京本大我(SixTONES)が主演を務める『シェルブールの雨傘』が東京・新橋演舞場にて上演中。初日公演前に出演者による挨拶と公開ゲネプロが行われ、京本の他、朝月希和、井上小百合、渡部豪太、春野寿美礼らが登壇した。
本作は、1964年に公開されたジャック・ドゥミ監督のミュージカル映画の舞台版で、台詞も含め全編が音楽のみで構成された表現と作品性が高く評価され、 第17回カンヌ国際映画祭でグランプリ(現在のパルム・ドール)を受賞した注目作だ。
「ロシュフォールの恋人たち」や「華麗なる賭け」などの名曲を生み出した映画音楽界の巨匠ミシェル・ルグランが音楽を手掛け、公開からおよそ60年経った今もなお愛される不朽の名作で1983年に日本で舞台化し、これまで様々なキャストで再演を重ね今回新たなキャストと演出により約10年ぶりの上演となる。
主演は、近年『ニュージーズ』や『エリザベート』といったミュージカル大作に次々と抜擢されている京本大我が務める。共演には宝塚歌劇団トップ娘役として活躍し、本公演が退団後初めてのミュージカル出演となる朝月希和。乃木坂46卒業後も話題の舞台への出演が立て続く井上小百合。映像や舞台など様々な分野で躍進する渡部豪太、女優だけでなくシンガーとしても活動する春野寿美礼らが珠玉の名作を色鮮やかに届ける。
そして、演出は元宝塚歌劇団演出部で、現在はミュージカル・音楽劇・レビュー・コンサートなど幅広いジャンルで演出を手掛ける荻田浩一が担っている。
初日前に向けて行われた出演者の挨拶ではキャスト陣が名作に挑む想いを語った。京本は事務所の先輩でもある坂本昌行や井上芳雄が以前演じた役に挑むにあたり「お話をいただいた時には大人の恋愛作品という印象を受けて“まだ僕には早いんじゃないかな”と感じたのですが・・・。名だたる先輩方がこの作品を大事に大事に演じてこられたので、僕もそのプレッシャーに打ち勝ってバトンをしっかり伝えていけるように大事に大事に演じていきたいと思います!」と熱弁した。
稽古場で緊張して声が震えたと話す朝月は「共演者の皆さんの歌とお芝居、バイタリティあふれるお姿を拝見して自分を奮い立たせることが出来て、皆さんに引っ張っていただき今ここに立つことが出来ます!」と声を弾ませる。
音楽が流れる様にあっという間に過ぎていく!と作品の印象を話す渡部は「水が流れていくように進んでいく作品なので、皆さんの心に音楽が刺さっていくと思います」と笑顔をみせた。また、春野も「音楽に乗せて物語が進んでいくので、とても心地よくご観劇いただけるのではないかなと思います」と、作中の音楽にどう登場人物の思いとストーリーが乗っかっていくのかと観客のワクワクを誘う。
また、井上はこの作品を通して感じたことを「人生って色んな選択肢とタイミング、人との出会いや別れがたくさんある。その中で誰かを好きになったり、思いやるって奇跡的なこと! 一緒に居れるかどうかは難しいなって思うんですけど・・・(笑)。マドレーヌは恋と愛の違いを伝えてくれる存在。結婚と恋愛は違うってよく言いますけど、彼女は愛を持って生きる女性だと思っているので、私も愛を持ってこの作品に取り組めるように頑張ります!」と力を込めた。
最後に京本が「全編音楽という事でたくさんの挑戦が詰まった作品です。本当にたくさんの方に支えられてこの作品をお届け出来る。ミシェル・ルグランさんの奥さまから愛のあるメッセージもお手紙でいただいて! とにかく本当に美しく素敵な、だけど人間味も詰まった作品になっていますので。どうか1人でも多くの人にこの作品を観ていただいてこの作品の深いメッセージや思いが伝わればいいなと思っております!」と意欲を滲ませた。
ゲネプロでは初日前挨拶で出演者が話していた様に流れる様な音楽と、印象派の絵画を見ている様な美しい色彩の舞台セットに心を掴まれた。
アルジェリア戦争が続くフランスの港町シェルブールでギイ(京本)とジュヌヴィエーヴ(朝月)は出会う。すぐさま恋に落ちる2人だが、ジュヌヴィエーヴの母で雨傘店の店主エムリ夫人(春野)は若すぎることを理由に反対する。
そんな時、ギイに戦争への召集令状が・・・。幸せだった2人に突如として舞い降りた出来事に嘆き悲しむも、永遠の愛を誓ってシェルブール駅で別れることに。天井からは2人の気持ちに呼応する様に雨が降り注ぎ、切なさを助長させていた。
ギイが戦地に出向いた後に妊娠に気づくジュヌヴィエーヴだが、次第にギイからの手紙の数は減っていき不安を募らせる。そんな中知り合った宝石商のカサール(渡部)の誠実さと母の勧めによりジュヌヴィエーヴは彼からの求婚を受けるかどうか悩んでいた。愛する人と離れている時間が、不安な気持ちを増長させる。このジュヌヴィエーヴの心の葛藤を考えると、自分も胸が締め付けられてしまった。
そして、戦地から戻ったギイは恋焦がれた恋人に会いに行くも、雨傘店には誰も居なく・・・自暴自棄になるもたった一人の肉親である伯母を献身的に支えてくれたマドレーヌ(井上)の励ましを受け、新たな一歩を踏み出すことになる。このギイのやるせなさと苦しさが、綺麗な京本の顔が歪むにつれて強く感じられた。
誰しもが経験したことのある恋のひと時とその終わり。美しい音楽に乗せて歌とダンスが登場人物の思いを見事に浮き上がらせる。きっと“誰か”を思い出す、儚く切ないラブストーリーを堪能することができるだろう。
『シェルブールの雨傘』は2023年11月4日から11月26日(日)まで東京・新橋演舞場にて、12月3日(日)から12月10日(日)まで大阪・大阪松竹座にて、12月14日(木)から12月16日(土)まで広島・広島文化学園HBGホールにて上演予定。上演時間は約2時間10分(休憩含む)。
(取材・文・撮影/カヤシマヒデミ)
『シェルブールの雨傘』公演情報
スケジュール
【東京公演】2023年11月4日(土)~11月26日(日) 新橋演舞場
【大阪公演】2023年12月3日(日)~12月10日(日) 大阪松竹座
【広島公演】2023年12月14日(木)~12月16日(土) 広島文化学園HBG ホール
スタッフ・キャスト
【脚本】ジャック・ドゥミ
【音楽】ミシェル・ルグラン
【演出・上演台本・訳詞】荻田浩一
【出演】
京本大我
朝月希和
井上小百合
渡部豪太
春野寿美礼
福間むつみ
ひのあらた 田村雄一 川口大地
茶谷健太 岡田治己 東間一貴
横関咲栄 田口恵那 吉田繭 江崎里紗
酒井比那 大倉杏菜 田中奏 井上弥子
大村真佑(スイング)合田くるみ(スイング)
【公式サイト】 https://cherbourg-2023.jp