阪本奨悟、松田凌らが見せる未来への渇望――西田大輔の音楽劇『まほろばかなた』レポート


2022年11月6日(日)まで、東京・天王洲 銀河劇場にて音楽劇『まほろばかなた』が上演中だ。本作は、西田大輔が作・演出を手掛けるオリジナル作品。阪本奨悟、糸川耀士郎、和合真一、廣野凌大、松田凌らが、“まほろば”を目指した志士たちの熱き姿を「芝居」と「音楽」で浮き彫りにしている。

時代は、騒乱の幕末。港に、突如異国の軍艦が二隻現れ、大混乱を巻き起こす。騒ぎをよそに、三味線を抱えて“まほろば”について語るたいそう不思議な男がいた。男の名は、高杉晋作(阪本)。

新たな時代を夢見る男の周りには、志を同じくする男たち・・・山縣狂介(糸川)、大村蔵六(和合)・伊藤春輔(廣野)・桂小五郎(松田)が集い、女たちが見守り、支える。彼らが目指した“まほろば”とは何だったのか――。

本作は、2014年に舞台『まほろばかなた -長州志士の目指した場所-』のタイトルで上演されている。今回は、数多くの舞台音楽を手掛けるYOSHIZUMIの音楽を加えて、「音楽劇」として初演とはまた趣の違う作品に仕上げた。

作・演出の西田は「俳優が変われば物語が変わると常々思いながら、稽古ではみんなに一人の人間として胸が震える気持ちを大事にしてほしいと伝えてきました。俳優たちが繊細に作り上げてくれる時間は、とても尊いものだったと思います。さらにYOSHIZUMIさんの音楽が物語と同時に心情や歴史を美しく彩ってくれて、想像を上回るほど、大地が見えるような作品になったと、とてもわくわくしています」と語る。

西田が本作の中心に据えたのは、第二次長州征伐において、十五万の幕府軍にわずか四千人で勝利した長州藩士たち。その渦の真ん中に立つ男は、「面白き こともなき世を 面白く」の辞世の句が有名な高杉晋作。この男、とにかく飄々としていて、掴みどころがない。多くは語らないが、その目ははるか先の未来を見据えている。阪本のまっすぐな歌声とくもりなき笑顔は、高杉が繰り返す“まほろば”の言葉に希望の火を灯す。

対照的なのが、松田演じる桂小五郎だ。桂小五郎といえば、「維新の三傑」の一人であり、のちの木戸孝允である。松田は、以前に山口県の萩にある桂小五郎の生家を訪問したことがあるという。「彼は『死而後已(ししてのちやむ)』という言葉を家に書き残しています。この言葉には『死ぬまで努力を続ける』など、様々な意味が込められていますが、その言葉に泥を塗りたくないという一心で演じさせていただきます」と、その役作りは深い。

葛藤や苦悩に満ちる若き日々を、言葉なくとも雄弁に語る姿には、その思いの強さがにじむ。特に、前半と後半の殺陣の変化には目を見張るものがあった。後半、覚悟を決めた太刀筋からは、本当に目の前のものを叩き切ってしまいそうな気迫に満ちていた。

そして、糸川演じる山縣狂介(のちの山縣有朋)、廣野演じる伊藤春輔(のちの伊藤博文)、和合演じる大村蔵六(のちの大村益次郎)が、コミカルな振る舞いで物語にふっと「緩」をもたらしながらも、それぞれの人物の「志」を芯に持つ。まっすぐ猪突猛進だった山縣の成長、弱さを隠さない伊藤の信念、医者として無謀な男たちを見守る大村の冷静さと、それぞれのキャラクターが際立ち、心を惹く。

さらに、勝海舟役の根本正勝と吉田松陰役の中村亀鶴の二人の対峙は、時代を動かす男たちとして物語に重みを持たせている。この二人の存在の大きさがまた、長州藩士たちの若さと情熱をあぶり出すのだ。

本作を語るにおいて欠かせないのが、のちの偉人たちを支えた女性の存在。高杉晋作の妻となるお雅(富田麻帆)、吉田松陰の妹・文(田上真里奈)、高杉晋作の愛妾となった芸鼓・おうの(本西彩希帆)、伊藤春輔の最初の妻・すみ子(平井琴望)桂小五郎の恋人・幾松(律)と、時代を生きた女性たちの生き様が、潔く、格好良く描かれている。

西田作品といえば激しい殺陣が特徴だが、本作ではお雅役の富田も刀をふるっている。力強さと、女性ならではのしなやかさを兼ね備えたその殺陣は、本作の女性たちの強さを象徴しているようだった。

「面白き こともなき世を 面白く」

そんな信念を掲げた男が追い求めた“まほろば”とはなんだったのか。主演を務める阪本は、本作について「2022年の現代に生きる僕でも、100年以上前に生きた人々の、命を惜しまず思想を貫くために戦っている姿に胸を打たれます」と語っていた。「“まほろば”とは」という問い掛けに対する答えは、国を想い、未来を憂い、大和魂を胸に戦った人たちが繋いだ今の、私たちの中にそれぞれあるのかもしれない。何かを貫く哀しさと希望に、泣き笑う。かなたへ想いを馳せ、生きることへの感謝が湧き上がるような、そんな清々しい群像劇だった。

音楽劇『まほろばかなた』は、11月6日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて上演。上演時間は約3時間5分(途中休憩15分を含)を予定。

なお、千秋楽となる11月6日(日)14:00公演では、動画配信サービスDMM.comにてライブ配信が行われる。配信には、初日公演の舞台裏潜入映像が特典として付く。後日視聴できるディレイ配信や、アーカイブ配信もあり。
※ライブ配信・ディレイ配信は【イベント割対象】となり、通常価格の20%OFFで購入可能

なお、本公演のBlu-ray・DVDの発売予定はないとのこと。お見逃しなく。

DMMの配信はこちら

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

配信情報

【配信日】11月6日(日)14:00千秋楽公演

ライブ配信

【販売価格】2,960円(税込)
※イベント割対象価格(通常価格3,700円から20%OFF)
【販売期間】2022年10月30日(日)12:00~11月13日(日)21:00
【配信期間】
ライブ配信:2022年11月6日(日)13:30~上演終了まで
ディレイ配信:2022年11月7日(月)18:00~11月13日(日)23:59

アーカイブ配信

【販売価格】3,700円(税込)
【販売期間】2022年11月19日(土)12:00~12月2日(金)23:59
【視聴期間】購入から7日間

特典映像

配信限定公開&初日公演 舞台裏潜入映像
※ライブ配信とアーカイブ配信は同様の特典映像(初日公演 舞台裏潜入映像)付き

【特典映像配信期間】
ライブ配信:11月6日(日)16:00~11月13日(日)23:59
アーカイブ配信:購入から7日間

購入特典

抽選で3名様に全キャストの直筆サイン入りパンフレットプレゼント
※購入特典はライブ配信、アーカイブ配信どちらも対象

音楽劇『まほろばかなた』公演情報

上演スケジュール

2022年10月28日(金)~11月6日(日) 東京・天王洲 銀河劇場

【作・演出】西田大輔
【音楽監督】YOSHIZUMI

【出演】
高杉晋作役:阪本奨悟 山縣狂介役:糸川耀士郎 大村蔵六役:和合真一 伊藤春輔役:廣野凌大/
勝海舟役:根本正勝/お雅役:富田麻帆 文役:田上真里奈 おうの役:本西彩希帆 すみ子役:平井琴望 幾松役:律/吉田松陰役:中村亀鶴/桂小五郎役:松田凌

<アンサンブル>
書川勇輝 本間健大 田嶋悠理 田上健太 中土井俊允
大塚晋也 木村つかさ 平山ひかる 樽谷笑里奈 福田結希

【公式サイト】https://www.marv.jp/special/mahorobakanata/
【公式Twitter】@mahorobakanata

(C) 音楽劇『まほろばかなた』2022






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