2017年1月14日(土)に東京・Bunkamura シアターコクーンにて舞台『世界』が開幕した。本作は赤堀×シアターコクーンの第3弾となる作品で、“やるせない喜劇”を描く。事前に行われた囲み会見には、風間杜夫、大倉孝二、早乙女太一、広瀬アリス、青木さやか、和田正人、福田転球、梅沢昌代、作・演出・出演の赤堀雅秋が登壇した(鈴木砂羽は体調不良につき欠席)。
赤堀は作品について「今まで感じたことのない感情が沸き起こる作品になれば。コクーンという大きな劇場では今まで見たことあるようでなかった作品になったはず」と手応えを見せた。赤堀作品に初出演となる風間は、登場人物について触れ「描かれているのは日常に生きている庶民の姿なんですけど、出てくる人物にいい人はいません(笑)」と冗談を飛ばしながらも「僕はこの作品が大好きです」と太鼓判を押す。
過去にシアターコクーンで上演された赤堀作品『殺風景』(2014年)、『大逆走』(2015年)に続けて出演する大倉は「過去2作では僕の持ち味のはっちゃけた部分を出すことができたんですが、今回はすべて封じ込められてしまったので“何でもない人間”をちゃんと演じられるよう一所懸命稽古に励みました」とシニカルな笑みを含みつつ、役作りの様子を明かした。
“学生のノリのまま社会に出てきた中身のない若者”を演じるという早乙女は、これまで出演してきた作品との違いについて「普段のような白塗りもできないし、刀も持っていないし、裸のまま舞台に立っているような感覚です(笑)」と打ち明けつつ、「自分が一番毛嫌いするタイプの若者を演じられて楽しかったです」と新たな経験を享受している様子。
また、広瀬が演じるのはなんとデリヘル嬢。「役が決まる前に赤堀さんとお話しして、私のどこを見て人物像を決めるのかなって思っていたら・・・!」と役柄を知った時の驚きを打ち明けた。また、本作が初舞台となることについては「分からないことだらけなので、正面からぶつかっていこうという気持ちで稽古に臨みました」と意欲を露わに。
そして、赤堀作品の大ファンという青木は「稽古場にいられることがとても幸せでした」、和田は「(出演が決定した時)自分の壁をぶっ壊せる作品になると思いました」とそれぞれ振り返り、梅沢は「稽古場でしごかれている皆さんが、変化していく様を見ていているのが、とても楽しかったです。素敵な稽古場でした」と語った。
物語の中心となるのは、千葉の郊外に住むある家族。町工場を経営する父・義男(風間)、母・節子(梅沢)、その工場を任されている息子・健二(大倉)とその妻・美紀(青木)。母は、父に離婚を切り出している。健二たちは説得するが、父はべらんめえ口調で関係ないことばかりをまくし立て、朝食一つにもケチをつける始末。
健二は、仕事が終わるとベテラン従業員・服部(福田)や知人から預かった青年・辺見(早乙女)らを連れて坂崎(赤堀)と宏子ママ(鈴木)の営むスナックに飲みに行く。そこでも、父と顔を合わせてしまう。
一方、バイトをしながら役者を目指している諸星(和田)は、デリヘル嬢のあずみ(広瀬)に片思い。指名しながらも、一緒に部屋意いるだけで幸せを感じている。そんな惚れた相手を、最近友人となった辺見に紹介するのだが・・・。
会見の中で、福田が「ダメな人ばかりが出てきますが『ああ、こんなことあるわ・・・』という場面がたくさん出てくるんですよね」と語っていたが、まさにその言葉とおり“あるある”と思ってしまうシーンが次々と出てくる。親子の確執、夫婦の問題、離婚、浮気、嘘、裏切り・・・と、廻り舞台の上に様々な人間関係が浮かぶ。赤堀が繊細かつ丁寧に素描した10人の登場人物たちは、観ていて身近な人が脳裏に浮かんでしまうぐらいリアルだ。哀しさも滑稽さもリアルであればあるほど、愛しい。
“世界”という言葉には、地球の裏側だって、宇宙だって含むような広さもあるが、両手いっぱい伸ばして届くだけの範囲も、また“世界”である。
舞台『世界』は1月28日(土)まで東京・Bunkamura シアターコクーンにて、2月4日(土)・2月5日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。なお、東京公演は1月26日(木)19:00開演の回が追加公演として決定している。
(舞台写真 撮影/撮影:細野晋司)
(取材・文・囲み会見撮影/大宮ガスト・エンタステージ編集部)