吉田鋼太郎、小栗旬、吉原光夫らが彩の国シェイクスピア・シリーズのラストを飾る『ジョン王』レポート


吉田鋼太郎による演出、小栗旬の主演舞台、彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』が、20221年12月26日(月)に東京・Bunkamuraシアターコクーンにて開幕した。1998年のスタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもとでシェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指してきた彩の国シェイクスピア・シリーズ。その芸術監督を引き継いだ吉田鋼太郎によって、この『ジョン王』でシリーズ真の完結を迎える。

物語の舞台は、イングランド。王であるジョン(吉原光夫)の下へ、先王リチャード1世の私生児だと名乗る口達者な男が現れる。ジョンの母エリナー皇太后(中村京蔵)はその私生児・フィリップ・ザ・バスタード(小栗旬)を親族と認め従えることを決める。そこへフランス王フィリップ2世(吉田鋼太郎)からの使者がやってくる。ジョンは、正当な王位継承者である幼きアーサーに代わってイングランド王となっていたが「王位をアーサーに譲り、領地を引き渡すよう」に要求しにきたのだ。それを拒んだジョン王は、私生児を従えてフランスと戦うために挙兵する。

まんまと王族の仲間入りをした私生児は、権力者たちの愚かなふるまいを鼻で笑いながらも、戦争へと巻き込まれていく。アーサーの存在が疎ましいジョン王は、腹心の臣下であるヒューバート(高橋努)に、恐ろしく非情な命を下す。この決断が、ジョン王と私生児の運命を大きく狂わせるのだった。権力者の思惑に振り回され、世界は混迷を極めていく――。

上演される機会が非常に少なく“幻の歴史劇”と呼ばれる本作を、今の日本の観客にいかに届けるべきか。腐心した吉田がテーマと捉えたのは、本作が全編に渡り描いている“国と国との戦争”。本来であれば2020年6月に上演される予定だった『ジョン王』は、世界を襲った災厄により延期となっていた。奇しくも“戦争”が強く意識されることになった2022年の年末に開幕することとなった偶然を“必然”と捉え、本作の演出構想を一変させたという。今秋に再演されたシリーズ第36弾の『ヘンリー八世』とは全く異なる世界観を演出し、吉田の演出手腕の幅広さと、強いメッセージを感じる作品となった。

主演として、ジョン王の兄でリチャード獅子心王の私生児フィリップ・ザ・バスタード役を演じるのは、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が最終回を迎えたばかりの小栗旬。40歳になったばかりの小栗が、10代から舞台に立ち続けた彼だからこその多彩な表現で、一人の青年が出生の真実を知り王族となって戦争に足を踏み入れていく様を演じる。

1993年に吉田も演じたこの役はシェイクスピア作品の見せ場である独白が多い難役だが、小栗は16年ぶりのシリーズ参加というブランクを感じさせない緩急のある台詞回しで言葉を的確に客席へ届ける。台詞だけでなく、殺陣や、とある演出でも観客を魅了し物語へ引き込んでいく。

東京公演でジョン王役を演じる吉原は、本作がシェイクスピア作品初挑戦。ミュージカルで培った華々しい存在感がタイトルロールにぴたりとはまるだけでなく、こまやかな芝居が人間的魅力にあふれ、一国の主の傲慢と虚勢と弱さをあぶりだしていく。

演出の吉田はフランス王役として出演も。シェイクスピアの言葉一つ一つを真に理解しようと心を砕き口にするその台詞からは、観客が受け取るべき真実が見えてくる。

約400年前に描かれた本作と現代を結びつける構造を加え、かつて若者がメッセージを込めて歌ったフォークソングが流れる、吉田の用意した演劇的な仕掛けに、心を揺さぶられてエンディングを迎えるだろう。

彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』は、2023年1月22日(日)まで東京・Bunkamuraシアターコクーンにて上演後、愛知・大阪・埼玉を巡演する。上演時間は1幕80分、休憩20分、2幕80分、計3時間を予定。

なお、本公演では水を使用した演出が用いられている。座席位置によっては若干水がかかる可能性があることを承知の上、ご来場を(座席にシートの用意あり)。

また、1月17日(火)13:30公演は「リラックス・パフォーマンス公演」として、劇場空間での観劇に不安がある方や観劇が初めての方にも安心して楽しんでもらえるようにと、様々な取り組みが実施される。詳細はこちらでご確認を。

(撮影/宮川舞子)

コメント紹介

◆吉田鋼太郎

いよいよ彩の国シェイクスピア・シリーズ最後の作品『ジョン王』が開幕いました。
主演に小栗旬くん、ジョン王役に吉原光夫さんを迎え、非常に中身の濃い作品となっております。
また、滅多に上演されることのないレアな作品でもあります。この機会をお見逃しなく。
様々な衝撃を、色々な想いを、皆さんの胸に送り込むことが出来るのではないかと思っております。
ぜひ楽しみにしていらしてください。

今回はリラックス・パフォーマンスという新しい試みも行います。芝居の中身はいつも通りに、幅広く、色々な方に観ていただけたら幸いです。

色々なサポートも用意されているようなので、ぜひ利用してみてください。

◆小栗旬(主演)

今ゲネプロを終えて、なんと口にしていいかまだまとまらないけれど、とにかく高カロリーな芝居です。
「何を見せられているんだろう」と戸惑う瞬間もあるかもしれません。
僕たちはとことん真面目に、今あるこの世界の中で『ジョン王』という物語を上演したらどうなるだろう、どうすべきだろう、と皆で向き合って創った作品なので楽しんでもらえたら嬉しいです。
また、今回はリラックス・パフォーマンス公演もあります。
初めての試みで、俳優陣にとってもどんなことになるのかドキドキする部分もありますが、普段は演劇を観に行くことに躊躇してしまう方々にも、気楽に一つの娯楽として楽しんでいただける機会になれば、とても良いことだなと思っています。

当日券:
開演の1時間前より【当日券窓口】にて先着順にて販売いたします。当日券のお支払いは現金のみとさせていただきます。また、購入はおひとり様1枚までとさせていただきます。
※Yシート、イベント割当日引換券の取り扱いはございません。

立見券:指定席完売後、立見券を販売いたします
中2階立見:4,500円/2階立見:3,000円
※2階立見券は中2階立見券が予定枚数終了次第の販売となります。

彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』公演情報

上演スケジュール

【東京公演】2022年12月26日(月)~2023年1月22日(日) Bunkamuraシアターコクーン

【愛知公演】2023年1月26日(木)~1月29日(日) 御園座
【大阪公演】2023年2月3日(金)~2月12日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【埼玉公演】2023年2月17日(金)~2月24日(金) 埼玉会館

スタッフ・キャスト

【作】W.シェイクスピア
【翻訳】松岡和子
【演出】吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)

【出演】
小栗旬 吉原光夫

中村京蔵 玉置玲央 白石隼也 高橋努 植本純米 間宮啓行 廣田高志 塚本幸男 飯田邦博 坪内守 水口テツ 鈴木彰紀 堀源起 阿部丈二 山本直寛 續木淳平 大西達之介 松本こうせい 酒井禅功/佐藤凌(Wキャスト) 五味川竜馬

吉田鋼太郎

<演奏>
サミエル 武田圭司/渡邊達徳 熊谷太輔/渡辺庸介

※東京公演は他都市の公演と出演者・配役が一部異なる
愛知、大阪、埼玉公演出演者・配役は、
ジョン王:吉原光夫→吉田鋼太郎
フィリップ2世:吉田鋼太郎→櫻井章喜

公式サイト

【劇場サイト】https://www.saf.or.jp/
【ホリプロステージ】https://horipro-stage.jp/stage/kingjohn2022/
【彩の国シェイクスピア・シリーズ公式Twitter】https://twitter.com/Shakespeare_sss







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