アメリカ現代演劇界に確固たる地位を築いたテネシー・ウィリアムズが絶頂期といえる1957年に発表した渾身の傑作戯曲『地獄のオルフェウス』。大竹しのぶと三浦春馬が初共演するなど話題となっている本作の製作発表会見に、演出家のフィリップ・ブリーン、大竹しのぶ、三浦春馬、水川あさみ、三田和代が東京・Bunkamuraシアターコクーンに姿をあらわした。
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『地獄のオルフェウス』は偏見と慣習に囚われた小さなコミュニティを舞台に、愛のない結婚をし、淡々と日常を生きる女の前に現れたひとりの青年。彼が放つ違和感は波紋のように広がって人々の欲望を触発していく…。繊細な人物造形と詩的なセリフの数々。観る者すべての心に、青春の痛みと情熱を呼び起こすウィリアムズ作品の魅力に溢れている。
演出にはシアターコクーン・オンレパートリー公演で初の英国人演出家となるフィリップ・ブリーン。彼はイギリス演劇界の名門ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーなどで着実にキャリアを積み重ね、昨年ロンドンで上演した『TRUE WEST』の劇評が各紙で四つ星評価を得るなど、いま最も注目を集める新進気鋭の演出家の一人。フィリップは製作発表会見に集まった多数の取材陣に驚きながらも、「蜷川幸雄さんの作品を観ていたことから、日本で仕事をすることに憧れていました。『地獄のオルフェウス』に関われることは非常に光栄です。イギリスやアメリカでも頻繁に上演される作品ではないですが、テネシー・ウィリアムズの作品の中でも非常に素晴らしく、豊かな洞察を持って愛や人生が描かれた作品です。大竹しのぶさんをはじめとした素晴らしい出演者と一緒に、本作をより素晴らしいものとして作っていけることを楽しみにしています」と本作に懸ける思いを語った。
続いて、主演の大竹は「テネシー・ウィリアムズ作品への出演は『欲望という名の電車』以来で久しぶりですが、やってもやってもやり切れず、どこまで追求すればいいのかと悩む毎日でした。今回、また新たなテネシー作品に挑戦することができて楽しみです。フィリップさんが、どのような演出を行い、どこに連れて行ってくれるか分かりませんが、すごく面白くなるか…いえ、絶対にすごく面白くなる予感がします(笑)」とウィリアムズ作品の難しさを語るとともに、会場の笑いを誘った。一方、大竹と初共演の三浦は「ストレートプレイは初めての経験となります。諸先輩方と素晴らしい戯曲に対して、自分とも作品とも向き合える機会を頂けたことを本当に嬉しく思っています。フィリップさんと話す機会があったのですが、彼はとてもユーモアがあり、また本作に対する熱い思いと哲学を感じることができました」と、やや緊張した面持ちながらも本作に懸ける思いを口にした。
そして、水川は「フィリップさんには先程初めて会ったのですが、カワイイ熊さんのイメージです(笑)これが稽古中にずっとカワイイ熊さんでいるか分かりませんが、きっと充実した稽古になって本番を迎えられると思いますので頑張ります」と意気込みを語ると、フィリップも熊のポーズを取るなど会見は和やかなムードに。最後に三田からは「私の役はこのラブ・ストーリーを悲劇に追いやってしまう女です。お客様と共感しながらやっていきたいです。わからない感覚は若いフィリップさんに相談したり、教えて頂いたりしながら、躍動的なラブ・ストーリーを作っていきたいです。どうぞ、楽しみにして下さい」とベテランならではの落ち着きのある言葉をのべた。
製作発表会見が終わると、ブリーンは通訳にスマホを持たせて、多数の取材陣をバックに出演者一同と記念写真を撮る一幕も。出演陣とのコミュニケーションも問題ないようだ。シアターコクーン26年目の春に新風を吹き込む本作。シアターコクーン・オンレパートリー公演初の英国人演出家がどのように本作を観せてくれるか楽しみだ。
シアターコクーン・オンレパートリー2015『地獄のオルフェウス』は2015年5月7日(木)から5月31日(日)まで東京・Bunkamuraシアターコクーンにて、6月6日(土)から6月14日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。