2017年12月1日(金)より東京・東京芸術劇場シアターイーストにて上演される舞台『クラウドナイン』の稽古場が公開され、高嶋政宏、伊勢志摩、三浦貴大、正名僕蔵、平岩紙、宍戸美和公、石橋けい、入江雅人が、作品の一部を披露した。稽古場公開の後は、演出の木野花と共に全キャストが取材に応じた。
本作の舞台は、イギリス植民地時代のアフリカ。この地を管理するために、本国から移住してきたとある家族の物語を描いている。一幕ではヴィクトリア朝時代、二幕ではその100年後となる現代のロンドンが舞台・・・だが、何故か登場人物たちは25歳しか年を取っていないという、イギリスの劇作家キャリル・チャーチルが手掛けた破天荒なホームドラマだ。
この日披露されたのは、一幕のクライヴ(高嶋)がソンダース夫人(伊勢)と密会する場面、そしてクライヴ一家がピクニックをする場面。クライヴはベティ(三浦)という妻がいるにも関わらず、ソンダース夫人に迫り、あげくにはスカートの中に潜って情事にのめりこんでいる。そして、ピクニックの場面では、ベティが祖母モード(宍戸)、息子エドワード(平岩)、召使いジョシュア(正名)、探検家ハリー(入江)、そして、夫クライヴと共に鬼ごっこを始める。その最中、ベティはハリーに好意を抱いていることを本人に打ち明けるが、その後エドワードまでもがハリーに求愛し始めて・・・。
会見では、稽古の手ごたえについて、木野が「(本番まで)いける!と思っていますが、ここから追い込み時期に入りますので、皆が気力、体力の限界まで挑戦できるかが勝負かなと思っています」と笑顔でプレッシャーをかけた。
高嶋は「早く本番になってほしいというのが本心です」と胸を張り、伊勢は「稽古初日には、トンネルの向こうに木野さんがいて、あそこに辿り着かなければ、と思っていたんです。でも今は木野さんの姿が近くで見えるし、最後のダッシュをする時期なんだなと感じています」とコメント。
舞台出演が2回目という三浦は「なかなか自分を客観視できないのですが、役の心情はかなりつかめてきたので、楽しい舞台になりそうです。とにかくやるしかない、という気持ちです」と語り、正名は「木野さんの『追い込む』の言葉に尻込みしそうな自分がいますが、そこをぐっとこらえてさらに密度の濃い芝居ができたらと思っています」と気合を入れた。
平岩は「稽古場で芝居を観ているとすごくおもしろい作品になるだろうという実感があるんですが、自分自身はまだまだです。もっともっと穴を掘り、穴の先に見える景色を追い求めたいです」と独特の表現で心境を表した。
宍戸が「木野さんにお尻を叩かれてここまで来ました。まだ手ごたえという実感はないんですが、本番の衣裳を着た時に『あ、この作品に乗っていけそうだな』という予感がしました」と言えば、石橋は「本読みの頃に比べ、木野さんの演出によって別の芝居に変化してきています」と笑顔。最後に、入江が「衣裳を着ると、馬鹿馬鹿しさや三浦くんが女性を演じる意味などがバーッと浮かび上がってきましたね」と作品のおもしろさを語った。
木野は、29年ぶりに本作を演出しようと思った理由について「初演が38歳の頃だったかな。必死でこの脚本に食らいついていたと思うんですが、終わった後でやり残したことがいっぱいあると思ったんです。懐の大きな脚本に力任せにぶつかっていったんですね。そこから30年くらい経ち、今の自分が『クラウドナイン』をやったらどうなるんだろう、という思いがよぎったんです。改めて脚本を読んで感じたんですが、初演当時は時代の最先端すぎる内容だったので、セクシャリティの問題も現実の方がすごく遅れていたんです。でも今ならお客様にも受け取ってもらえるんじゃないかな。脚本の読み方も、当時に比べるともっと読み込めるようになったと思います」と初演時を振り返りながら、思いの丈を語った。
作品の見どころについて、高嶋は「やはり伊勢さんのスカートの中に僕が潜り込むシーンかな。あとは平岩さん演じる少年エドワードが『ねえ、アレ出して見せてよ』って入江さん演じるハリーの下半身に注目する場面」と、あえてエロティックな場面をピックアップ。すると「やっぱりそこを言いたいんだ(笑)」などと、木野や共演者から次々とツッコミが入るが、悪気のない笑顔を浮かべる高嶋だった。
一方、宍戸が「二幕に入ってから正名さんが演じるキャシーの歌が聞きどころです」と言うと、全員から「おおー!」と納得の声が上がる。「あれは耳について離れないね。夜、目を閉じるとあの歌がずーっと聞こえてくるんだよ」と高嶋が続け、木野も賛同の意を示すと「そうですか・・・すみません」となぜか正名が謝り出し、一同爆笑。
三浦は今回、一幕で女性役を演じることになるが「私生活が内股になってきたんです。二幕は男性を演じるので、元に戻さないといけないのに」と苦笑し、役作りについては「稽古場で木野さんに女性としての歩き方を教えていただいているんですが・・・まずは脛毛を剃りました(笑)」と形から入ったことを告白。
「毛を剃るってことがまず大変だな、女の人って毎日こんなことをしているのかと感じました。僕は毛が濃すぎるのでカミソリを2本ダメにしましたね。(ベティは)この時代の女性らしく振舞おうとしている女性なので、脛毛を剃ったところから、いろいろ女性らしさを考えられるようになりました」と女装初体験ならではの感想を口にしていた。
本作の大きな特徴である、一幕と二幕で演じる役が変わる件について、高嶋は「混乱することもありますが、そのたびに“木野花サーカス団長”がカリスマ調教師ぶりを発揮するんですよ」と笑いを交えつつ「一幕は一幕で物語が完結し、二幕は二幕で完結している作品なんです。つまり、一粒で二度美味しい作品になっていますので、ぜひ楽しみに劇場にお越しください」とメッセージを送っていた。
なお、本作の劇中歌「クラウド9」をROLLYが歌唱することが明らかとなった。「クラウド9」の歌詞を、アラム・ハチャトゥリアン作曲の「仮面舞踏会」のメロディに乗せて、揺れるような、あるいは狂ったかのような世界にROLLYが歌声で引きずり込むという。
※ROLLYは舞台への出演はせず、この公演のために収録された音源が流される
モチロンプロデュース『クラウドナイン』は、12月1日(金)から12月17日(日)まで東京・東京芸術劇場シアターイーストにて、12月22日(金)から12月24日(日)まで大阪・OBP円形ホールにて上演される。
※高嶋政宏の「高」は「はしごだか」が正式表記
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)