音楽座ミュージカル『SUNDAY』東京公演開幕!「まるで映画」な舞台映像配信も


音楽座ミュージカル『SUNDAY(サンデイ)』の東京公演が2020年12月19日(土)東京・草月ホールにて開幕。初日前にはゲネプロと囲み会見が行われ、ジョーン役の高野菜々、レスリー役の森彩香、ゲッコー役の広田勇二が登壇した。

原作は、アガサ・クリスティーが自らの名前を伏せてメアリ・ウエストマコット名義で発表した「春にして君を離れ」。やさしい弁護士の夫と3人の子に恵まれ、理想的な家庭を築き上げてきたことを誇りに思ってきた女性が、娘の看病の帰りに砂漠で足止めをくらい、ある真実と向き合う物語である。

高野は自身の役について「自分のことを良妻賢母であり、自分のおかげで家庭がうまくいっていると信じている女性です」と説明。

本作はコロナ禍での上演となったが「稽古は今年の1月に始まったのですが、本来であれば初夏にすべての公演を終えるはずでした。ですが延期や中止が続き、この1年間ずっと『SUNDAY』に取り組んでいたような気がしています。この東京公演をもって大千秋楽となりますので、カンパニー一同この公演にかける思いはとても大きいですし、足を運んでくださるお客様はとてもありがたいな、と思います。この作品は私の希望でした」と稽古期間を振り返るとともに、感謝を述べた。

広田曰く高野は「ジョーンみたいな人なんです」とのこと。これを受けて高野は「ジョーンは家庭に場を張っているという思いがあるのですが、私は音楽座ミュージカルを責任を持ってもっと良くしていきたい!と思っていて。そういう意味では、この気持ちはジョーンを演じるうえでとても役に立ちました」と熱意を持って語った。

ジョーンが理想とする生き方の真反対を貫いた女性レスリー。演じる森は「理屈では生きておらず、人からどう思われるかと言うよりも、自分がどう思って、自分がどう受け入れていくかを大切に思っている女性です。理屈で生きてない人って、与えられた人生にとらわれていないんです。なので、“やらなきゃ”“こうしなきゃ”がなく、ただこの瞬間を生きるしかないという捨て身の人生を生きるのは大変でした」と役作りへの苦労もあわせてコメント。

自粛期間中はオンラインでのプロジェクトも挑戦したことに触れ「(オンラインは)お客様が目の前にいるわけではないので、発信することばかり考えていたのですが、ゲネでは自分が発したエネルギーが、お客様から返ってきて循環して・・・。力を与えていただきました」と語った。

ゲッコー役の広田はジョーンの影的存在。彼女の考えていることや言動などを俯瞰し、心に語り掛ける。広田はゲネプロを終え「お客様の前で演じられることが、こんなに嬉しいことだとは」と笑顔を見せた。

広田は開幕直後のとあるシーンで、劇場の静寂を打ち破る役目も担っている。これについては「テーマ設定を最初にぽん、と打ち出すことで、この後のドラマの流れを見せている部分もあります」と説明した。

高野、森、広田の3人は2018年の公演から、同じ役を演じ続けている。高野は「2008年に音楽座ミュージカルに入団して、初演でオリジナルの主人公を演じたのはこの作品が初めてでした。なのでとても思い入れの深い作品です。ジョーンは40後半の役ですし、自分の実年齢とも相当かけ離れているので、2018年に演じたときにはすごく難しい役だなあと思いながら、勢いのまま演じさせてもらいました。

なので今回、どうやったらもっと役を深められるかを考えていたのですが、最後の演出が大きく変わったことがヒントになりました。今回は、きっとどこかに希望にあるよ、というような夢物語ではなく、正しいことや美しいものばかりではない世の中で“人がどうやって生きていくか”が描かれていますし、演出家チームともディスカッションを重ね、お客様にどういった部分に共感してもらえるかを考えてきました」とこれまでを振り返った。

広田は「出ているシーンは多いのですが、自分から発信することが少ないキャラクターなので、高野さんが変化したことに合わせて、自然と自分も変っていきました。彼女は毎公演変化し続けているので、いつも新鮮に受け取っています」とコメント。

「2回目だから前よりも理解が深まってできるようになったかと言うと、そういうことではないんです(笑)」と笑いを取りつつ森。「この壁にぶちあたりました。できなすぎて、あの手この手を尽くして、もうこれ以上やれることがない、と思った時に、ダメ出しやアドバイスを受け取る際にも、役の心でキャッチしてみたんです。言われたことや起きたことに対して真っすぐ受け取り、そしてアウトプットする・・・。それをやっているうちに、人が働きかけてくれている中にある願いって何だろう、ということを見つける癖が付き、それが自分を大きく変えてくれました」と語った。

今回の公演を語るうえで欠かせないのは、通常客席からでは観ることができないような視点から作品が楽しめる舞台映像のオンライン配信。『SUNDAY』の配信は、引きで全体を映しただけであったり、複数台のカメラでとらえただけものとは違い、ジンバルカメラを駆使した作り手側の「今、ここを観てほしい!」が迫力とともに伝わる映像になっている。

この配信映像のためだけに同じシーンを7回以上繰り返したりなど、苦労が詰まった配信の出来栄えはまるで「映画のよう」とのこと。最前列よりもさらに前の始点で楽しめるため、自分がまるで舞台上のキャラクターになってしまったかのように没頭、没入できる映像となっている。

会見の最後には、それぞれが意気込みやメッセージを語った。「今だからこそ観ていただき、様々なことを感じていただければ。来てよかった、観てよかったと思っていただけるよう心を込めてがんばります」(高野)、「配信を機会に、ぜひ音楽座ミュージカルをもっと知っていただけたらと思います」(広田)、「肌も細胞も魂も震えるような体験をしていただけたらと思います。この作品が皆様の人生の一部になれば幸いです」(森)。

公演情報

【東京公演】12月19日(土)・12月20日(日) 草月ホール
※大阪、愛知公演は終了しました

【出演】
ジョーン:高野菜々
レスリーほか:森 彩香
ブランチ:井田安寿
ギルビー・乗客の女ほか:清田和美
バーバラほか:岡崎かのん
エイヴラルほか:北村しょう子
シシャほか:尾関そら
シシャほか:兼崎ひろみ
シシャほか:後藤さつき
シシャほか:酒井紫音
シシャほか:辻 凌子
シシャほか:冨永波奈
シシャほか:野田ゆかり
シシャほか:姫本梨央
シシャほか:毎原 遥
シシャほか:大西 碧
シシャほか:吉田知夏
   
ゲッコー:広田勇二
ロドニー:安中淳也
チャールズほか:新木啓介
ウィリアムほか:上田 亮
トニーほか:林 芳弥
給仕(インド人)ほか:小林啓也
使用人(アラブ人)ほか 五十嵐進
コックほか:佐藤伸行
シシャほか:大須賀勇登

【公式サイト】http://www.ongakuza-musical.com/works/sunday

配信情報

【配信日時】2020年12月28日(月)19:00開始
【アーカイブ】2021年1月3日(日)22:00まで
【上演時間】約2時間30分
【視聴料金】4,400円(税込)
【視聴チケット発売開始】11月20日(金)12:00〜
※2021年1月3日(日)19:00まで購入可能

【販売・配信場所】イープラス「Streaming+」
【URL】https://eplus.jp/ongakuza/

あらすじ

弁護士の妻として子どもたちを立派に育て上げたジョーン・スカダモアは、バグダッドに次女バーバラを見舞った帰り、ひどい雨に降られて砂漠に足止めをくらってしまう。砂漠の強い日差し、薄暗いレストハウス、本も読み尽くして話す人もなく、やることもなければ食べるものも缶詰ばかり。退屈な日々の中でジョーンは、自らの「素晴らしい」人生を思い出す。美しく塗りこめられた思い出は、時間とともに少しずつ真実の姿をさらけだし、やがて・・・。

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