ボイスドラマ『灰とカセットテープ』インタビュー!稲垣成弥が追求する“嘘”のない芝居


ドワンゴジェイピー オーディオブックより配信されているボイスドラマ×音楽連動企画『灰とカセットテープ』。本作は、『読奏劇』などを手掛けた株式会社ドリームラインが制作する、物語と音楽が交錯するデジタル音声コンテンツとなっている。

出演は、小西成弥稲垣成弥。表舞台から姿を消したミュージシャンによって語られる“ある曲”を巡る音声記録を、二人が声だけで演じていく。小西に続いて、稲垣に収録の様子を聞いた。

『灰とカセットテープ』あらすじ

『1999年。そのカセットテープに残っていたのは、懐かしい歌声だった。』
表舞台から姿を消したミュージシャン・倉津フミヤ(小西成弥)によって語られた、“ある曲”を巡る日々の音声記録。それを入手したかつてのバンドメンバー、折原翔(稲垣成弥)によって紐解かれていくフミヤの秘められた想い。時代を交錯して織り成される、青春の埋葬と昇華の物語。

稲垣成弥が『灰とカセットテープ』に抱いた印象

――録音がすごく順調だったと伺いました。

そうみたいです、本当によかった。

――プロデューサーさんが、台本が出来上がって「翔」という役を誰にお願いしようかと探していた時に、稲垣さんのYouTubeチャンネルを見て、ピッタリだと思ったそうですよ。

YouTube見てくださってたんですね!ありがとうございます。僕も、本をいただいて初めて読んだ時、すっと感情が通ったんです。収録に入る前に、台本を読み込むんですけど、気持ちの上で引っかかることはなく、「翔」として言いにくい台詞だけ確認していこうというぐらいで、あとは当日のディレクションに委ねようと、フラットな感覚で収録に臨めました。

――稲垣さん的に、好きな物語でした?

そうですね。個人的にも好きでしたし、入り込みやすい作品でした。たぶん、コメディよりも、シリアスなテイストの物語の方が馴染みやすいんだと思います。

――稲垣さんが演じる「翔」は、小西さん演じるフミヤの元バンドメンバーで、今は音楽プロデューサーになっている、という役どころです。演じる上で、心に留めていたことはありますか?

気持ちだけ決めてきた、という感じでした。録音を始める前に、一度本を全部読み返す時間をもらったりいただいたり、「フミヤ」の録音を少し聞かせてもらったりいただいたりして、そういう時間を少しもらって、自分の中で出来上がっていた「翔」という人物の方向性を改めて確認してから、録音に入りましたね。

声だけの芝居になりますから、ぽろっともれる囁きのようなトーンでマイクが声を拾ってくれるのかとか、声の出し方はいろいろ考えました。今回、スタジオで座って収録させてもらえたんですよ。録音って、立ってやる場合もあるじゃないですか。だから、マイクの前に座ってじっくり録るスタイルで演じさせてもらえたことは、自分としても役と物語に没入できた気がします。

この物語の台詞って、誰かに聞かせるためのものじゃないと思うんですよ。うまく伝わるかな。もちろん、聞いていただくものではあるんですけど、誰かに聞いてもらうことを意識して出てきている言葉ではない。だから、自分の中から湧き出る感情のままに、声が小さかろうが、嘘はつかないようにしゃべることを考えていましたね。

――声だけでの芝居だからこそ、意識したことはありますか?

細かい役作りというよりも、気持ちが大事かなって。声だけで聞くと、嘘って顕著になると思うんです。今回、表情とかは見せられないじゃないですか。だからこそ、嘘をつかないように。例えば、台詞の語尾とか。「翔」の語尾の癖については、一つ考えがあったので、僕から提案させていただきました。それを受け入れていただけたので、よりすんなりできた気がします。

――舞台でのお芝居との違いについてはいかがですか?

実は、そういう違いはあんまり考えていないんですよ(笑)。こういうと語弊があるかもしれないんですけど。どういう表現でも「今、絶対その言葉が出るシチュエーションや感情じゃなかったよね・・・」って受け取られてしまったら、それは「嘘」なわけで。

芝居をする上で一番必要なことって、僕は「気持ち」だと思うんです。楽しくないのに楽しいって見せても、音だけで楽しいって言っても、心が伴ってないとそんなに響かない。僕の中で「なんか気持ち悪いな」と感じた台詞は、嘘をついているんですよ。だから、その感覚を潰していくっていうのが、どんな芝居でも大事にしていることです。

――聴覚だけに限定される本作は、稲垣さんが大事にしているお芝居をダイレクトに受け取れるのかもしれないですね。そういう点でも、楽しみが増します。

待って、ハードル上げてしまった(笑)! まあでも、嘘はついていないので。この役は、楽しさというよりも、気持ちの面での辛さやキツさを感じることが多かったんですけど、「こうしよう」と決めきるのではなく、スタジオで台本と向き合った時の気持ちと空気感が伝わるものになっていたらいいなと。

TAPE1では、「少しドライに」というディレクションがあったので、あまり感情を入れずストーリーテラーとして進めていっています。だから、TAPE2、TAPE3と進むにつれて気持ちのレベルが変わっていくのを感じてもらえたらいいなと思います。

――小西さんが演じた「フミヤ」については、どんな印象を持たれましたか?

成弥が「フミヤ」を演じている、というよりは、「フミヤ」だと思って聞いていたんですよ。もちろん成弥のことは知っているし、どういうお芝居をする人なのかも分かってるんですけど。でも、成弥と芝居をしたというより、成弥の「声」を借りた「フミヤ」と向き合ったというか。

今回、成弥とは久しぶりの共演なんですけど、一度も会わなかったんです。それが「テープに録音された音声」でストーリーが構成されているこの物語とすごくマッチしていて。「フミヤ」の録ったテープの音声を聞いて、それに対する嘘のない「翔」の言葉を紡いでいく流れがリアルで、1本の映画を撮ってもらったいただいたような感覚になりました。

――稲垣さんが収録しながら感じられた感覚が、そのままドラマと重なる感じがしますね。

ほんと、そうだったなって思います。僕が録りながら感じていた感覚を、作り手の皆さんも「それでいい」と思ってくれたから、すごくナチュラルなものが録れたんだと思っています。時間の経過も、すごくリアルかもしれません。

ボイスドラマ『灰とカセットテープ』インタビュー!稲垣成弥が追求する“嘘”のない芝居

――本作は、物語の根幹に“音楽”がありますが、稲垣さんにとって音楽とはどんなものですか?

最近、嗜好が変わってきたのを感じるんですよ。20代の頃に比べると、優しい音楽を求めがちというか(笑)。昔は結構重低音の効いているヒップホップとかを好んでいたんです。洋楽というよりは邦楽派。でも最近は、朝起きた時に聞きたいか?って考えたら、もっと優しい音楽を欲していると思うようになったんですよ。

舞台期間中は、その舞台の音楽を聞くようにしているのでそれ以外はあまり聞かないんですけど、少し前に何も考えなくていい時間ができて。その時に「何か音楽が聴きたいな」と思って探して選んだのが、清水翔太さんの楽曲でした。すごく優しかったです。まだベッドの中にいていいんだ~って思いながら聞くのにすごく良かった(笑)。重低音で気持ちをアゲながら1日をスタートするのもいいんですけど、今の自分はゆっくりスタートするこの感じが嫌いじゃないんだなと。

――稲垣さんは、今、癒されたい?

そうなのかな~(笑)。

――スチール撮影は、唯一「翔」としてカメラの前に立たれたかと思いますが。

僕が表現する、というよりは、身体を貸した感覚でした。カメラマンさん、メイクさん、照明さんをはじめ、プロの人たちが集まってイメージする「翔」に身体を貸すという感じ。 これが動画だったら話が変わってくるんですけど、写真という媒体で一枚一枚切り取られていく時は、みんなが「いい」というものであることが大事だと思っています。

――撮影を少し拝見させていただいたのですが、めっちゃよかったです。

嬉しい。皆さんも、ぜひいろんな形でビジュアルが出るのも楽しんでほしいです。

――この企画は、ボイスドラマにとどまらない展開が予定されているそうですが・・・。

僕、これ映像にすればいいのに!って思いましたよ。本がすごくいい。一本筋の通ったしっかりとした本だし、絶対映像向きだと思ってました(笑)。今からでも撮ればいいのに!きっと、聞いてくださる皆さんの脳内でも映像をすごくイメージしやすいはず。

そんな感じでね、僕自身もこのボイスドラマがどんな広がりを見せてくれるのか楽しみにしています。それを楽しみにしながら、3ヶ月待ってもらってね!早く続きを聞かせてくれよ~!ってなるかもしれないけど。

この記事が出る頃には、TAPE2が配信されていると思うんですけど、1話から2話、すっごく待ったでしょう。2話も、いいところで終わります(笑)。でも、本当におもしろいいい作品だから!この時間の経過も含めて、楽しんでもらいたいです。月刊誌の連載を待つ、みたいな気持ちで。

月日が経つのを待って聞くに値する作品だと、僕自身も本を読んで思いました。3本目まで配信されたら、TAPE1・2・3を改めて連続で聞いてもらったら、また違う味わい深い作品になると思うので、ぜひ最後まで聞いていただけたら嬉しいなと思います。よろしくお願いします。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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小西成弥インタビュー!ボイスドラマ×音楽連動企画『灰とカセットテープ』とは?

『灰とカセットテープ』作品情報

ドワンゴジェイピーオーディオブック
【6月30日まで応募者全員プレゼントあり】
https://listengo.dwango.jp/page/audiobook-ashandcassettetape/
※詳細は配信サイトをご覧ください

<配信スケジュール>
TAPE.1)好評配信中!!
TAPE.2)4月26日配信開始!!
TAPE.3)5月15日(水)
※本商品はデジタル音声コンテンツです。

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【期間】6月8日(土)~6月16日(日)
【会場】新宿マルイアネックス
※後日詳細発表、店舗へのお問い合わせはお控えください

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販売サイト:ドワンゴジェイピーストア
https://jpstore.dwango.jp/products/list?filter=creator/087
販売期間:2024年5月16日(木)23:59まで

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