2018年10月5日(金)に舞台『いまを生きる』が、東京・新国立劇場 中劇場で開幕した。初日前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、佐藤隆太、宮近海斗(Travis Japan/ジャニーズJr.)、永田崇人、七五三掛龍也(Travis Japan/ジャニーズJr.)、中村海人(Travis Japan/ ジャニーズJr.)、大和田伸也が登壇した。
1989年にロビン・ウィリアムズ主演、ピーター・ウィアー監督で制作されたアメリカ映画を元とする本作は、ニューイングランドの全寮制学院を舞台に、赴任してきた英語教師と学生たちの交流を描く心温まる学園ドラマ。第62回アカデミー賞で脚本賞を受賞した映画版を原作とし、2016年秋にオフ・ブロードウェイで舞台化。映画版の脚本でオスカーを受賞したトム・シュルマンが舞台版の脚本も手掛けたことでも話題となった。日本初演となる今回は演出・上演台本を上田一豪が務める。
厳しい規律で縛られてきた男子高校生たちに新たな視点や影響を与える若き教師ジョン・キーティングを演じる佐藤。映画版が大好きだったという佐藤は「ロビン・ウィリアムズが演じた映画版のキーティング先生に引っ張られすぎないようにしました。映画を意識して見直したりしないように、稽古から上田さんの演出のもと、皆で作り上げていきたいと思っていました。僕たちがやる舞台版『いまを生きる』というカラーがちゃんと出るように気にかけていました」と役作りについての影響を説明。
その佐藤について、大和田は「ロビン・ウィリアムズもいいですが、やっぱり佐藤隆太の正義感あふれる突き進む姿がとても素晴らしいですね」と絶賛。その言葉に、佐藤が「校長先生、ありがとうございます」と頭を下げると、会場は笑いに包まれた。ロビン・ウィリアムズはコメディアン出身らしく映画俳優のモノマネなどを劇中で披露していたが、舞台版ではそういった点がそぎ落とされており、型破りでユニークだが、より生徒に真摯に向き合う佐藤版キーティングとなっている。
生徒の中心的存在・ニール役の宮近は、終盤の衝撃的なシーンについて「その衝撃的なことに対して、精細にどんどん道を作っていかないといけないので、そこを演じるのが大変でした。だけど、そういうものに触れて、一つ幅が広がったと思うので、とても嬉しいです」と感慨深く語った。ニールの父・ペリー(冨家規政)の言いなりとなり、抑圧された学園生活の中、キーティングの導きで生きる目的を見つけるニールを、宮近は若々しく爽やかに演じている。
転校生のトッド役の永田は、お気に入りのシーンとしてキーティング先生の授業シーンを挙げる。その理由について「僕の役はキーティング先生や周りに助けられて、成長していくんです。だから、キーティング先生の授業シーンはどれもすごく重要な意味を持つシーンなので、そのシーンはとても大切にしています」と明かした。特に映画版との違いがハッキリと現れているトッド。どもり気味にしゃべるという彼の特徴は、映画版に比べて、トッドの内向的な面をさらに際立てている。
恋人のいる美女クリス(羽瀬川なぎ)に一目ぼれしてしまう無邪気なノックス役を演じるのは七五三掛。その二人のシーンについて、七五三掛は「そのシーンが気に入っています。稽古のときから心臓がバクバクで今もバクバクなんですが、ゲネプロが終わって楽屋に戻っても恋するバクバクが収まらないんです(笑)」と恋に夢中になるノックスに身も心もなりきっている様子。
素直でまじめなキャメロン役の中村は、見どころとして、原題にもなっている読詩サークルの名前「Dead Poets Society(死せる詩人の会)」を開催する洞窟のシーンを挙げた。「生徒たちが厳しい学校から夜に抜け出して洞窟に行って、詩を読むというシーンなんですが、和気あいあいと詩を読んで高揚する感じが、すごい楽しいんです」と目を輝かせた。
その他の生徒役には、純粋なミークスを浦上晟周、正義感があるチャーリーを田川隼嗣が演じる。それぞれ個性的な生徒が揃っていることについて、佐藤は「生徒役に6人集まると、いろんな個性がぶつかったりすることがあるのかなと思って稽古場に入りました。お芝居の中で個性は立つんですが、本当に仲が良くて、すごくいい雰囲気でした」と稽古を振り返った。
さらに、教育のためなら体罰もためらわないという厳格なノーラン校長役の大和田は、本作のメッセージ性について「今はパワハラとかがありますが、この芝居を観て、そういうことがないようにどうすればいいのか一つの参考にしていただきたいと思う芝居でもあります」と解説し、続けて、「実際に舞台の上で皆泣いてますし、映画とはまた違った上田演出と素敵な装置も含めて、少年たちが本当に映画以上にキラキラしていて、映画版よりも泣けますね」とアピールした。
最後に、佐藤は「多くの映画ファンの方から愛されている名作なので、出演者全員がプレッシャーを抱えながらスタートした稽古でした。ですが、上田さんの演出のもと、一つ一つ積み重ねてきて、やっと初日を迎えることができました。彼ら生徒たちが本当にキラキラしているので、観て下さった方にはすごくパワーを持って帰ってもらえる作品になったと思います」と呼びかけた。
心に染み入るピアノとチェロの生演奏の旋律にのせて、人生の素晴らしさを教えられた思春期の若者たちが初々しく“いまを生きる”姿を鮮烈に描く傑作舞台が幕を開けた。
舞台『いまを生きる』は、10月24日(水)まで東京・新国立劇場 中劇場にて上演。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)