ミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~レポート――インフェルノの先で「命」に寄せた想い


2021年11月25日(木)に、宮城・多賀城市民会館 大ホールにて大千秋楽を迎えたミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~。本記事では、刀ミュのミュージカル本公演第7弾として、刀剣男士たちが“歴史を守る”という業と命への想いを馳せた物語と、大きく成長を遂げた俳優たちの様子をレポートする。

ミュージカル『刀剣乱舞』~静かの海のパライソ~開幕!「この物語を背負わせていただきます」

もともと昨年3月に予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、わずか7公演のみで中止となっていたこの「静かの海のパライソ」。物語ることを渇望し続けたカンパニーは、着実に悔しさを力へと変えていた。

本作で描かれる任務に向かう編成は、鶴丸国永(岡宮来夢)、大倶利伽羅(牧島輝)、浦島虎徹(糸川耀士郎)、日向正宗(石橋弘毅)、豊前江(立花裕大)、松井江(笹森裕貴)の6振り。浦島虎徹、日向正宗、松井江がミュージカル本公演に登場するのはこの作品が初となった。

今回、隊長に任命されたのは鶴丸国永。主より、出陣先が島原であることを告げられた鶴丸国永は、「編成を任せてほしい」と申し出て、集めた5振りを率い出陣する。歴史修正主義者の狙いは「島原の乱」か・・・?そう思った矢先に、歴史上では一揆を画策していた中心人物の一人・天草四郎となるはずの少年が、時間遡行軍によって殺されてしまう。

刀剣男士たちに課せられた任務は、歴史の流れを史実通りに守ること。鶴丸国永は、亡くなった少年の胸にあったロザリオを自らの首にかけ、「天草四郎を演じる」という選択をする。

浦島虎徹と日向正宗にも“天草四郎”を名乗らせ、捕らえたもう一人の首謀者・山田右衛門作(中村誠治郎)と共に、圧政に苦しむ島原の民衆たちの心を束ねていく。史実に近づけようと画策する刀剣男士たちの動きにより、一揆勢力は3万7千人にまで膨れ上がり原城を奪うに至り、鶴丸国永は、豊前江、松井江に隊長として別の指示を与える。やがて史実通りに一揆勢は幕府軍に攻め込まれ・・・。

「パライソ(キリシタン用語で天国・楽園を意味する)」をタイトルに冠しながらのインフェルノ。本作に、「刀剣乱舞-ONLINE-」で敵とされる“歴史修正主義者”が送り込んだ”時間遡行軍”はほとんど出てこない。刀剣男士と人の物語であり、歴史の先を知っている私たちにとってはとても辛い物語だった。それ以上に、刀剣男士に課せられた“歴史を守る”という任務の意味、刀剣男士の中に励起された“心”に想いを馳せずにはいられない。

物語の中心となった鶴丸国永は、ミュージカル本公演では「葵咲本紀」以来の登場。演じる岡宮の若さと底知れぬポテンシャルから生まれた刀ミュの鶴丸国永は、物語を背負う覚悟に満ちた存在となっていた。作品の中で、鶴丸国永は読めない言動を繰り返す。それでいて、実にあっけらかんと“史実”に近づけるために物事を進めていく。笑顔と明るい立ち居振る舞いの裏、山田右衛門作役の中村、松平信綱役の吉川純広ら歴史上の人物と向き合う時に垣間見える「心」の重み。

ミュージカルの大作や2.5次元舞台の主演を経験し、岡宮自身が着実に深めてきた表現力がいかんなく発揮されているは言わずもがな。冷たさの中に燃える怒り、自らを憎まなければならないほど募る憤り、命を奪う存在になりうる現実と理想との矛盾。ひとり叫ぶシーンに乗せた本心。岡宮は、台詞以上に物語る“俳優”という肉体を「鶴丸国永」という役に明け渡し、物語をより深いところまで導くことに成功していたように思う。

そして、すべて一人で背負おうとする鶴丸国永を支える立場となっていたのが大倶利伽羅だった。大倶利伽羅役を演じる牧島もまた、大舞台を踏み経験を蓄えてきた。この物語の大倶利伽羅も「三百年の子守唄」を経験し、感情を自らの中に蓄えてきた。島原で出会った兄弟(兄:横山賀三、弟:中村琉葦)と絆を深める浦島虎徹に忠告したシーンのように、過去の経験によって知った感情の大きさを伺える場面がそこかしこから感じられた。

大倶利伽羅の決して多くない言葉に滲ませた優しさと、そこに存在する意味を牧島がしっかりと体現したことで、物語を下支えしていた。物語の後半、鶴丸国永と大倶利伽羅が2振りで歌う「静かの海」は、岡宮と牧島の深みを増した歌声が、今も耳に残る。

二人の背中に、ほかの刀剣男士キャストたちも引っ張られていく。浦島虎徹役の糸川、日向正宗役の石橋が見せた純粋さ、松井江役の笹森が纏う因縁とそれを支える豊前江役の立花の間に見えた「江」のチーム力。つらさを分かち合おうと、常に誰かが誰かの傍に寄り添った。若い俳優が集っているからこそ、作品も、役も、俳優も、すべてが響き合って、辿り着いた「静かの海のパライソ」大千秋楽。足掛け1年8ヶ月、彼らが心血を注いできた物語が無事に幕を下ろした。

刀ミュと言えば、丁寧に物語を紡ぐ1部のミュージカルパートと、2部のライブパートのギャップも魅力の一つ。新曲「揺ら揺らら」をはじめ、松井江による「Supernova」、大倶利伽羅・豊前江による「Yellow Sac Spider」、浦島虎徹・日向正宗による「Be Cool!!」、鶴丸国永による「In My Groove」など、それぞれの個性が発揮された楽曲が披露された。また、「静かの海のパライソ」の物語を経た歴史上の人物たちが歌う「戦うものの鎮魂歌−レクイエム−」は、これまでにどの刀剣男士の組み合わせで歌ったのとも違う味わいに。

人が紡いだ時間が歴史になるように、刀ミュもまた、公演を重ねるごとに「刀剣乱舞」というメディアミックスコンテンツの中で独自の歴史を積み重ねている。人気キャラクターを演じるという責任感のもと、爆速で成長していく若手俳優たちを見守る楽しみ。登場する刀剣男士たちの関わり合いから広がる関係性。物語の行く末を見届けたいと思わせる力。刀剣男士が守ろうとしているように、過去は変えられないけれど、未来は今動くことでいくらでも変えることができる。観た者が物語の中から掬い上げた想いはきっと、あなたの「パライソ」へと導いてくれる。

6周年を迎えたミュージカル『刀剣乱舞』シリーズは、2022年1月から3月にかけてシリーズ本公演9作目となるミュージカル『刀剣乱舞』 ~江水散花雪~の上演が控える。さらに5月からはアリーナツアーとして福井・愛知・大阪・宮城・福岡・東京で「真剣乱舞祭2022」を開催する予定だ。2年に渡り日本全国を巡っている「にっかり青江 単騎出陣」は、春公演として2022年2月25日(金)から3月27日(日)に、沖縄、長崎、佐賀、山口、京都、兵庫、岐阜、静岡、神奈川、群馬、栃木、青森、宮城の13都市を訪れる。

また、「静かの海のパライソ」大千秋楽のカーテンコールでは、2022年夏に鶴丸国永と大倶利伽羅による「双騎出陣」が行われることも発表された(この発表のための特別演出は11/25 18時大千秋楽公演のディレイ配信で視聴可能/11月29日まで)。今後の刀ミュの展開にも注目だ。

ミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~は、ライブ配信を購入した方はディレイ配信を視聴できるほか、Blu-ray&DVDが2022年夏に発売されることが決定している。2022年2月21日(月)23:59まで公式通販3社にて受付中。販売価格はBlu-ray9,350 円(税込)DVD8,250円(税込)。

【予約特典A付き】ミュージカル『刀剣乱舞』 〜静かの海のパライソ〜 (ブルーレイディスク)
【予約特典B付き】ミュージカル『刀剣乱舞』 〜静かの海のパライソ〜 (ブルーレイディスク)

(取材・文/エンタステージ編集部 1号)

ミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~公演情報

上演スケジュール

【東京公演】2021年9月27日(月)~10月3日(日) TOKYO DOME CITY HALL
【福岡公演】2021年10月15日(金)~10月16日(土) 北九州ソレイユホール
【大阪公演】2021年10月22日(金)~10月24日(日) 梅田芸術劇場 メインホール
【東京凱旋公演】2021年10月30日(土)~11月7日(日) TOKYO DOME CITY HALL
【宮城公演】2021年11月20日(土)~11月25日(木) 多賀城市民会館 大ホール(多賀城市文化センター内)

スタッフ・キャスト

【原案】「刀剣乱舞-ONLINE-」より(DMM GAMES/Nitroplus)
【演出】茅野イサム
【脚本】伊藤栄之進
【振付・ステージング】本山新之助 桜木涼介 當間里美 DAZZLE

【出演】
鶴丸国永役:岡宮来夢
大倶利伽羅役:牧島輝
浦島虎徹役:糸川耀士郎
日向正宗役:石橋弘毅
豊前江役:立花裕大
松井江役:笹森裕貴

松平信綱役:吉川純広
少年・兄役:横山賀三
弟役:中村琉葦
山田右衛門作役:中村誠治郎

岩崎大輔 村中一輝 大野涼太 鴻巣正季 杉山諒二 服部悠 篠尾佳介 花見卓也
市川裕介 伊達康浩 白濱孝次 塚田知紀 寒川祥吾 佐伯啓 佐藤丈
千葉恵佑 千大佑 白金翔太 山川大貴 大平祐輝 有沢優兎

【ミュージカル『刀剣乱舞』公式サイト】https://musical-toukenranbu.jp/
【ミュージカル『刀剣乱舞』公式Twitter】@musical_touken

(C)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

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