“劇団ってどうやって運営するの?”劇団ウルトラマンション主宰・安藤亮司氏インタビュー

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“劇団ってどうやって運営するの?”劇団ウルトラマンション主宰・安藤亮司氏インタビュー

演劇の公演形態は様々あり、そのひとつに劇団が上演するものがあるが、演劇を志す方であっても「劇団ってどのように運営されているのだろう?」とイメージが出来ないことも多いのではないだろうか。

そこで今回、2013年に劇団ウルトラマンションを立ち上げ、伊藤高史さんと共にW主宰・脚本・演出を務めている安藤亮司に「劇団の始め方、運営をするには?」というテーマでインタビューし、劇団の始め方や運営の実情、劇団だからこそ実現出来る作品づくりや魅力について聞いた。

――安藤さんは元々俳優・タレントとして活動されていましたが、劇団を運営するに至ったきっかけや経緯を教えてください。

そんなに大きな起点は特になくて、役者をやってきて、ずっと舞台に立ち続けていきたいと思いました。人生の中で、幸運にも早めにテレビに出していただき「波がきた」と感じていて、その波が終わったので、というのが一番大きいのかなと思います。

――俳優として活動している間は、映像でのお芝居よりは舞台でお芝居する方に魅力を感じていたのでしょうか?

そんなことはないです。舞台でもテレビでも映画でも、どこでもお芝居できるなら良いなと思っていました。でも「こういう作品やってみたいな」「こういうお芝居やってみたいな」というのは、役者はみんな思っているのではないかなと。僕らが若かった時はそれを自分で映像化できるとは思っていなかったのですが、今は自分たちで動画を撮ってYouTubeで出したりすることもできるようになりました。僕が東京出て来た26年前には全然やり方もわからなかったし、やる技術も無かった。そう考えると、自分のやりたい事を「舞台だと挑戦できるかな」という思いが強くあって劇団を始めたという感じです。

――今回「劇団の始め方、運営をするには?」というのがテーマなのですが、劇団として公演を作ってく流れを教えてください。

“モノを作る”って何でもそうだと思いますけど、芝居の場合も稽古場代、劇場代、衣装代、小道具代などのお金というのはある程度、先出しなんです。売上は公演後に入ってくる。なので、劇団公演の場合は最初はお金を持ち寄って公演後に分配していくという形が多いのではないかと思います。

あくまでも例題ですが。
劇場代と稽古場代に10万円、衣装代小道具代に10万円、役者さんへの出演料が10万円、スタッフさんへのギャラが10万円だとすると、公演を打つのに全部で40万円かかります。チケット代を2000円に決めたとすると、200人のお客さんを呼べば赤字も出さずお芝居が出来ると計算出来ます。それが公演を打つ一番簡単な考えだと思うんです。そして、それを続けていくと同じ集団で公演が出来る。それはもう劇団だと思うんです。

そして、劇団にファンがついてくれば、逆算も出来るようになります。劇団に200人のファンの方がいて、その200人の方に向けてお芝居作るとするとします。チケットが2000円だと制作費が40万円の赤字が出ない公演が打てると考えられます。

劇団って人間関係とかお金のことで無くなっていくことが多いので、まずお金の話をしましたけど、そこに作品の質であったり、お客さんがどれだけ喜んでくれたかという満足度を考えて「赤字が出たけど次もやりたいね」とか「次は儲かる舞台を作ってみようか」とか「今度はこんな作品を作るために今度は100万円掛かるからどうやってお客さんを集めましょうか」とか色んな話し合いが行われます。

――同じメンバーで、継続して公演が出来るというのが劇団なんですね。

色んな劇団の色があると思いますけど、芝居が好きじゃないと劇団の継続はしんどいです。劇団ウルトラマンションはワイワイ楽しいですけど、仲良くワイワイやっているわけではないので、お芝居が好きな役者が集まってるから継続しているのかなって思ってます。

あとは作品の方向性がデカいと思っています。例えばシェイクスピアのような悲劇がやりたい人と、ドリフのようなコントをやりたい人が、同じ劇団で長く存続していくのは難しいと思います。宝塚歌劇団さんを見ると分かりやすいと思います。劇団に一つの方向性がドンとある中でその宝塚に憧れる女優さんがどんどん入ってくる、そういうところが強いと思います。
これは、あくまでも俯瞰で考えた時の自論であり「いろんなタイプの役者がいて、様々な方向性の作品を創り、それでも継続している」ような素敵な劇団もたくさんありますが。

――例えば俳優さんだと、劇団じゃないところでも芝居をすることは可能かと思います。そうではなく、劇団として作品を作るのは全員が同じ方向性で作品作りができるというのが魅力だからでしょうか。

それはもう、どこの劇団でもそれが魅力の一つだと思います。

“劇団ってどうやって運営するの?”劇団ウルトラマンション主宰・安藤亮司氏インタビュー

――劇団の運営について色々お聞かせいただいて、特に「継続」を重きに置いてらっしゃると聞いてきましたが、これから劇団を立ち上げたい方にアドバイスがあればお願いします。

結論から先に言うと、まず「まわりの先輩に相談してください」ということです。

同じ志を持った2人が集まれば劇団だと僕は思います。最初は路上でお芝居してもいいですし、小さいイベントスペース借りてやってもいいですし。

例えば10万円しかなければ、10万円で出来るお芝居もいっぱいあるので2人で5万円ずつ貯めてイベントスペース借りて2人でやれば、最初は音響さん照明さんがいなくても良いと思います。

ただ、それだと物足りない、劇場を一週間借りてスタッフも入れてお芝居をやりたければ、まず諸先輩方に相談するのがいいのかなと思います。

初めて公演する役者さんはお金の流れや作品を作る流れに、ピンと来てない人がほとんどだと思います。だから劇団をやっていたり、もしくは制作会社で舞台を作っている方がもし周りにいたらその人たちに聞いてください。

僕はそう信じているんですけど、演劇をやっている人は、これから演劇を始めたいって人のことをめっちゃ好きなんです。「めんどくさいな」とか「教えるか!」って人はほとんどいないと思います。演劇の文化がもっともっと日本に根付いていったらいいなと思っている人ばかりなので。
                 
ですので、若い子が「演劇を始めたい。でもやり方がわからない」というのであればアドバイスをくれると思いますし、僕ももちろん最初は沢山の諸先輩たちに色々相談して始めました。

何を相談すればいいかわからない人は、「失敗談」だけでも聞いておいてください。
劇団というのは失敗の繰り返しです。とくに最初はいっぱい失敗します。
しかもその失敗が意外とドデカいです。100万単位の借金(未払い)を作っちゃうこともホントにあります。
経験者の「失敗談と解決策」を聞くだけでも、それを避ける事ができると思います。
僕が初めて公演をした時の失敗を例にあげると、小屋入り当日、舞台美術(いわゆるセット)が届きませんでした。美術に関しては誰にも相談せず、自分で調べた業者に発注して、その業者が見事に飛びました。僕の貯金も見事に飛びました。周りの方にたくさんの迷惑をかけました。
僕はこの一件で「ちゃんとした美術さんに発注しないと、小屋入りにセットが来ないこともある」という、失敗を学びました。
もちろん、美術の件を諸先輩方に相談していれば、なかった失敗だと思います。

何の知識もないままに公演をすると、負債が大きかったり、一緒にやるスタッフさんにご迷惑をおかけしたりする事もあるので、近くに先輩がいたら先輩に質問する。もしいなかったら僕に「芝居やりたいよって、何人ぐらいの役者がいてどれくらいのキャパでやりたいんですけどいくらかかるか」とか、「劇場ってどうやって予約するのか」とかDMをもらったら、全然教えます。
失敗談もいっぱい教えます。(笑)

あとは、劇団というのは往々にしてスタッフを募集しております。なので色んな劇団に連絡して、「制作のお手伝いさせてもらえませんか」とか「雑用のお仕事あればいただけませんか」とか一回現場に入ってみても良いですね。知識がなくてもできる仕事っていっぱいあるんですよ。例えばコンビニでレジができる人は受付が出来たり。このくらいのギャラが欲しいですって交渉すればもらえるところももちろんあります。手伝うって言っちゃうと手伝うという言葉におんぶに抱っこでノーギャラにされてしまうところもあると思うのでそこはうまく交渉して。

いっぱいはもらえないと思いますけど、沢山の現場のことを覚えられる本番1週間とかでもいいと思うんですよね。芸大とか専門学校に入るお金がないのであればそういった方法もあるよというのをお伝えしたいです。

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――では、まず他の劇団でお手伝いをしながら知識を吸収していくのも良いということですか?

吸収してもいいですし、「教えてくれ」って言ったら教えてくれると思います。本があれば何でも出来ますよ。本があって役者さえいれば公演は出来ます。ただ、誰かに聞いてから一歩踏み出さないと、熱だけでやっちゃうとお金で失敗する。それで辞めちゃうのも悲しいので。相談相手がいなければ僕が相手になります。

――来年で劇団ウルトラマンションは10周年になります。10周年に向けての目標や展望を教えてください。

目標はもちろん沢山ありますが、今はやはり「継続」ですね。コロナが厳しいです。その上で、「本多劇場でお芝居をやりたい」というひとつの目標があって、それに向かうにはどうしたらいいんだろうという話し合いをしたり、将来的にはYouTubeのような自分たちでできるドラマを撮りたいです。

僕は46歳なんですけど、本多劇場も20代の役者さん達がやってたりするので、目標って言い続けていると「この歳で?」と思われるかもしれないですけど・・・。10周年では難しいかもしれないけど近い将来やれるように進めていきたいです。誠実に頑張れば僕らだったら出来ると思っています。

でも今はやっぱり「継続」です。今この時期は継続で精一杯です。でもいい事もありまして、コロナになって演劇を配信するっていう文化が根付きつつあります。「舞台に初めて行くのはちょっと尻込みしていたけど、配信で観てみて、コロナが終わったら行ってみようと思います。」とお言葉をいただいたり。演劇に入りやすくなったから、今は生き長らえる活動をしながら、劇団のこと、演劇のことを沢山知ってもらえるような活動をする10周年にしていけたらと思います。

(取材・文:エンタステージ ライター講座受講生)

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公演情報

◆WaVe’S 公演『不咲息子~さかずきっず~』(脚本・演出)
2023年3月22日(水)~3月26日(日)
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=70591&

◆東京舞台製作朗読公演『meaning』(脚本・演出)
2023年3月29日(水)~4月 2日(日)
https://tokyo-stage.com/meaning/top

◆Music Inspired Stage 舞台『again〜 手が届きそうな遠い未来に 〜」(脚本・演出)
2023年5月3日(水 )~5月7日(日)
https://ticketstage.jp/tritops/haru/

劇団公式サイト

http://ultramansion.net/

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