荒木宏文の薬売りが真と理を知り、モノノ怪を斬る! 舞台『モノノ怪~化猫~』レポート

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荒木宏文の薬売りが真と理を知り、モノノ怪を斬る! 舞台『モノノ怪~化猫~』レポート

2023年2月4日(土)に、舞台『モノノ怪~化猫~』が東京・飛行船シアターにて開幕した。初日前日には公開ネプロと取材会が行われ、荒木宏文、岡田夢以、大平峻也、水原ゆき、白又敦、演出・映像のヨリコ ジュン、アニメ監督の中村健治が登壇した。

原作のアニメ『モノノ怪』は2007年7月にTVシリーズとして放送され、スタイリッシュなキャラクターデザインに、和紙のテクスチャーなどCG処理を組み合わせた斬新な映像を生みだし話題となり、薬売りの男がモノノ怪に立ち向かう冒険譚は、多くのファンを魅了。放送から15周年たった今もなお根強い人気を誇っている。

アニメ『モノノ怪』15周年記念企画として、劇場版『モノノ怪』と共に制作が発表された本作。舞台での上演演目は、アニメ「モノノ怪」がシリーズ化するきっかけとなった2006年のアニメ「怪~ayakashi~」より「化猫」となっている。

本編の要となる薬売りを演じるのは、ミュージカル『刀剣乱舞 にっかり青江 単騎出陣』やムビ×ステ『漆黒天』などへの出演、舞台『幽☆遊☆白書』では出演に加え演出を担当するなど様々な活躍を見せる荒木。そのほかに、珠生役を岡田、坂井伊行役を大平、加世役を水原、小田島役を白又らが演じる。演出/映像は、演出・脚本だけでなく、映像作家、映画監督とマルチに活躍するヨリコが務める。

取材会では、まず主演の荒木が「劇場に入って、いろんな部分を確認し、やっと完成が見えてきた状態です。千秋楽まで常に高みを目指して、改善できるところはどんどん改善しながら、そして模索しながら、最高傑作を目指して演じていきます」と挨拶。

本作を製作するにあたって、ヨリコは「中村監督とのお話で勉強させていただいて、どういう思いで作ったのかなどを荒木くんに共有しながら稽古をさせてもらいました。その際に、どうしてもやってはいけないことを尋ねて、『薬売りは食べない、寝ない』の2点を監督から伺いました」と振り返ると、「それが僕らのいいプレッシャーになって、それだけを言ってくれた器の大きい中村監督に対して、どんなものを見せるのか、僕らでディスカッションを重ねて作ったつもりです。僕らが一丸となって、舞台版はこうだというのを模索しながら、一生懸命に芝居を作ったというところを見てほしいです」と呼びかけた。

その中村監督は、衣装を身にまとったキャストをゲネプロ当日に初めて見たことについて「ヤベー立体になっているという感想です(笑)。僕らは2次元のアニメを作っているので、すごい感動があります」と感想を述べると、ヨリコとの打ち合わせを振り返りながら「みんなで意見を出し合って、悩みながら考えて、進んでいったと伺っていました。それはすごくいいことだなと思っていまして、アニメはアニメ、舞台は舞台で正解は重なっているけど、ちょっと違ったりもして、逆にその違いがないと面白くないので、そういうところを楽しみに、ワクワクしています」と本作への期待を寄せた。

アニメ『怪~ayakashi~』の「化猫」は浮世絵や和紙のような和風の絢爛豪華な映像表現が用いられていたが、その独特な世界観を舞台上に作り上げることについて、ヨリコは「平面じゃなくて立体になったら、違う方法を使わないといけないと思っていて、映像だけで見せるというのは違うよねと荒木さんと話していました。ここは実際の物を出さなきゃいけないとか、和紙のテイストとか、和のテイストの絵を出せばいいのかというと、またそうじゃないんじゃないかと。これをどういう風に演出しようかなというところのこだわりは逆にありました」と、舞台製作へのこだわりを明かした。

その言葉を受けて、荒木は「舞台はアナログなエンターテインメントだと思っています。だからこそ肉体で表現をして、そこに何が見えるのかをお客さんに想像してもらい、色を付けてもらうものだと思っています」と語り、「だからこそ、映像に全て頼らず、でも上手に利用する。この劇場は270度映像を映すことができるので、映像を使う際は豪快に使いつつ、僕たちが映像というデジタルなものと演劇というアナログなものが1対1で対立できるように、良い化学反応を持てたんじゃないかと思います」と本作の出来栄えに自信を見せた。

 

本作は、原作の和紙や浮世絵のような和な極彩色の表現を、舞台後方のスクリーンだけでなく、屏風絵かのごとき複数のホワイトのボードに映像を投影しつつ巧みに転換させるなどして、舞台上に落とし込んでいる。さらに、荒木が述べたように、ステージ上の天井まで伸びたスクリーンなど、飛行船シアターの劇場空間を最大限に利用した映像演出は大迫力で、目を奪われること間違いなし。

そして、ヨリコと荒木が語ったように、その映像表現と、パフォーマー・演者たちによる演劇的肉体表現に、パフォーマーたちによる巨大な布を用いたモノノ怪の表現やアクションシーン、演者が操る和傘へのプロジェクションマッピングによるモノノ怪の表現、紗幕によるシーン演出などが融合され、『モノノ怪』の世界観が見事に舞台上に作り上げられている。

物語の舞台は江戸時代、武家の坂井家。古より人の情念や怨念にあやかしが取りついたとき、モノノ怪となり人に災いをもたらす。このモノノ怪を斬ることができるのはこの世で唯一、退魔の剣。それを使い諸国を巡り、モノノ怪の「形」と「真」と「理」を明らかにして斬る薬売りの男。その薬売りが、当主の娘である坂井真央の輿入れの日に、坂井家を訪れるところからストーリーが始まる。そこで次々と起こる怪事件に巻き込まれた薬売りは、モノノ怪の正体を探ることに・・・。

一見するとモノノ怪の化猫にも見える薬売りについて、荒木は「こういった見た目ですが、人間らしいです(笑)。人間であるにもかかわらず、食べる姿と寝ている姿が世に出ていない、そこに何か理由があるんじゃないかと思っているので、それをお客さんが想像できるように、答えを全部見せるのではなくて、そういった面もあるよということをふまえた上で演じています」と役作りを説明。さらに、「その答えへのヒントになるような表現が、セリフを言っていない時のキャラクターのたたずまいにあると思うので、そこにも注目してください」と見どころとして挙げた。

謎の女性・珠生を演じる岡田は「珠生さんは切なく、儚くて、こんなにも悲しい立場の人がいるのかとアニメを見てびっくりしました。それに、優しさだけじゃなくて、命を守る強さも兼ね備えた女性でもあります」と魅力をアピール。

坂井家の前当主・坂井伊行の若き頃を演じる大平は、公開取材の挨拶でメモを取り出し「海外からも愛された『モノノ怪』の世界とキャラクターが、お客様の心を捉え、原作ファンの方にも、そして初めてこの作品に触れる方にも楽しんでいただけるように全身全霊で坂井伊行を演じたいと思います。と、坂井伊行役、大重わたるさんが言っていました!」と、同役で年老いた隠居姿の伊行を演じる大重のコメントを披露。続けて、「坂井伊行として先輩を差し置いてここに立つのは忍びなかったので、個人的にインタビューさせていただきました」とかしこまりながらも、「スベッた(笑)?」と登壇者たちに確認し、笑いを誘った。

その坂井伊行の見どころについて、大平は「人として最低なところですね(笑)」とコメントすると、登壇者たちも爆笑。「人としてこの気持ちを分かりたくないですけど、でも演じる上では1本筋を通さなきゃいけなくて、彼は彼なりに自分の思いを貫いた上で行動しているので、それを舞台のピースとしてしっかり全うしていきます。最低なところが魅力的です(笑)」と“最低”を再三訴えながらニッコリ。

坂井家の下働きで、薬売りと一緒にモノノ怪を探す加世を演じる水原は「この作品は人間の憎悪的なものがすごく詰まっています。その中でも加世はお客さん側の目線で、喜怒哀楽を素直に表現できるキャラクターです。そういうところをお客さんと一緒に共感しながら表現できたらと思っております」と加世の見どころを訴えつつ、意気込んだ。

坂井家の若党・小田島を演じる白又は「小田島は一番分かりやすく、シンプルなキャラクターです。真っすぐで良い奴という認識を持っていただけると、すごく見やすいと思います」と役柄を解説。加えて、「怪事件について何も知らないから、突然やってきた薬売りにも真っすぐにいろんな意見を言えるし、いろんな人に対しても一番気持ちが動いて一番会話をするキャラクターとなっています。なので、お客さん目線で追ってもらえれば、ストーリーが分かりやすくなるので、そこを加味して見てください。とにかく、真っすぐなキャラクターです!」と演じる役柄らしく、真っすぐなコメントで力を込めた。

荒木がステージ上で見せる人間らしさとミステリアスが混じり合うたたずまいは、まさしく『モノノ怪』の薬売りそのもの。平穏な日常の飄々とした態度から、モノノ怪と相対する際に見せる鋭き眼光と、薬売りは荒木の演技力と魅力を存分に楽しめる役柄となっている。

その薬売りと共に怪事件を探る小田島と加世。実直にして、少し間の抜けた小田島を白又が好演し、おどろおどろしい本作の中でも一服の清涼剤のような存在の加世を水原がチャーミングに演じている。そして、人間の欲望と憎悪が蠢く坂井家の関係者たちを演じるキャストたちの熱量が、物語により悲劇と凄惨の深みをもたらす。

ステージ上の事の有り様と、役者たちがさらけ出す心の有り様。その「真」と「理」が紡ぐ本作。薬売りとモノノ怪による幻想冒険奇譚として存分に楽しめるエンターテインメント作品へと仕上がっている。

舞台『モノノ怪~化猫~』は2月15日(水)まで東京・飛行船シアターにて上演。上演時間は約1時間30分を予定。

なお、初日2月4日(土)12:00公演/16:30公演(共に定点)、2月12日(日)12:00公演/16:30公演(共にスイッチング)ではZAIKOにてライブ配信が実施される。
【配信チケット】https://l-tike.com/play/mevent/?mid=678761

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

目次

舞台『モノノ怪~化猫~』公演情報

上演スケジュール

2023年2月4日(土)~2月15日(水) 東京・飛行船シアター

スタッフ・キャスト

スタッフ

【原作】モノノ怪「怪~ayakashi~」化猫
【舞台脚本】月森葵
【原脚本】横手美智子
【演出/映像】ヨリコ ジュン

【出演】
薬売り:荒木宏文

珠生:岡田夢以
坂井伊行:大平峻也/大重わたる
加世:水原ゆき
坂井伊國:伊藤裕一
小田島:白又 敦
勝山:西 洋亮
笹岡:遠藤拓海
さと:伊藤わこ
坂井伊顕:高山猛久
坂井水江:新原ミナミ
弥平:中村哲人
坂井真央:波多野比奈

<パフォーマー>
川村理沙 肥田野好美 大橋美優 鈴木彩海(G-Rockets)

公式サイト

【公式サイト】https://officeendless.com/sp/mononoke_stage/
【公式Twitter】@mononoke_stage

(C)舞台「モノノ怪」製作委員会




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この記事を書いた人

演劇、海外ドラマ、映画、音楽などをマルチに扱うエンタメライター。エンタステージ立ち上げからライターとして参加し、小劇場から大劇場のストレートプレイにミュージカル、2.5次元、海外戯曲など幅広いジャンルにおいて演劇作品の魅力を日々お伝えしています!

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