2017年4月16日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて、青年座『わが兄の弟 贋作アントン・チェーホフ傳』が上演されている。本作は、作・マキノノゾミ×演出・宮田慶子のコンビによる青年座公演第5弾。『MOTHER』『フユヒコ』『赤シャツ』『横濱短篇ホテル』に続く今回は、私生活は謎とされている部分が多いロシアの劇作家アントン・チェーホフの評伝劇として、生活者としての人物像に迫る。
出演は、横堀悦夫、安藤瞳、山本龍二、大須賀裕子、石母田史朗、大家仁志、野々村のん、松田周、坂寄奈津伎、津田真澄、小暮智美、那須凜、豊田茂、名取幸政、田上唯、高松潤。
【あらすじ】
アントン・チェーホフの祖先は農奴であり、祖父の代に自由市民の身分を得て、父はタガンローグで小さな食料雑貨店を営んでいた。しかし、アントン16歳の時に雑貨店は破産し、
一家はモスクワへと移住することになる。
1880年、アントン20歳の誕生日の翌朝・・・、物語はここから始まる。
モスクワ大学医学生の頃から多数のユーモア短編小説を雑誌に寄稿し、その原稿料でチェーホフ家の暮らしを支えていたアントン。やがて、作家として名声が高まってきた30歳の時、何を求めてか、何から逃れたかったのか、家族を残して一人極東の地サハリン島へと旅立つのだった。
帝政ロシア体制が動揺する19世紀末を背景に、医者であり作家であった若きアントンの人間像に迫る―。
アントンと、その家族である父、長兄、画家の次兄、そして妹が、チェーホフの作品を思わせる劇世界の中で、『かもめ』のニーナや、『ワーニャ伯父さん』のアーストロフ、『三人姉妹』の三人姉妹、『桜の園』のフィールスなどを連想させる人物が次々と登場する。タイトルにもあるように、あくまでマキノが作り上げた贋作の自伝なのだが、チェーホフ“らしさ”を感じる不思議な既視感のある仕上がりとなっていた。
劇団青年座 226回公演 /紀伊國屋書店提携『わが兄の弟 贋作アントン・チェーホフ傳』は、4月16日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて上演。
(撮影/坂本正郁)