時雨沢恵一による名作小説「キノの旅 the Beautiful World」(KADOKAWA 電撃文庫刊)の舞台化第2弾となる舞台『キノの旅Ⅱ -the Beautiful World-』が、2023年6月15日(木)に東京・あうるすぽっとにて開幕した。本記事では、初日当日に行われたゲネプロの模様をお届けする。
原作「キノの旅 the Beautiful World」は、2000年の発表後、シリーズ累計820万部突破の大ヒット作となり、ラジオドラマ、PS2版ゲーム、2003年・2017年にTVアニメ化、2005年・2007年に映画化されるなど、様々なメディアミックス展開が行われ、2022年5月に初舞台化を果たした。
舞台版第1弾に続き今回も原作同様、様々な都市国家が散在する架空の世界を旅する主人公・キノと、その相棒で人間の言葉を話すモトラド(二輪車)のエルメスが、歴史や文化、価値観、社会体制などが違う国を訪れる【記録】を中心に、“美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい”世界の物語が描かれる。
出演は、前作から引き続き主人公・キノ役に櫻井圭登、エルメス役に辻凌志朗、師匠役に加藤ひろたか、相棒役に林瑞貴。新たなキャストとしてシズ役の三好大貴、陸役の関修人を迎え、佐久間貴生・草野峻平、小口ふみか、伊東征哉、浦谷賢充、加納義広、鈴木桃子らが名を連ねる。演出も引き続き山本タカが務める。
原作の一話完結スタイルが前作から踏襲され、今作でも原作の「魔法使いの国」「祝福のつもり」ほか数編の物語が描かれる。
「キノの旅」は主人公・キノとモトラドのエルメスを中心として、時間軸を交差させながら師匠と相棒、シズと陸のエピソードを交えつつ、バディ・ロードムービー的に、様々な国とその国民とふれあいを通して寓話のような物語を描くファンタジー作品。
舞台第2弾となる今作も、それぞれの物語が、時に優しく、時に哀しく、時に滑稽で、時に切なく、原作の持つ空気感を大切にしながら、プロジェクションマッピングと演者のパフォーマンスとの融合などの舞台的な演出によって「キノの旅」の世界が劇場空間に作り上げられている。
オムニバスな物語であるため、前作を観ていなくても十分楽しめる舞台となっているが、今作の「祝福のつもり」は、前作で描かれた「コロシアム」の前日譚となっており、前作から楽しんでいるファンにとっては、世界観の広がりを感じさせつつ、人間愛と別れを切なく描いた珠玉のエピソードとして胸を打たれることだろう。
少年のような少女であるキノを演じる櫻井。パースエイダーと呼ばれる銃器を使ったアクションも華麗に披露しながら、男性である櫻井が少女キノを自然体のように演じきっている。初舞台化時に生の人間が演じるという驚きによって迎えられたエルメス役の辻は、無機質な機械でありながら、軽口をたたくなど人間くささが同居する複雑なキャラクターを好演。
前作からキノとエルメスを引き続き演じる2人ならではの息の合ったコンビネーションが、キノとエルメスのバディ関係により一層の輝きをもたらしている。そして、師匠を演じる加藤と相棒役の林、シズ役の三好と陸役の関によるそれぞれのバディたちの旅が、キノとエルメスの旅路をさらに彩り、舞台全体に大きな深みと奥行きを与えてくれる。
原作をリスペクトしつつ、舞台としての生の魅力が詰め込まれたキノとエルメスの新たなる旅路をともに、約1年ぶりとなる入国として劇場で感じとってほしい。
舞台『キノの旅II -the Beautiful World-』は、6月15日(木)から6月25日(日)まで東京・あうるすぽっとにて上演される。上演時間は約120分(休憩なし)を予定。
(取材・文/櫻井宏充、撮影/サギサカユウマ)
舞台『キノの旅II -the Beautiful World-』公演情報
上演スケジュール
2023年6月15日(木)~6月25日(日) あうるすぽっと
スタッフ
【原作】時雨沢恵一(KADOKAWA 電撃文庫刊)
【原作イラスト】黒星紅白
【演出】山本タカ
【脚本】畑 雅文
【作詞】うえのけいこ
【劇中歌音楽】ハラヨシヒロ はるきねる
キャスト
キノ:櫻井圭登
エルメス役:辻凌志朗
シズ:三好大貴
陸:関修人
師匠:加藤ひろたか
相棒:林瑞貴
七人の調査隊:佐久間貴生 草野峻平
ニーミャ・チュハチコワ:小口ふみか
フィアンセ:伊東征哉
国長:浦谷賢充
付き人:加納義広
ラファ:鈴木桃子
※辻凌志朗の「辻」は一点しんにょうが正式表記
公式サイト
【公式サイト】https://kinonotabi-stage.com/
【公式Twitter】@kinonotabi_st
(C)時雨沢恵一 2023
(C)舞台「キノの旅」製作委員会 2023