劇団☆新感線の3年ぶりの劇団本公演となった『偽義経冥界歌』に続く、2019年 劇団☆新感線39興行 夏秋公演 いのうえ歌舞伎《亞》alternative『けむりの軍団』が2019年7月より上演される。
5月13日(月)には製作発表会見が行われ、古田新太と早乙女太一、清野菜名、須賀健太、高田聖子、粟根まこと、池田成志、そして脚本を担当する倉持裕と演出のいのうえひでのりが登壇した。
本作は、黒澤明作品など名作映画へのオマージュを散りばめながら、コミカルにスピーディーに、そしてあっと驚く意外な展開へと転がっていく、これまでとはまた一味違った王道路線の愉快痛快時代活劇。頭がキレる軍配士とズル賢い謎の浪人のバディが繰り広げる珍道中を描く。
『乱鶯』以来の劇団☆新感線となる倉持は「今回、いのうえさんからいただいたお題は、黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』と太宰治の「走れメロス」を合わせたような話。それで古田さんがお姫様を守る侍の役で、人質に取られている親友が成志さんかなと思ったのですが、そうするとラストしか絡めずもったいないので、古田さんと成志さん二人でお姫様を守るという形にしました。前回の『乱鶯』はシリアスなものだったので、今回は軽く、笑えるものにしようと心がけました」と本作の構想を明かす。
さらに本作で「すごく丁寧に会話劇を演じられる、真摯な役者な集団だと思いました」と新感線への思いを新たにしたと話す「前回よりは当て書きがうまくできているんじゃないかと思っています」と胸を張った。
演出のいのうえは、今回、新たに「いのうえ歌舞伎《亞》alternative」と銘打った理由を「中島かずき君が書く、少年アクションドラマや熱い男の子のお芝居を30年近くやってきましたが、劇団員をメインに持ってきて話を運ぼうと思うと、劇団☆新感線は高齢化が進んでいて、その王道のスタイルをやるのはきつくなってきました(笑)。
そこで、劇団員メインでやるものとは別路線として、今回のように別の作家さんに頼んで、今の劇団員の年相応な『いのうえ歌舞伎』を作っていこうというのが元々のコンセプトなんです。ここでは、時代劇をちゃんとやりたいという思いがあります」と説明。「今回は、黒澤オマージュの作品でもありますので、骨太な人間ドラマが描ければ」と改めて本作への思いを語った。
一方、主演の古田は「僕は劇団員なので『古田、今度これね』と言われ『はい』と返事をしました。拒否権はないです」と古田らしい言い回しで出演が決まった時の気持ちを明かし「(脚本が)倉持だって聞いてゲッと思いました。
『乱鶯』が本当にしんどかったので、やめてくれと思って、会った時に(セリフやアクションを減らすように)言ったんだけど、台本を読んだら意外にありました。ペラペラとセリフを言わされて、最終的には(早乙女)太一と戦わないといけない。50オーバーにやらせることじゃない」と会場を笑わせた。
とはいえ、古田個人としても今年は芸能生活35周年となることもあり「未だに僕がやりたいお芝居に手が届いてないので(続けているうちに)35年になっちゃった。これが僕の代表作になればいいなと思っています」と懸ける思いは大きい。
新感線には6度目の出演となるも、古田とは舞台初共演となる早乙女は「待望の共演。いつか古田さんと刀を合わせたいとずっと思っていたので、やっとできるということが何よりも嬉しいです。古田さんも初老の域に入ってきているので、今が倒しどきなのかなっと思います(笑)」と冗談を交えて意気込みを語った。
新感線は「『髑髏城の七人』Season 花」以来2度目ながら、時代劇初挑戦となる清野は「苦戦しそうなので、皆さんに学ぶ姿勢で、勉強させていただきたいなと思っています。この場所(新感線)は楽しんだ者勝ちだという印象なので、今回もとにかく楽しんでいきたいと思っています」とコメント。
同じく、新感線には2度目の出演の須賀は、新感線の作品を観たことが舞台をやりたいと思ったきっかけだったという。それだけに、ほとんどの劇団員が出演する本作には格別な思いを持っているようで「僕が観ていた新感線に出られるのだなと思ってすごく幸せです」と笑顔を見せた。
本作では女ボス的な存在の嵐蔵院を演じる高田は「(本作には)ちょっと落語的な楽しさがあります。我々、劇団は老成していますが、我々なりのネタモノの形は、こういうオルタナティブな作品なのかなと思います」と述べ、怪しげな住職・残照役の粟根は「私の立場は屁理屈担当なので、屁理屈で煙に巻こうと思っています」と笑いを誘った。
2019年 劇団☆新感線39興行 夏秋公演 いのうえ歌舞伎《亞》alternative『けむりの軍団』公演詳細は以下のとおり。
【東京公演】7月15日(月・祝)〜8月24日(土) TBS赤坂ACTシアター
【福岡公演】9月6日(金)〜9月23日(月・祝) 博多座
【大阪公演】10月8日(火)〜10月21日(月) フェスティバルホール
(取材・文・撮影/嶋田真己)