入江雅人×中村 中インタビュー「『ゾンビフェス』は誰もが楽しめる”文化祭的”祭り」


2021年10月2日(土)・10月3日(日)に東京・CBGKシブゲキ!!にて、『ゾンビフェスTHE END OF SUMMER 2021』が開催される。『ゾンビフェス』とは、“ゾンビ”をテーマにしたパフォーマンスが集結するお祭り公演。ホストは、“ゾンビ”をテーマにした作品を数多く手がけてきた入江雅人が務めており、2017年より晩夏の風物詩として続く人気企画となっている。

5年目となる今年も、入江の一人芝居をはじめ、入手杏奈のダンス、オクイシュージの演劇、清水宏のスタンダップコメディ、立川志ら乃の落語、塚本功のエレクトリックギター演奏と歌、中村 中の弾き語りと、多種多様なラインナップ。公演に向けて、入江と初参加の中村に話を聞いた。

「ゾンビの可能性というか、ゾンビの表現の幅の広さを感じました」中村

――お二人がお知り合いになられたきっかけ、今回入江さんが中村さんにオファーされた経緯をお聞かせ頂けますか?

入江:元々、僕が中(あたる)ちゃんの大ファンで、中ちゃんが出演していたgood morning N°5の『祝杯ハイウェイ』(2018)を見に行った時に、挨拶したら中ちゃんが握手してくれて、それが初めての出会いでしたね。

中村:そう。でも私も入江さんの『グレート一人芝居』を見に行っていたので、初めてじゃない感じでした。

入江:ああ、そうそう。それで一度だけtwitterでやりとりがあったよね。それから一昨年のグレート一人芝居の「パンクスタイル6」と「ゾンビフェス」を見に来てくれて、ちゃんと知り合えた感じでしたね。

中村:はい。

入江:「ゾンビフェス」の音楽部門を塚本(功)くんがずっと一人で担ってくれてるんですが、もっと広げたかったし、中ちゃんが出てくれるなら最高だな、と思っていて、打ち上げに来てくれたので、その時に話をしたんです。ただ去年は、(新型コロナウイルス感染拡大の影響で)流れちゃいましたけどね。

――元々、お互いの作品を観に行く関係性があってのことだったのですね。

中村:そうですね。

入江:いや、僕が一方的に中ちゃんの曲を聞いてたって言う(笑)。

中村:ありがとうございます。しかも聞いて下さっていたのが「少年少女」というアルバムで、自分がこれまで創った作品の中でも、こだわりが色濃く出たアルバムだったので、それを「好きだ」と言って下さって「あ、この人ちゃんと見てくれてるな」とか思ったりして。それでもっとお話ししてみたいな、と思いました。

――中村さんが、2019年、「ゾンビフェス」をご覧になった時の印象はいかがでしたか?

中村:まず、”ゾンビ”というものの可能性を感じました。例えば、”不完全”とか、”蘇る”とか、”喪失”とか、”死に損ない”など、色んなイメージが浮かぶなぁと。入江さんの一人芝居の『帰郷』のようなものすごく寂しい物語もあれば、生きながらにして腐敗している人間関係を描いているコントとか、ゾンビの表現の幅の広さを感じました。あとは、「フェス」だということも印象に残っています。演目はどれも演劇要素が多いものなのかなって勘違いされる方もいると思いますが、実際観たら、異種格闘技でした。ボーダーレスのフェスみたいな。

聞くところによると、本番前夜に思いついた事を試して良いらしいですし、他の出演者が何をやるか本番まで分からないこともあったそうです。そこが本当に”文化祭的”というか、誰もが楽しんで良い、引き立て役にならなくていい、全員揃ってゾンビを思い切りやって良い場所、そういう祭りなんですね、「ゾンビフェス」は。

――中村さんが「ゾンビフェス」をご覧になった時印象に残ったパフォーマンスはありますか?

中村:坂本頼光さんの『サザザさん』を拝見して、「怖い人たちがいっぱいいるなぁ」と思いました(笑)。ちょっと治安は悪いと思いますが、そこが良いところだと思います。あんまり清潔だとゾンビって生きていられないじゃないですか。すみません、よく知らないんですけど。入手(杏奈)さんのダンスはたまらなかったなぁ。オクイシュージさんがずいぶん動かなかったこととか、かもめんたるのジョン&マキ”のような夫婦コントも悪趣味で面白かったです。でもやはり入江さんの一人芝居の『帰郷』ですね。その時初めて拝見したのですが、まさかの展開で。すごく嫌な予感がする感じの台詞から始まって。それまで割と和気あいあいとしたムードで楽しんでいんですけど、突如びっくりする台詞が聞こえてきて、一瞬耳を疑いながら観て、のめり込んじゃったっていう。

――『ゾンビフェス』は今年5回目になりますね。入江さん自身は5年間、やってみて思うこと、振り返ってみて何か感じるものはありますか?

入江:僕にとって”最高の贅沢”ですよね。とにかく僕が好きな人たちを呼んで、その人たちのパフォーマンスが観られて自分のネタもやって。だいぶ好き勝手やってやらせてもらってます。入手杏奈ちゃんのオープニングダンスと僕の「帰郷」は、あえてやってます。それを観ることを楽しみにして下さっている方もいらっしゃると思うしそういう方々にとって、ゾンビフェスが年に一度の特別な日になるように続けていきたいですね。

入江「純粋に楽しんでもらえると思うので、お祭りだと思って」

――先ほどの中村さんのお言葉を借りるならば、何か”母校の文化祭”に来たような、「あぁ帰ってきたな」といった懐かしい手触りがあるフェスですね。

入江:元々、俺、文化祭委員長だったから(笑)。プログラム作ったりして、市民会館で全部自分のしたいことをしたりしていたんです。やってること、それと同じですね(笑)。

中村:いいんですよね、文化祭の時に初めて仲良くなる人いませんでした?「お前ギター弾けんだ」とか。それで一気に仲良くなったり。

入江:人の知らない意外な一面を見たりね。

中村:そういう感じが楽しいですよね。

入江:元々、文化祭とかお祭り好きなんだよ。

――お二人にとって、”ゾンビ”とはどんな存在ですか?

入江:僕はもうライフワークみたいになっちゃいましたね。「ゾンビフェス」抜きにしても、『帰郷』を長編芝居にしたり、昔から「SHA・LA・LA」でもゾンビものをやったりしてたし、割と書いているものの半分はゾンビになってきていて、この先も時々書くんだろうし。とにかく、僕が最初に面白いと感じたのは、”生きている日常の中に死者が動く”という状況があって、幽霊とも違うやはりゾンビならではの世界観に惹かれたし、知り合いや恋人がゾンビになったときに生まれるドラマが見たいと思ったので、そこはまだ、多分掘り下げようがあるんだろうなと思っています。まだ『帰郷』を超えるようなものを書きたいなと思ってますね。

中村:私はゾンビというものを身近に感じました。何か自分の中の腐ってる部分も”有り”でそういう自分を否定せずに生きる・・・ゾンビもそういうものなのかなと。本当は生きているだけでも十分幸せなはずなのに、常に不満がある、みたいな。生きてるのに半分死んでる感じというか。世の中何も隠し事をしないで生きられる人とか、完全に自分を愛せて自分に納得して生きている人もそんなにいないとも思うし、むしろそう成れないから少しでもましな自分になりたいと思って頑張るんだろうけど、やっぱり上手くいかなくて、気づいたら傷だらけになって、でも生きてる、みたいな感じですね。ゾンビ。

――現時点で中村さんはどんなことをゾンビフェスでやってみたいと思っていらっしゃいますか?

中村:色々な人がそれぞれの技を持ち寄ってやるフェスだから、「ゾンビフェス」用の曲を作って参加したいと思っています。

――入江さんはいかがでしょう?

入江:今年はオクイさんとの二人芝居で新作をやろうと思っています。二人の稽古時間が限られているんですが、お互い信頼しているので大丈夫だと思います。ちなみに恒例の『帰郷』に関しては、毎年、前年の「ゾンビフェス」の映像を見て、それで感じたことを元に修正を入れているので、今年も何かしらの修正が入るかもしれないですね。音楽面でもまだまだ試したいパターンもあります。

中村:関係ない話ですけど、ゾンビ映画って、最後パンクとかかかったりしますよね。

入江:ホラーってそうだよね。ひどい状況であっても割と元気のいい曲で終わる(笑)。

中村:そういう意味でも、『帰郷』のような感傷的なゾンビは、あまり見ない感じはありますね。

――今年もコロナ禍下での上演となりますが、お客様へのメッセージと、フェスへの期待を一言ずつ頂けますでしょうか?

中村:感染予防対策に皆様が協力して下さって本番が出来ているので本当にありがたいです。引き続きご協力頂きたいと思っています。そして、ライブに出かけたことがない方、芝居を見たことがない方は、「ゾンビフェス」は一度で色々な特徴を持ったパフォーマーに会えると思います。大いに気分転換をして欲しいなと思っています。私自身、フェスに呼んで頂いて「どんなものやろうかな」とか考えている時間が潤いになっています。フラストレーションが溜まりやすい昨今ですが、似たような気持ちの方がいたら、一緒に発散しましょう!

入江:チラシにも書いてありますが、あらゆるジャンルの達人が”ゾンビ”と言うお題で至高の芸を見せる、これだけ色々なジャンルを楽しめる場はなかなか無いと思います。純粋に楽しんでもらえると思うので、お祭りだと思っていらして頂きたいですね。あと僕は、中ちゃんの曲を生で聞けるのが嬉しいですね。ちょっと泣くと思う(笑)。

入江・中村:(笑)。

『ゾンビフェス THE END OF SUMMER 2021』

上演スケジュール

10月2日(土)17:00開演(16:30開場)
10月3日(日)14:00開演(13:30開場)
会場:CBGKシブゲキ!!

スタッフ・キャスト

【出演】※50音順
入江雅人(一人芝居)
入手杏奈(ダンス)
オクイシュージ(演劇)
清水宏(スタンダップコメディ)
立川志ら乃(落語)
塚本功(エレクトリックギター演奏と歌)
中村中(弾き語り)

【特設サイト】https://zombiefes.wixsite.com/zombiefes



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