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松井玲奈『神の子どもたちはみな踊る』インタビュー 「村上春樹さんの小説は、ひとつひとつの言葉に意味があるから」

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2019年7月31日(水)から、東京・よみうり大手町ホールにて上演される舞台『神の子どもたちはみな踊る』は、村上春樹が1995年の阪神・淡路大震災を受けて書いた小説を原作とする舞台作品。村上の著作『海辺のカフカ』なども脚本化したフランク・ギャラティが書いた英語脚本を使用しており、今回日本初上演となる。

松井玲奈は、主人公の作家・淳平(古川雄輝)の大学の同級生、小夜子を演じる。淳平の手も借りながらシングルマザーとして娘を育てるが、娘は阪神・淡路大震災のニュースを見て以来、悪夢に怯えていて・・・。自らも小説を執筆・発表した松井に、本作の出演に向けた思いを聞いた。

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小夜子は「母親であり、一人の女性」

――まず、舞台出演のお話を聞いた時のお気持ちを教えてください。

村上春樹さんの本はエッセイしか読んだことがなかったので「小説も読みたいなぁ」と思っていたところだったんです。作品がたくさんあるのでどれから読もうか迷っていた時に、ちょうどこのお話をいただいて!まだ演じたことのないタイプの母親役だということ、この作品を舞台で表現することなど、やりたい要素が重なっていたので、喜んでお受けしました。できれば年に一度は舞台に立ちたいので、出演が決まって嬉しいです。

――演じたことのないタイプの母親というと?

赤ちゃんの母親役は経験があるんですけれど、しっかりとコミュニケーションがとれるほどの年齢の子どもの母親役は初めてです。しかも娘の沙羅役がWキャストなので、演じる人が変われば関係性も変わると思うので、それが楽しみですね。ちゃんと二人ともに「お母さん」だと思ってもらえるようにならないといけない。これまでは自分が最年少の舞台が多かったので、今回は自分がリードする意識を持って稽古場にいようと思います。それは初めての挑戦ですね。

――演じる小夜子という女性はどんな人だと捉えていますか?

ミステリアスで、母親でありながらもしっかりと“女性”の部分を持った人だなという印象です。というのも、淳平に対して異性としての気持ちの揺れがある。そして、娘の沙羅への接し方がとてもちょうどいい距離感なんです。母親だからって子どもを甘やかしたり過保護にならず、子どもの言うことをちゃんと受け止めて、人としてどうコミュニケーションを取るのかを考えている女性なのかなと感じています。

――松井さんは、キャスト発表時のコメントで「小夜子には、原作には書かれていない複雑な心情があるなと思う」とおっしゃっていました。なぜそう思ったのか、もう少し詳しくお聞きしてもいいですか?

小説は淳平の視点で描かれているので、小夜子がどう思っているのか、その行動の裏にはどんな背景があるのかが描かれていないんです。子育てについてどう思っているのか、淳平にどんな気持ちを抱いているのか・・・そういった“小説には描かれていないこと”を自分で考えないといけない。描かれていない余白の部分をどうやって埋めていくかが大事だなと思っています。

――小夜子に共感できるところはありますか?

わりと自分に近いかも。本が好きなところとか、思った事をワーっと吐き出さないところは似ていますね。だからこそ、淳平との微妙な距離感や気持ちの揺らぎは共感できます。何となく分かるからこそ、演じるのが楽しみです。

――自分に似ている役を演じることについてはどうですか?似ている方が演じやすいという俳優さんと、自分とまったく違う人の方が演じやすいという俳優さんがいると思うのですが・・・。

最近気づいたんですが、私は「この役はどう考えたのかな」と想像するより、「自分だったらどう考えるか」「自分だったらどうするのかな」と自分を通して考えることが多いですね。役を自分に寄せながら、台本に書かれていない部分を埋めていくんです。だから似ている役は演じやすいかも。稽古次第ですけれど。

――今回、皆さん初めての共演ですが、相手役の古川雄輝さんとの共演ではどんなことが楽しみですか?

古川さんとはまだ少ししかお話ししていないのですが、すごく静かな方という印象です。たぶん、お互いに人見知りだからでしょうね(笑)。取材で少しだけ対談させていただいた時には、役や作品に対してしっかりした考えを持って、深く追求していく感覚がある方だなと感じました。私とは違うベクトルで物語を紐解いていたので、稽古でどんなセッションができるのか楽しみです。

――演出の倉持裕さんについてはいかがですか?

演出についてはゆっくりお話できていないのですが、拝見した舞台はコミカルだったので、今回どんな演出になるのかとても楽しみです。脚本を読む限りはコメディの印象がないので、倉持さんがどう演出されるのか、まだ未知の領域なんです。お会いした時に「語り手が状況を説明している時や、誰かの独白の間でも、舞台上には人がいて物語が進んでいる。語りと物語が同時進行している作品だよね」というようなことをおっしゃっていたので、それを演出でどう表現するんだろう・・・。そういう演出の余地があると、舞台を作る上で遊べる自由さがあるので、私もそこで小夜子の人間性を出していけたらいいなと思います。

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小説を演じるということ

――今の段階で、どんな作品になりそうだと感じていますか?

脚本では、小説の中に出てくる台詞だけでなく、地の文までもそのまま誰かの語りになっています。もしかしたら朗読劇なのかもしれないって思うほど。だから、最初は「難しいな」と思ったんですよ。でもすでに海外で上演されている脚本なので、その時はどうだったんだろう、今回はどうなるんだろう、という楽しみがあります。また、この舞台は二つの短編作品がミックスされているんです。『蜂蜜パイ』に登場する作家・淳平(古川)が書いている話の中に、『かえるくん、東京を救う』の物語が登場するんですが、原作を読むと、舞台では二つの短編がちょうどいい具合に混ざっているのがよく分かります。

――小説を舞台にするというのは、おもしろくもあり、難しさもあるのでしょうね。

たぶん原作を読んでいる方々にはそれぞれ淳平像、小夜子像があると思うんです。舞台を観て「違う」と思われたら嫌だなという気持ちもありつつ、それを怖がっていてもいけないなとも思います。私は私なりに考えて、稽古の中で出来上がっていったものを舞台に乗せたい。受け入れてもらえたらいいなぁと思うだけでなく、こちらからちゃんと提示できるような作品でありたいです。

――松井さんも小説を書かれますが、小説の演劇化について思う事はありますか?

紙の上にあった言葉が立体的になるって、とても大きな変化ですよね。村上さんはエッセイで、句読点一つや改行について何回も何回も読んで書き直すと書いていました。きっとこの小説も、一つ一つがとても考えて書かれている。その言葉を大事にしたいです。

――小説に込められた思いを大事に舞台化することを、大切にされているんですね。

一言一言にすべて意味があるはずだから、観ている人にちゃんと大事に届けたいです。ご興味ある方はぜひ原作の短編小説を読んで来ていただけると、より楽しんでもらえるんじゃないかな。短編6作品で一冊の本なのですが、全部読むとまたイメージが膨らみます。ちなみに私は今回舞台になっていない『UFOが釧路に降りる』が印象的で好きした。

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――6作全編が、阪神・淡路大震災に関する連作ですね。

『神の子どもたちはみな踊る』は村上さんが震災を受けて「自分にできることって何だろう?」と考えて書いたと伺いました。その小説に込められた思いを、ちゃんと伝えなければいけないなと思います。

――阪神・淡路大震災が起きたのは1995年。松井さんはまだ3歳でしたね。

はい、小さかったので当時のことはまったく覚えていないんです・・・。でも、親戚がたくさん兵庫県にいて、当時はとても大変だったと聞きました。

ただ、演じる上で震災の具体的なことはまだ考えられていません。この作品で描かれているのは、地面が揺れた時に精神的な足場も揺れてしまって、いろんなことを考えて行動に出た・・・ということでもあります。何かが揺れることで、人間って変わる。本人たちが気づかなくても。その揺れが連鎖して、それぞれが一つ一つ選択をして生きているんだなと感じてもらえたらいいのかなと思っています。登場人物の心の中がどう揺れ動いて、物語が動いていくのかを大事に表現したいです。

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◆公演情報
『神の子どもたちはみな踊る after the quake』
【東京公演】2019年7月31日(水)~8月16日(金) よみうり大手町ホール
【愛知公演】8月21日(水)・8月22日(木) 東海市芸術劇場 大ホール【神戸公演】8月31日(土)・9月1日(日) 神戸文化ホール 大ホール

【原作】村上春樹
【脚本】フランク・ギャラティ
【演出】倉持 裕

【出演】古川雄輝、松井玲奈、川口覚、横溝菜帆・竹内咲帆(子役・Wキャスト)、木場勝己

【公式HP】https://horipro-stage.jp/stage/kaminokodomo2019/

(スタイリスト/佐藤英恵[DRAGON FRUIT] ヘアメイク/白石久美子)

(取材・文・撮影/河野桃子)

            

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