2025年9月12日(金)に大阪・梅田芸術劇場メインホールにて開幕する、ミュージカル『黒執事』~緑の魔女と人狼の森~のオフィシャル稽古レポートと稽古場写真が到着した。

※稽古レポートにはネタバレ要素が含みます
立石俊樹のもとカンパニーは充実の仕上がり! 緊張感と笑いに包まれた稽古場
開幕が近づく8月下旬、ミュージカル『黒執事』~緑の魔女と人狼の森~の稽古場を訪ねると、ストレッチや台本の確認などそれぞれに準備をする出演者たちの姿があった。今作で 3 度目のセバスチャン・ミカエリス役に挑む主演の立石俊樹は、本番を想定したジャケットとマント、手袋を着用してスタンバイ。ここまでの稽古の充実度を感じさせる和やかな雰囲気のなか、冒頭から一幕前半までを磨き上げていく返し稽古が始まる。
天寿光希演じるババ様の一言が場に響き、一気に空気がひりつく。緊張感のある幕開けだ。続けて「人狼の森」に囲まれて暮らす村の女性たちが登場すると、ピアノの旋律に繊細な女声が溶け合って美しく響く。音楽を手掛けるのはシリーズ過去作も担当した和田俊輔だが、女性キャストだからこその高音のハーモニーは「生執事」としては新鮮だった。そしてキャスト全員が登場し、今作のメインテーマ『緑の魔女と人狼の森』を披露する。
男性陣の歌声も加わったダイナミックなコーラスで、すでに「おもしろい一作になる」と確信できるオープニングだったが、歌唱指導のカサノボー晃と振付のKOHMENがアクセントの置き方や顎の動きを指示し、音の広がりを調整していく。それだけで、悲痛な叫びに近かった歌声に天に祈るような響きが加わった。新良エツ子による歌詞も巧みで、シエルが背負った“業”やファントムハイヴ家使用人たちの過去、村の領主・サリヴァンが抱く夢、村人たちの“秘密”がいかようにも捉えられる言葉で重ね合わされ、メインテーマがリフレインされるたびに登場人物たちの新たな表情を見せてくれる。
場面はシエルたちとサリヴァンたちの出会いへ。演出の毛利亘宏は自ら武器(農具)を並べると、村人を演じるキャストたちに「こういうものはご縁だから、各自好きなものを持ってみて」とユーモアたっぷりに告げる。
一方で毛利は、照明・映像を踏まえた動きや、音楽が入るタイミング、セットの転換を演出部とキャストのどちらが担うべきかも検証を重ね、より自然に感情が流れていくベストな表現を探る。ここでは村で唯一の男性・ヴォルフラムに気圧されたメイリンが、セバスチャンに助けを求めるように目線を送る動きを追加して、セバスチャンとヴォルフラムが対峙する構図をスムーズに導いた。
この二人の執事の対比が、今作の大きな見どころとなりそうだ。立石はセバスチャン役をすっかりものにしていて、「この一瞬ですごい執事だ!と思わせたい」という毛利のリクエストにもすぐ応じて見せた。余裕たっぷりのしなやかな動きと隙のない微笑みには、完璧な執事としての流麗さがある。それがむしろ一線を引いた冷たさも感じさせ、全体的に声は硬く、鋭い瞳の奥に“狂気”をちらつかせることもあった。
しかし立石が休憩時間に見せる姿は正反対で、シエル役の小林郁大を相手にマントを着せたり抱きかかえたりする動作の練習を繰り返しながら、終始リラックスした様子。カンパニー全体に漂う自信と余裕は、座長・立石の人柄あってのものだろう。
小野田龍之介が演じるヴォルフラムは声にも振る舞いにも威圧感があり、言葉遣いも荒いが、主人であるサリヴァンに対しては厚い情と彼なりの優しさを全身で注いでいることが伝わってくる。まだまだ試行錯誤の最中ながら、毛利から「小ネタ大歓迎」と賞されるヴォルフラムの不器用さのトライの一つひとつがコミカルで、終始稽古場の笑いをさらっていた。さらに小野田が意識を向けるのは自身の役だけではない。Clara を乗せた車椅子を操ることでサリヴァンの見え方にも気を配り、角度や立ち位置について毛利とディスカッションを重ねていく。
この二人の魅力を存分に堪能できるのが、執事対決ともいえる料理をしながらの賑やかなナンバーだ。卵を割る手首のスナップや机を叩く指のしなりまで優雅さを追求する立石と、威厳ある姿と滑稽さのバランスを探る小野田。さらに毛利の指示で SE も上乗せされ、リズミカルに盛り上がる楽しい一曲になりそうだ。そしてヴォルフラムの険しい表情が、このナンバーで見せるセバスチャンへの対抗意識から己の内なる葛藤へと、少しずつ色を変えていくのも印象深かった。
ファントムハイヴ家の使用人たちが「生執事」で勢ぞろいするのは、今作がはじめてとなる。個性はバラバラながらも不思議と息の合った一行。待機中も常にまとまって移動するのがなんだか可愛らしく、小林とメイリン役の角川が「スナイパーごっこ」に興じる微笑ましい光景も見られた。使用人たちがシエルとともに過ごしてきた歳月がたしかにそこに存在していて、はじめて出会うはずの彼らに「久しぶり」と思えたのが嬉しい。
頼もしさしかないカンパニーで、楽しみなのはやはり小林と Clara という若き才能だ。小林のシエルは生意気でツンとした態度があまりにも板についているぶん、駄々っ子のように甘えたり、身体の内側から感情を爆発させたりする振れ幅が見事だった。Clara のサリヴァンは、ヴォルフラムに赦しを与えるような落ち着きと包容力を見せつつ、ひとたび歌い出すと自分の歌声に勇気をもらうかのように、少しずつ力強く高らかに歌い上げていく。
そんな二人が演じるシエルとサリヴァンはそれぞれ、一幕の後半から二幕で大きな決断を迫られることとなる。
立石率いる「生執事」カンパニーが、暗闇から強く歩き出す彼らの物語をどう描き出すのか、その完成形を劇場で見届けたい。
ミュージカル『黒執事』~緑の魔女と人狼の森~は、9月12日(金)から9月15日(月・祝)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホール、9月21日(日)から9月28日(日)まで東京・Kanadevia Hallにて上演される。
(文/榊 恵美、撮影/大塚浩史・星野絵美)
ミュージカル『黒執事』~緑の魔女と人狼の森~公演情報
公演情報 | |
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タイトル | ミュージカル『黒執事』~緑の魔女と人狼の森~ |
公演期間・会場 | 【大阪公演】2025年9月12日(金)~9月15日(月・祝) 梅田芸術劇場 メインホール 【東京公演】2025年9月21日(日)~9月28日(日) Kanadevia Hall |
スタッフ | 原作:枢やな(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊) 脚本:Two hats Ltd.、日置じゅん(D-6th) 演出:毛利亘宏 音楽:和田俊輔 |
キャスト | セバスチャン・ミカエリス 役:立石俊樹 シエル・ファントムハイヴ 役:小林郁大フィニアン 役:糸川耀士郎 メイリン 役:角川美紗 バルドロイ 役:北村圭吾 スネーク 役:佐藤永典 タナカ 役:本間仁ヒルデ・ディックハウト 役:蘭舞ゆう グレーテ・ヒルバート 役:玉山珠里 アンネ・ドレヴァンツ 役:井上花菜 ババ様 役:天寿光希 ジークリンデ・サリヴァン 役:Clara <アンサンブル> |
チケット情報 | 【料金】(全席指定・税込) 東京公演:12,800円 大阪公演:S席 12,800円/A席 9,800円/B席 6,000円 |
公式サイト | http://namashitsuji.jp/ |
公式SNS | 公式X(Twitter):@namashitsujijp |


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