2018年5月から6月にかけて、ふたり芝居『家族熱』が上演されることが決定した。原作は、1978年に放送された連続ドラマで、脚本家、エッセイスト、そして直木賞作家として名を馳せた向田邦子の作品。本作では、設定をドラマから3年後とし、歳の近い義理の母と息子が、“家族”という制約から解放され激しく揺れる心情をきめ細かく描き出す。
企画・台本・演出は、2016年に『乳房』(伊集院静作)や『檀』(沢木耕太郎作)を上演し、2018年春に『悪人』を控える合津直枝が手掛ける。
美しい義母・朋子役には、NHK土曜ドラマ『トットてれび』(2016)で向田邦子役を演じ、向田の文章の大ファンだというミムラ。父を憎み、朋子と実母の間で揺れる息子でエリート医師の杉男役には、溝端淳平が決定した。
上演発表にあたり、ミムラ、溝端、企画・台本・演出の合津よりコメントが届いている。
◆ミムラ(朋子役)
過去に二度、演じさせていただいた向田邦子さん。彼女の文章の大ファンであり、映像作品も多数観てきた私は、大事なご報告の際はお墓へ参ります。「あの『家族熱』を二人芝居で演じます」とお伝えしたら、向田さん、あの悪戯っぽい含み笑いで、なんと仰るでしょう。
以前ドラマで共演し、もっと多くの台詞をやり取りしてみたいと感じていた溝端淳平さん。そして一度目の向田邦子役の依頼を下さった方でもある合津さんと共に、“家族”という狭く見えて底なしの囲いの中で、縦横無尽に“熱”を発してみたいと思います。
皆様を向田作品世界の深部へお連れできるよう、勉強を重ね、心血を注いで臨みます。どうぞご期待くださいませ。
◆溝端淳平(杉男役)
今もなお愛され続けている向田邦子さんの作品をやらせてもらうことを、大変ありがたく思っております。僕が生まれるよりもずっと前に旅立たれたとは思えないほど、向田作品は色褪せない。それどころか今の時代の方がマッチしていると思えるぐらいです。「家族熱」は義理の母と息子、いろんな柵や苦難に縛られてきた二人がまた違う形で再会する話です。家族とのつながりとはどういうものなのか?血のつながりと心のつながりは天秤にかけられるのか?そんな普段誰もが感じているであろうことが文学的に、叙情的に描かれています。向田作品は初めてで、まだまだ勉強中ですが、大の向田邦子ファンのミムラさん、演出の合津さんにも沢山教わりながら、向田邦子作品世界にドップリはまって行けたらと思います。
◆合津直枝(企画・台本・演出)
昔、たった数秒(!)、向田邦子さんとお話したことがある。親しい女性誌編集者から「働く女性への応援コメントを向田邦子さんからもらってこられない?」という誘いに乗ったのだ。「わたくし、そのようなことはしませんの。ごめんください」向田さんはぴしゃりと言って電話は切れた。前年に直木賞を受賞され、のちに台湾で急逝されるその年の冬のことだ。
以来、向田さんは眼前に屹立する。
「家族熱」は、美しい後妻が家族に加わったことで、平熱を保てなくなった家族の物語だ。「いちばん大事なことは口にしない」という向田さんのサムライのような美学に満ちた物語である。
母を女として愛していた・・・。
息子を男として愛していた・・・。
本当の気持ちに蓋をして、家庭の平和を保っている登場人物たち。一筋縄ではいかない。
向田さんから応援コメントはいただけなかったけれど、今、きびしく叱咤激励されている。熱烈な向田ファンのミムラさんと 遠い憧れだったという溝端くんと3人で挑む。向田作品を語り継ぐ喜びと責任を胸に、“家族”というルールからはみ出しそうではみ出せない、女と男のギリギリのこころを探り当てたい。
ふたり芝居『家族熱』は、2018年5月29日(火)から6月5日(火)まで東京・東京芸術劇場 シアターウエストにて上演される。その後、茨城・大阪・兵庫を巡演。日程の詳細は以下のとおり。東京公演のチケットは、2018年3月18日(日)10:00より一般発売を予定。
【東京公演】2018年5月29日(火)~6月5日(火) 東京芸術劇場 シアターウエスト
【茨城公演】2018年6月9日(土) 水戸芸術館ACM劇場
【大阪公演】2018年6月11日(月) 近鉄アート館(予定)
【兵庫公演】6月12日(火) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール