2015年2月に市川海老蔵、中村獅童の熱い想いから始まった六本木歌舞伎第1弾『地球投五郎宇宙荒事』。その第2弾の演目として決定した『座頭市』では、出演に海老蔵と寺島しのぶ、演出は前作に引き続き映画監督の三池崇史、脚本はリリー・フランキーが手掛ける。今作の製作発表が2016年11月28日(月)に都内で行われ、三池、海老蔵、寺島のほか、松竹株式会社副社長/演劇本部長の安孫子正が登壇した。
会見は、安孫子からの「新しい時代に合った新しい歌舞伎を作っていこうというのが、六本木歌舞伎の精神です。歌舞伎の長い歴史の中、女性が舞台に出られないことで、女形が生まれて、今日まで来ています。しかし、こういう時代になって、400年前に生まれた傾く(かぶく)精神を問いつめた時に、また新たな視点で、女性の俳優と一緒に舞台を作っていくということが、大事だと思っています」という言葉でスタート。
三池は「前作で、生涯に1本は歌舞伎をやってみたいなという夢が叶い、今回は『生涯で2本だけ歌舞伎をやったことがあるぞ』と孫にも誇れる舞台にしたいと思います」と挨拶。また、脚本を担当するリリーについては、「リリーさんとはローリング・ストーンズのコンサートを観に行ったら隣だったという縁なんです」とエピソードを披露するとともに、「リリーさんの中では色っぽいものにしたいそうです。悲恋の物語になると思っています」と現段階での構想を明かした。
続いて、海老蔵が「前作は、(中村)勘三郎兄さんが『いつか地球を投げる荒事をしないとダメだ』と言われたことを僕と獅童くんが覚えていまして、それが現実となり、三池さんと宮藤官九郎さんというお力と共に始まりました」と第1弾を振り返った。
さらに、海老蔵は「勘三郎兄さんが『いつか、座頭“二”、座頭“三”をやりたい』という冗談を言われていたんです。それを獅童くんに話したら、『座頭市をやったらいいんじゃないか』と言われたんですよ。三池さんは2回だけとおっしゃってましたが、ずっと六本木歌舞伎をやっていただいて、歌舞伎の演出家であるとお孫さんに言っていただけるように、今回も一生懸命に役者として務めさせて頂きます」と、第2弾公演が『座頭市』に決まった経緯を語った。
『座頭市』ということで、持ち前の眼力を封印することについて質問されると、海老蔵は「舞台で声がつぶれた時に、(板東)玉三郎兄さんが「声が出ないなりに芝居をしてごらんなさい。そうするとまた新しい世界が見えるわよ」とおっしゃていたんです。そのお話と同じで、僕は目をつぶって芝居をしたことがなく、一役者として目にイメージもあるので、目を封印した時に何が出てくるか、それを次のステップアップとして成長につなげたいです」と、意気込んだ。
その海老蔵と再タッグを組むことを決意した理由を、三池は「六本木歌舞伎以前に、映画俳優として出演していただいた時、この人が座頭市を演じたらスゲーだろうなと思っていました。一度、海老蔵さんとガッツリ仕事をすると、半年ぐらいは拒絶反応が起きるんです。その後に飢えてきて『海老蔵が欲しい』みたいになるんですよ(笑)」と冗談を交えて答えた。
まだ役が決まっていないという寺島は「リリーさんのイメージされている私で書くと噂は聞いています。リリーさんに早く書いてもらえるようにメールを打ちたいと思います(笑)」と笑顔で挨拶。海老蔵とは幼なじみである寺島は「“海老蔵さん”と言うのは恥ずかしいぐらい前から知っているので、懐かしい話をしながら、和気あいあいと究極のエンターテインメントに仕上げられたらと思っています」と意気込みを披露。
寺島とは平成7年の新派特別公演『鹿鳴館』以来の共演となる海老蔵は「今回はなによりも、しのぶさんと一緒に舞台に出られるのが楽しみです。『鹿鳴館』の時にキスシーンがあったんですけど、前日にニンニクの食べ過ぎで臭すぎて、ものすごく怒られた記憶があります。今回はニンニクを食べずに、座頭市を務めたいと思います(笑)」とコメントし、会場の笑いを誘っていた。
六本木歌舞伎第二弾は、2017年2月4日(土)から2月20日(月)まで東京・EX THEATER ROPPONGIにて上演される。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)