6月8日(水)に新国立劇場 中劇場にて開幕した『あわれ彼女は娼婦』。本作は、イギリスの劇作家、ジョン・フォードが1620年ころに執筆した代表作。シェイクスピアやクリストファー・マーロウなどを輩出したエリザベス朝演劇の終盤を代表するこの名作戯曲の演出を、今回手がけるのは2013年春に紫綬褒章を受章した栗山民也。
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舞台は中世のイタリア、パルマ。勉学に優れ、人格的にも非の打ち所がないと将来を嘱望されるジョヴァンニは、尊敬する老修道士に、類まれな美貌の妹アナベラを女性として愛していると告白し、修道士の忠告も聞かずにアナベラに気持ちを伝えてしまう。愛するがゆえに、ついに道ならぬ恋に身を委ねる二人。
純粋にお互いを愛するがゆえにあやまちを犯してしまうジョヴァンニとアナベラ兄妹を演じるのは、浦井健治、蒼井優。初日公演終了後の浦井と蒼井から、以下のコメントが届いている。
◆浦井健治
演出の栗山さんにジョヴァンニ役としてご指名いただき、「絶対にやりたい!」と思った作品です。近親相姦というのは理解しづらいですが、兄として大切な妹を守りたい気持ちから始まって、段々歯車が狂っていくのだと思っています。
ジョヴァンニとアナベラ兄妹の愛が純粋なほど、周囲の人々のエゴや欲望が浮き彫りになってくる仕組みで、古典でありながら現代人にも共感できる部分が多くあると感じます。それがお客様に伝わるよう、エネルギーを持って演じ切りたいです。
◆蒼井優
兄妹の悲恋だけでなく、むしろ人のモラルや常識を核として、人間の業をドラマチックに描いた舞台だと思います。何が「正しい」というのは人間が勝手に決めていることですよね。その点で、今を生きる私たちも考えさせられる作品です。
また、栗山さん曰くアナベラは「女性の履歴を駆け抜けた女性」。少女が恋をして母になり、最後には娼婦と呼ばれてしまう。その成長の早さをどう生き抜くかを、お客様にしっかりとお見せしていきたいです。
このほか、伊礼彼方、大鷹明良、春海四方、佐藤誓、西尾まり、浅野雅博、横田栄司、宮 菜穂子、前田一世、野坂弘、デシルバ安奈、石田圭祐、中嶋しゅうなど、若手からベテランまで、実力と存在感を兼ね備えた俳優陣が顔を揃えている。ジョヴァンニとアナベラを取り巻く人間模様にも注目だ。
なお、Toutubeでは、公演期間中、舞台稽古の模様を一部公開している。ぜひご覧いただきたい。『あわれ彼女は娼婦』は、6月26日(日)まで新国立劇場 中劇場にて上演。
公開稽古動画URL:https://youtu.be/YBtNxVSVAZ8
撮影:谷古宇正彦 ※無断転載禁止※