2017年1月12日(木)に開幕する『紅き谷のサクラ~幕末幻想伝 新選組零番隊~』。本作では、俳優・アーティストとしても活躍する根本正勝が作・演出を手掛けている。様々な舞台に立つ中で「自分ならこんな作品が作ってみたい」という気持ちが芽生えたという根本。果たしてどんな作品に仕上がっているのか、本番間近に迫る稽古場を取材した。
取材日に行なわれていたのは、初の衣裳付き通し稽古。稽古開始前に、根本から「細かいことは言いません。昨日からいい雰囲気できているので、集中してやりましょう」と声がかかると、出演者たちは気合いの入った返事で答えていた。開演を告げる音楽が次第に大きくなると、出番を待つ役者たちの表情がすっと変わる。
(以下、一部物語の内容に触れています)
物語は慶応四年、鳥羽・伏見の戦いから始まる。薩摩・長州の部隊に、ある男たちが幕府軍の“任務”のため、切り込んでいた。桐山甚兵衛(小澤亮太)、染井蘭(平田裕一郎)、柊一茶(馬場良馬)、そして天音屋サクラ(玉城裕規)。
黒地に浅葱色のだんだら模様、背中背負った「零」の文字。
彼らは「新選組零番隊」、京都で華々しく活躍した新選組の影に隠された暗殺部隊だった。
人を斬るために育てられ、良き時代のために暗躍してきた彼らだったが、徳川慶喜が江戸へ逃げたことをきっかけに、戦うことに迷いが生じる中、隊長であるサクラは「この戦から抜けよう」と言う。この先も、人を斬る重さに耐えていけるのか・・・時代の変わり目に、彼らは人斬りをやめることを選んだ。
散り散りに逃げながらも運命に導かれるように再会した4人は、野盗に襲われ逃げていた雛森アキ(瀬戸早妃)と出会う。4人のワケありな様子に、アキは一緒に“紅き谷”を目指そうと誘った。“紅き谷”では、歴史の変わり目に置き去りにされた人々が、身を寄せ合いひっそりと暮らしているのだという。希望を見出す中、サクラは戦の中ではぐれたもう一人の「新選組零番隊」藍座宗之進(山口馬木也)のことが気になっていた。一方、新政府軍は鏡止水(陳内将)率いる部隊を派遣し、残党狩りを行っていた・・・。
サクラ演じる玉城は、キレのよい殺陣で、修羅のごとき強さを体現。それと同じぐらい、人斬りという宿命を背負った男の苦悩や悲しみを表情で雄弁に語っていた。桐山演じる小澤は豪快さとコミカルさ、染井演じる平田は心根の優しさ、柊演じる馬場は仲間を見守る冷静さ、アキ演じる瀬戸はそんな4人を温かく包み込む。
山口は、己の力のみを信じる藍座を力強く演じる。そして、陳内の見せる鏡の強烈な狂気がとてもよい。それぞれが内面を掘り下げ、登場人物たちに息を吹き込んでいた。
また、作品の中には“生”の重さを問う印象的な台詞がいくつも出てくる。それは、刀なき今の時代にも響く言葉だ。劇場では、さらに舞台美術、音響、照明などが、根本の描く物語にさらに色をつけ、深めていくだろう。私たちの目の前に、どんな“紅き谷”の光景が広がるのか、楽しみにしたい。
キティエンターテインメントプレゼンツ『紅き谷のサクラ~幕末幻想伝 新選組零番隊~』は、2017年1月12日(木)から1月15日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて上演される。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)