ミュージカル『ワイルド・グレイ』福士誠治×立石俊樹×東島京版【レポート】

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2025年1月8日(水)に東京・新国立劇場 小劇場にて開幕したミュージカル『ワイルド・グレイ』。本記事では、福士誠治、立石俊樹、東島京版の模様とレポートする。

目次

ミュージカル『ワイルド・グレイ』とは?

ミュージカル『ワイルド・グレイ』舞台写真

本作は、19世紀イギリスの劇作家オスカー・ワイルドを中心に、ワイルドの友人ロバート・ロス、青年アルフレッド・ダグラスという実在した3人の男たちを描いたミュージカル。

現実世界で叶えることのできない自由を芸術の中に求めた男たちの物語として、韓国で創作され、2021年に開幕しコロナ禍でありながらヒットを記録、早くも2023年に再演し多くの観客を魅了した。

今回の日本初演では、数々の話題作を生み出してきた演劇界の異才・根本宗子が初のミュージカル演出と上演台本を手がける。

出演はチーム固定のWキャストで、ロバート・ロス役を平間壮一、オスカー・ワイルド役を廣瀬友祐、アルフレッド・ダグラス役を福山康平が演じるバージョンと、ロバート・ロス役を福士誠治、オスカー・ワイルド役を立石俊樹、アルフレッド・ダグラス役を東島京が演じるバージョンとなる。

レポート:文学界の異端児と取り巻く男たちの芸術と愛を求めた先

ミュージカル『ワイルド・グレイ』舞台写真

物語の舞台は、慣習と規範に縛られた19世紀末のロンドン。文学界の異端児オスカー・ワイルドは小説「ドリアン・グレイの肖像」を連載するが、美と若さのために魂を売り渡す青年ドリアン・グレイの物語は、時代に合わない破格的なテーマと内容で英国社会に衝撃を与える。

議論と批判は収まらず、結局主人公のドリアンが死を迎えるという望まない結末で小説を出版するオスカー・ワイルド。

彼を支え続けるのは、友人であり支持者であるロバート・ロスだった。2人が望んでいた自由が芸術の中でさえ挫折したその時、ドリアン・グレイにそっくりな青年アルフレッド・ダグラスが現れる――。

上手と下手にそれぞれ回転舞台を擁し、ピアノ、チェロ、バイオリンの生演奏が流れるステージ上で、オスカー・ワイルドの天才芸術家としての人生と、社会から断罪と抑圧された男性同士の関係性への葛藤を軸に、オスカー・ワイルドを支えるロバート・ロスと美しき青年アルフレッドとの関係性を原動力としてストーリーが展開していく。

ミュージカル『ワイルド・グレイ』舞台写真

現実世界に望むことの出来ない自由を芸術に求めるオスカー・ワイルド。叶わぬ憧れを持ち続けるロバート・ロス。壊れゆく自分を救うために芸術を求めるアルフレッド・ダグラス。3人の男が芸術と愛を求めた先には何が待ち受けているのか・・・。彼らの運命と心情の機微を丁寧に、そして情緒豊かに描き、ドラマティックにステージ上へと紡いでいく。

ミュージカル『ワイルド・グレイ』舞台写真

ワイルドへの献身的なまでの姿と優しさに満ちたまなざしを持ってロバートを演じる福士。アルフレッドが現れたことで、ワイルドへの思いをさらに募らせていく複雑な心境と切ない思いを、誠実なまでの歌声で観る者の心を揺さぶり、震わせる。

ワイルドを演じる立石は、天才芸術家としての魅力と、自由奔放な振る舞いでチャーミングな笑いを誘う軽快さを見せながら、美しさを愛するがために、苦悩しながらも禁断の愛へと突き進む情熱的な演技を披露。さらにワイルドとして芸術家のポリシーと自身のアイデンティティーを、美しく高らかに、そして力強く歌い上げていく。

ミュージカル『ワイルド・グレイ』舞台写真

ドリアン・グレイの肖像画を彷彿させる演出が印象的な美しき青年アルフレッドを演じる東島は、知的でありながら若さ故の傲慢なまでの態度と、壮絶な家庭環境による不安定さと孤独をステージ上に体現し、柔らかく繊細な歌声で心の脆さと儚い人生を歌い綴る。

3人の心情と歌声がピアノ、チェロ、バイオリンによる生の旋律と重なり、混じり合うことで、見事なまでに劇場に響き渡り、観客の心を打つ本作。実力派キャストによる傑作ミュージカルの日本初演をぜひ劇場で心ゆくまで堪能してほしい。

ミュージカル『ワイルド・グレイ』キャストコメント

福士誠治(ロバート・ロス役)

『ワイルド・グレイ』という作品に携われること、本当に光栄です。
偉大な小説家であるオスカー・ワイルドに惹かれるロバート・ロスという役を演じることは、楽しくもあり、切ない気持ちにもなります。
今とは違う時代を生きた人達が、時代や社会にそして人間に翻弄され、苦しみながらも自分の生き様に美しさを求めていくこの舞台を、是非楽しんでいただけると幸いです。
ピアノ、バイオリン、チェロの奏でる旋律も素敵なので、音楽に芝居にあふれた空間をお楽しみください。

立石俊樹(オスカー・ワイルド役)

芸術、愛を求め続けた3人の男たちの物語です。
オスカー・ワイルドという人物の魅力を知り、劇を通して彼自身の想像もし得なかった苦労や喜びを追体験させていただいています。
ピアノ・バイオリン・チェロのみで紡がれる音楽は、とても美しく素敵な空間を演出してくれます。
そして、役者3人だけのミュージカルだからこそ生まれる、濃密で深みのあるお芝居と心を震わせるミュージカルナンバーをぜひ劇場で堪能していただけたら嬉しいです。
皆さまのご来場を、心よりお待ちしております。

東島京(アルフレッド・ダグラス役)

いよいよ劇場に入り、胸に手を当てなくても鼓動の音を感じるのはいつぶりでしょうか。
限られた時間の中で物凄い熱量で役と向き合い理解しようと努力しました。初めて新国立劇場小劇場のステージに立って客席の独特な雰囲気を感じた今、その凝縮したものが次の刹那には破裂しそうな感覚です。
10代最後の作品なので特別な想いもあり、ついにお届けできることに興奮しています。
多くの方はアルフレッド・ダグラスに感情移入できないかもしれませんが、図々しいくらい彼を愛してきたので彼なりの言い分を代わりに届けられるよう全身全霊でつとめてまいります。

平間壮一(ロバート・ロス役)

新年一発目の舞台『ワイルド・グレイ』。
自分自身がこの作品を、作り出したわけではないですが、その一部になれたので、オスカー・ワイルドが作品に込めた愛のように『ワイルド・グレイ』と言う作品を愛して芸術の中にとことん生きられるよう頑張ります。
美と愛はいろんな形がありますよねー

廣瀬友祐(オスカー・ワイルド役)

無事に初日を迎えることができ、大変嬉しく思います。同時に、これから千穐楽までの間、誰一人欠けることなく、両チームが無事に乗り切れることを心から願っています。
出演者が3人という環境は、俳優にとって非常に贅沢で幸せな空間です。この特別な環境の中で、素晴らしいキャストと、ピアノ・バイオリン・チェロを奏でるミュージシャンの皆さんと共に舞台に立てることに大きな喜びを感じています。
この贅沢な舞台から、僕らにしか届けられない作品をお届けできればと思っています。また、出演者が変わることで、こんなにもチームの色が異なるのか!と感じていただけるはずです。
ぜひ2025年の観劇初めに、『ワイルド・グレイ』をお楽しみいただけたら幸いです。

福山康平(アルフレッド・ダグラス役)

遂に初日。ドキドキです。今までこんなにも稽古期間を短く感じたことはなかったと思います。怒涛の日々でした。自分が演じるアルフレッド・ダグラス、ボジーという役との間にはまだまだ近づく余地が沢山あるはず。毎公演少しでも彼を愛せるように、そして僕自身も成長できるように、廣瀬さん、平間さん、カンパニーの皆さんと共に大千穐楽まで走り抜けたいと思います!芸術を愛し、救いを求め、翻弄された男たちの物語、是非見届けてください。

根本宗子(演出・上演台本・訳詞)

「演出は日本のオリジナルにしていいですよ」
そう言っていただけたことが、わたしがこの作品をやろうと決めた大きなきっかけです。
韓国で生まれた本当に素晴らしい戯曲と、楽曲を自分の演出でどこまで日本で届けられるかこのお仕事を受けた日から今日まで考え続けてきました。
その答えの幕がついに開きます。

狙い通り、両チーム信じられないくらい印象が違う作品に仕上がりました。
それは全俳優がそれぞれの味と表現を持っていたから出来たことであり、ただのダブルキャスト公演で終わらせたくないという演出家としてのわたしの欲に全てのスタッフさん方が向き合い付き合ってくださったから叶ったことです。
願わくば、両チームご覧いただきたい思いです。

開幕前夜の今、わたしの心は初日がついに開く期待と、日本初演の演出を担う責任に胸の中は満ち溢れています。

日本版『ワイルド・グレイ』どうぞご期待ください。劇場でお待ちしております。
是非、見届けて欲しい。

ミュージカル『ワイルド・グレイ』はいつまで上演される?

ミュージカル『ワイルド・グレイ』は、1月26日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場、2月8日(土)に愛知・ウインクあいち 大ホール、2月14日(金)から2月16日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホール、2月22日(土)に群馬・高崎芸術劇場 スタジオシアターにて上演。

【公演詳細】ミュージカル『ワイルド・グレイ』公演情報(キャスト・チケット・配信など)

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

 

 

 

ミュージカル『ワイルド・グレイ』舞台写真

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この記事を書いた人

演劇、海外ドラマ、映画、音楽などをマルチに扱うエンタメライター。エンタステージ立ち上げからライターとして参加し、小劇場から大劇場のストレートプレイにミュージカル、2.5次元、海外戯曲など幅広いジャンルにおいて演劇作品の魅力を日々お伝えしています!

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