2017年9月8日(金)、東京・渋谷のCBGKシブゲキ!!にて『実験落語neo~シブヤ炎上しまくり~』が開催された。かつて1970~1980年代、“サブカルチャーの聖地”渋谷のライブハウス「ジァンジァン」で三遊亭円丈が主宰を務めていた新作落語の会「実験落語」が2016年6月「実験落語neo」として復活したのが本企画の始まり。回を重ね、今回で7回目を迎えた。
毎回、ジァンジァン時代の「実験落語」ゆかりの落語家だけでなく、若手落語家、また異ジャンルの演者が並ぶ、バラエティ豊かな布陣が特徴の「実験落語neo」シリーズ。
今回は、三遊亭円丈をはじめ、上方落語界を代表する桂文珍、円丈の二番弟子であり、独創的な物語を創り続ける三遊亭白鳥、若手落語家ブームを牽引する春風亭昇々、そして昨年、日本スタンダップコメディ協会を設立し、その会長を務める清水宏という顔並び。始まる前から、何かが起こりそうな予感のするラインナップだ。
トップバッターの春風亭昇々は、古典落語の常套から入り、その登場人物の八つぁんが「もう飽き飽きだ」と反乱を起こす「落語の掟(おきて)」を披露。古典落語の「つる」が、ストーリーの中の登場人物が本音を吐露することで、より輪かくが際立つ改作、快作となっていた。
次は、清水宏が学ラン姿で登場。客席へ呼びかけ登場からやり直し、会場が盛り上がったところで、スタンダップコメディの名手が座布団の上に座り披露したのは、中学生の青春グラフィティを落語にした「第三中学仇討黄昏(あだうちのたそがれ)」。パンツを巡る教師との攻防戦が描かれているのだが、時折入る浪曲の節と、清水の熱い語り口、そして飛び散る汗に、客席が熱気にあふれていった。
次に登場した桂文珍は、円丈とは長い付き合いだと語る。かつて円丈がなんば花月に1週間出演した際に、ずっと一緒にいたこと、35年前に「円丈・文珍二人会」を開催した時に、円丈が披露した禁断の落語の話など、優しい語り口で客席を笑いに包んだ。
本ネタは、終活について話す夫婦の会話から、セレモニーホールを舞台にした「旅立ち」を披露。採用面接に立ち会う面接官たちの会話、就職希望者たちのキャラクターも個性豊かに描かれていた。時には浪曲も折り込み、文学作品になぞらえてオチを付ける。文珍の魅力を堪能できる一席となった。
三遊亭白鳥は、師・円丈作の「悲しみは埼玉に向けて」を自身の経験をもとに改作した「悲しみは日本海に向けて」を披露。「発車のベルはまだ鳴らない」というモノローグはそのままに、自身がまだ「三遊亭にいがた」だった二つ目時代を描いた暗黒ドキュメンタリー落語だと暴露。
本題前、客席に問いかけたところ、ほとんどの人が初めて白鳥を見るということが発覚。いわば、アウェーの状態からスタートしたものの、すぐに客席を笑いの渦に巻き込んでいった。
そして、トリの円丈は、前座の高座生中継を番組にした『前座チャンネル』を披露。これは、今年8月に谷中全生庵での「円朝忌」でも高座にかけ、噺家、落語関係者という笑わない客を笑わせたという作品。前座の失敗を真打の師匠が中継するという、落語ならではの部分を味わえる作品でもある。
台本を見台に置くスタイルが定番となり、自らの記憶力の衰えも、もはやネタにしている。生き方を高座に反映させ、笑いに変えている円丈。万雷の拍手のもと高座をさがり、お開きとなった。
好評の「実験落語neo」シリーズは、第八回「実験落語neo~シブヤ炎上2017晩秋~」を11月に東京・CBGKシブゲキ!!にて開催する予定。
(取材・文・写真/オフィシャル提供、編集/エンタステージ編集部)