劇団イキウメにより2011年に上演され、読売演劇大賞をはじめとする様々な演劇賞に輝いた話題の舞台を『SR サイタマノラッパー』シリーズ、『ジョーカー・ゲーム』の入江悠監督の手で映画化した『太陽』の完成披露試写会が、3月7日(月)に東京・一ツ橋ホールにて開催された。上演前には、入江監督、原作者で映画の脚本にも参加している前川知大、W主演を務めた神木隆之介と門脇麦、共演の古川雄輝、古館寛治が舞台挨拶に登壇した。
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人気舞台の映画化という難題にチャレンジした入江監督は前川さんの戯曲を「10年に1本という作品」と評し、「僕自身が抱えていたテーマ、今の世界における普遍的なテーマが入っていました。プロデューサーに話を聞いて『ぜひやりたい!』と言いまして、3年かけて完成しました!」と感慨深けに語った。入江と共に映画用の脚本にも参加した前川は、「スクリーンの中に信じられる世界があります。キャストの存在感、映像の現実感・・・僕らが見ても納得できる作品になっています」と映画の出来に太鼓判を押した。
撮影はかなり過酷だったようで、神木は撮影中の苦労を尋ねられると「寒かった!」を連発。「真冬の秩父で、古川くんとのシーンは特にダムが近くにある水辺だったので・・・本当に寒かったです!」と思い出すだけでも震えが蘇ってくるかのような様子を見せた。
門脇は、寒さの上に「睡眠不足も重なった」と明かし、「そうなると人間、食欲が増すようで、いつもの倍くらい食べてコロコロになりました(苦笑)。生命の危機を感じて食べ続け・・・完成した映画を見たらコロコロでびっくりしました」と振り返った。
古川は登壇キャストの中で唯一、太陽の下では生きられない新人類のノクスを演じているため、撮影は「夜の6時から日の出まで。日が出ている時間は起きてなくて・・・」と昼夜逆転生活の中での撮影に苦労したよう。そして、先ほどの神木の発言に対しては、「神木くんは『寒かった!』と言ってましたが、一番寒くなさそうで、ベンチコートも脱いでた」と証言する一幕も。極寒の中でも感情をむき出す神木は“熱”を発していたと言うが、神木は「冷めるとすっごい寒かったよ!」と苦笑いだった。
古舘は、そんな過酷な環境の中で「監督は納得しないとOKを出してくれなくて、延々と何度も…。僕は体が丈夫じゃないし、こんなに体動かしたのは何年ぶりかという感じで動けなくなっている時に、『もう一回』と言われて死を思い浮かべました」と恨み節。これに対し、入江は「仕事ですよね(笑)?真ん中の三人(神木、門脇、古川)の方が古舘さんより全然、動いてましたけど・・・」と反論し、会場は笑いに包まれた。
作品の中に出てくる太陽の下は歩けないが、頭脳も進化した“ノクス”と、ウイルスに怯え厳しい生活を送りながらも太陽の下で活動できる“キュリオ”。自分だったらどちらを選ぶか?と問われると、神木は「ノクス」、古川も「豊かな生活」を理由にノクスを選び、門脇だけは「太陽は偉大だと思うので」とキュリオを選んでいた。
改めて神木は「僕も台本を読んで分からないことがいっぱいだったけど、“分からない”ということも大事なことだなと思いました。一人一人別の観点で観ることができて、自分の中でゆっくり育っていく作品です」とアピール。門脇も「入口はSFですが、人間の性(さが)、隠したいけど隠し切れないものが出てくる人間観察記です。見終わって苦しい気持ちになるかもしれないけど、持ち帰って、じっくり感じてください」と呼びかけた。
『太陽』は2016年4月23日(土)より角川新宿シネマほか全国ロードショー。