出家による作品に多く賞が渡るなど“ダイバーシティ”を感じさせる結果に。また、今年のアカデミー賞で話題を呼んだビリー・ポーターのプレゼンター衣装にも注目が集まった。
写真:『キスミーケイト』
日本のスタジオでは8:00に、ナビゲーターの井上によるオープニングパフォーマンスで放送がスタートした。井上は、本年度ノミネート作品から「キス・ミー・ケイト」より『Another Op’nin’,Another Show』、「オクラホマ!」より『Oklahoma!』、「ハデスタウン」より『Way Down Hadestown』の特別メドレーを披露。さらに、スペシャル・ゲストの堂本を迎え、演出や舞台裏にまで興味津々なトークを繰り広げた。
写真:演劇作品賞『ザ・フェリーマン』
【主な部門受賞結果】
ミュージカル作品賞:『ハデスタウン』
ミュージカル・リバイバル作品賞:『オクラホマ!』
演劇作品賞:『ザ・フェリーマン』(作:ジェズ・バターワース)
演劇リバイバル作品賞:『真夜中のパーティー』(作:マート・クロウリー)
演劇主演男優賞:ブライアン・クランストン(ネットワーク)
演劇主演女優賞:エレイン・メイ(ザ・ウェイヴァリー・ギャラリー)
演劇助演男優賞 バーティ・カーヴェル(インク)
演劇助演女優賞:シーリア・キーナン=ボルジャー(アラバマ物語)
ミュージカル主演男優賞:サンティーノ・フォンタナ(トッツィー)
ミュージカル主演女優賞:ステファ二―・J・ブロック(ザ・シェール・ショー)
ミュージカル助演男優賞:アンドレ・デ・シールズ(ハデスタウン)
ミュージカル助演女優賞:アリ・ストローカー(オクラホマ!)
写真:ジェームズ・コーデンOPパフォーマンス
今回の司会者は、大人気トーク番組の司会であり俳優などマルチに活躍するジェームズ・コーデン。2016年の第70回に続き、2度目の登板となった。冒頭では、約10分におよぶ圧巻のパフォーマンスを披露。オープニングから大いに盛り上げた。
近年は社会情勢や各種ムーブメントを踏まえて、壇上での政治的な発言に注目が集まりがちだが、今年は、努力が実った喜びや演劇人としての誇り、仲間や身近な人への感謝、演劇を人生になぞらえるといったような、等身大で心温まるスピーチが目立った。
写真:ミュージカル助演女優賞/アリ・ストローカー(オクラホマ!)
そんなスピーチでも特に喝采を浴びたのはミュージカル助演女優賞を受賞した「オクラホマ!」のアリ・ストローカー。1943年初演作のリバイバルである同作は、現在のブロードウェイで定着しつつある、人種やハンディキャップにこだわらない“ダイバーシティキャスティング”という手法が採用され、パフォーマンスでも大きな存在感を見せつけた。彼女は、壇上で「ハンディキャップのある子どもたち、いつかこの舞台に上がりたいと思っている子どもたちにこの賞をささげたいと思います」とスピーチし、大きな喝采を浴びた。同作はミュージカル・リバイバル作品賞と合わせて2部門を受賞。
写真:ミュージカル作品賞/『ハデスタウン』
そして、最多受賞となったのは、13部門14ノミネートを果たしていた『ハデスタウン』。ギリシャ神話の世界を個性ある楽曲で綴り、政治的なメッセージ性も込められた同作は、トニー賞の代名詞でもあるミュージカル作品賞や、オリジナル楽曲賞、ミュージカル演出賞など最多となる8部門を受賞。演出を手掛けたチャフキンは、ミュージカル作品賞受賞を受けて「ハデスタウンという言葉には、どんなに暗い中でも光は注がれるということを意味しています。愛、魂に心を揺さぶられ、上演の場所が変わっていくにつれ、どんどんスタッフが増えていきました。この舞台、劇場の力を私たちは信じたいと思います」と喜びを語った。
写真:『エイント・トゥー・プラウド』
写真:『トッツィー』
賞と賞のあいだに披露されるパフォーマンスでは、毎回ノミネート作品の一部が披露され、話題作のダイジェストを楽しむことができるのもトニー賞授賞式の魅力。音楽グループ「ザ・テンプテーションズ」の軌跡を描きミュージカル作品賞にノミネートされた『エイント・トゥー・プラウド』、80年代大ヒット映画をミュージカル化した『トッツィー』『ビートルジュース』『ザ・プロム』などが続々とステージに登場し、会場は大盛り上がり。
写真:『ハデスタウン』
井上と堂本は、事前にニューヨークを訪問した際に『ハデスタウン』の主演女優エヴァ・ノブルザダと直接対面していたこともあって、彼女に大注目。堂本は「『ハデスタウン』は本当に魅力的なので、とにかく観て!」と熱弁をふるった。井上は、オープニングパフォーマンスに圧倒されたようで、「今年のオープニングは秀逸でしたね!」など終始興奮気味に番組をナビゲートしていった。
また、今年のスタジオパフォーマンスでは、新作ミュージカル『怪人と探偵』よりメインキャストの中川晃教・加藤和樹・大原櫻子が登場し、楽曲「微笑みの影」を本邦初披露。続いて海宝直人がミュージカル『ノートルダムの鐘』より「陽ざしの中へ」を熱唱した。海宝は、自ら選曲したそうで、そのポイントを「今年はノートルダム大聖堂のこともあり、“願い”ということを意識しました」と語っていた。
写真:『ビートルジュース』
写真:『ザ・プロム』
放送を振り返り、井上は「オープニングパフォーマンスだけでも感動!ああ、エンターテイメントをやっててよかったと思いました。どの作品にも必ず希望がある。そこが素晴らしかったです」、堂本は「今回、芳雄くんと一緒に事前番組でニューヨークへ行かせていただきました。ノミネート作品を鑑賞してから授賞式を見ると、今までとまったく違う感覚で楽しめますね。エンターテインメントって素晴らしいなと、改めて思いました」と、それぞれ振り返った。
なお、『第73回トニー賞授賞式』は、6月15日(土)夜7:00よりWOWOWライブにて【字幕版】を放送する(WOWOWメンバーズオンデマンドで見逃し配信あり)。
【詳細】http://www.wowow.co.jp/stage/tony/
WOWOWスタジオ写真を除く「第73回トニー賞」受賞者スピーチ・パフォーマンス写真はすべて(C)Getty Images