シアターコクーン・オンレパートリー2018『ニンゲン御破算』が、2018年6月7日(木)に東京・Bunkamuraシアターコクーンにて開幕した。本作は、2003年に『ニンゲン御破産』というタイトルで、十八代目中村勘三郎(当時:勘九郎)と松尾スズキ(作・演出・出演)がタッグを組んだ作品で、歌舞伎の戯作者を夢見た一人の侍と、それをとりまくニンゲンたちを描いている。
初演から15年。松尾は、この幕末大河エンターテインメントを『ニンゲン御破算』として進化させた。出演者に、主演の阿部サダヲをはじめ、岡田将生、多部未華子、荒川良々、皆川猿時、小松和重、村杉蝉之介、平岩紙、顔田顔彦、少路勇介、田村たがめ、町田水城、山口航太、川上友里、片岡正二郎、家納ジュンコ、菅原永二、ノゾエ征爾、平田敦子らを迎え、再び上演。
開幕にあたり、作・演出・出演の松尾、出演者を代表して阿部、岡田、多部、荒川よりコメントが届いた。
◆松尾スズキ(作・演出・鶴谷南北役)
初演の時は、カオスな演出で観客をけむに巻くのがおもしろかったのですが、今回は作品の本質的なものを伝えたいという思もあり、物語だけで自立出来るよう求心力を心がけました。「本格的時代劇」というには脚本がぶっとんでいる部分もありますが、細部のリアリティから逃げないよう、きちんと江戸時代という事を頭に認識させて演出し、役者もそれによく応えてくれました。松尾流、日本初のオリジナル幕末エンターテイメントに仕上がったのではないかと思います。皆さんぜひ観にいらしてください。
◆阿部サダヲ(加瀬実之介役)
(見どころは)江戸時代の芝居小屋を彷彿とさせるセットがカッコいいです。そのセットにプールのように水を張っている部分があって、そこへ人が飛び込んで行くだけでもおもしろいなと思います。また、今回は生演奏が入っていて、邦楽の笛や鳴りものの和の音が作品の世界観に合って効いていてカッコいいです。
初演の時より分かりやすくなっていると思いますし、再演ではありますがリニューアル感を強く感じて、初めて観る方も、もちろん初演を観ている方も、おもしろくご覧いただけると思います。そして、阿部サダヲとしてこんなに出ずっぱりでこんなに台詞をしゃべっている舞台は初めてなので、それも観ていただきたいです。この作品はこのあと15年以上やらないと思うので(笑)。このチャンスを逃さないように。
◆岡田将生(灰次役)
僕自身新しい役をやらせていただけているので無我夢中にやるつもりですし、稽古は裏切らないと思うので、灰次という役を100%以上やりきろうと思っています。
最後にどんでん返しがありますので、観たあと、必ず劇場から出た時に頭から最初の芝居を一つずつ思い出して繋げていくはずです。楽しみにしていてください。
◆多部未華子(お吉役)
ドキドキしていますが、賑やかで華やかで、なんだかお祭りのようで、わたしもとても楽しみです。日常生活を忘れるくらい世界観にどっぷり浸って、楽しく観劇できますように。
◆荒川良々(黒太郎役)
僕はただただ一生懸命やるだけです。上演時間が長めなので、体調を整えて観に来てください。
【あらすじ】
時は幕末。加瀬実之介(阿部)は、人気狂言作者・鶴屋南北(松尾)、河竹黙阿弥(ノゾエ)の元へ弟子入りを志願していた。大の芝居好きで、成り行きとはいえ、家も侍分も捨て、狂言作者を志している実之介。「あなた自身の話のほうがおもしろそうだ」と南北に言い放たれた彼は、自分、そして自分の人生に関わってくるニンゲンたちの物語を語りだした―。
もともとは元松ヶ枝藩勘定方の実之介は、奉行から直々の密命を受けていた。それは、偽金造りの職人たちを斬ること。幼馴染みのお福(平岩)との祝言を済ませた実之介は、偽金造りの隠れ家へ向かい、職人たちを次々に殺めたのだった。その様子を目撃していた、マタギの黒太郎(荒川)と灰次(岡田)の兄弟は、殺しのことは黙っている代わりに自分たちを侍にしてくれるよう、実之介に取り引きを持ちかける。
そこへ駆け込んできた娘が一人。黒太郎たちの幼馴染みで、吉原へ売られていく途中のお吉(多部)だった。ちょうどその頃、実之介は同志の瀬谷(菅原)や豊田(小松)から、悪事の責任をすべて負わされ、切腹を迫られていた・・・。
シアターコクーン・オンレパートリー2018『ニンゲン御破算』は、7月1日(日)まで東京。Bunkamuraシアターコクーンにて上演される。なお、当日券は、各回の開演1時間前より、あれば座席指定券(席種未定)、中2階立見券(3,500円)を販売。中2階立見券がなくなり次第、2階立見券(2,500円)の取り扱いあり(1人様2枚まで)。
大阪公演は、7月5日(木)から7月15日(日)まで森ノ宮ピロティホールにて。
(撮影/細野真司)