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古川雄輝インタビュー!村上春樹原作の舞台『神の子どもたちはみな踊る』は「読む人それぞれの解釈がある」

村上春樹が1995年の阪神・淡路大震災を受けて書いた、小説「神の子どもたちはみな踊る」(新潮社)。収録された6作の短編のうち2作を抜粋し、再構成した舞台が、2019年7月31日(水)より東京・よみうり大手町ホールにて上演される。

主人公の作家・淳平を演じるのは古川雄輝。大学の同級生である小夜子(松井玲奈)と高槻(川口覚)との不思議な距離感の中、故郷・神戸を襲った震災を想い、物語を書き進めるが・・・。3年ぶりの舞台出演への意欲を語る古川からは、力強さと思慮深さが感じられた。

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二つの短編がミックスされた作品

――久々の舞台出演ですね。どんな気持ちですか?

3年ぶりなので、俳優としての自分が試される機会だと思っています。舞台はいつも新たな発見がありますし、大変さと同時にワクワク感もあります。何を学べるか、どんな作品になるのか、成長できるのか・・・という事が楽しみであるのと同時に、主演としてこれからがんばらないといけないな、というプレッシャーもあります。

――原作小説を読まれた感想は?

僕は普段あまり小説を読まないので、村上春樹さんの小説を読むのはこれが初めてだったんです。読みやすくて、ストーリーがシンプルで、比喩表現が多く、深読みすればするほど捉え方があって、読者に解釈を委ねる作品だなと思いました。しかし人によって感じることが違うからこそ、舞台化する上では座組の皆さんで共通認識を持たなければいけないと思っています。僕自身も、読んで思ったことを早く確認したくて、演出の倉持裕さんにご挨拶させて頂いた時にいろいろ聞いてみたんです。

――例えばどんなことを?

クマが登場する物語を子どもに聞かせるシーンがあるんですが「これは単にクマの話をしているだけではなく、淳平たちの関係性を表現した比喩なんですかね?」とか、小夜子との関係について「コーヒーをただ飲むのでなく、◯◯を見ながら飲んでいるのは、他に何かを意味しているのでしょうか?」とか、「淳平と小夜子と高槻の3人の関係は、ただの大学時代の友達というものではなく、依存だと僕は感じたんですけど・・・」とか「このシーンは僕にとってすごく印象的だったんですが、どう思いますか?」とか・・・。

いろいろと深読みして、自分の解釈を伝えました。でも、倉持さんには「それは稽古でね」と言われたので、どんな作品になるかまだわからないんですよ(笑)。倉持さんと村上さんでも表現は違いますし、読む人それぞれの解釈があるでしょうから、おもしろいですよね。正解はないと思うので、倉持さんがどんな舞台にしていくのか楽しみです。

――舞台化にあたって短編小説2本が取り上げられています。脚本を読んで、原作小説とは違う印象を受けたのではないでしょうか?

不思議な世界観だなと思いました。普通の会話劇じゃないんですよ。時々、僕の役が相手役の思っていることをしゃべったり、一つの台詞を数人で分けて話したり、急に語り手(物語の進行役)に話しかけたりするんです。上演する時には、村上春樹さんの小説とミックスされて不思議な世界になる予感がしています。

――小説と脚本、両方とも読まれた古川さんが思う『神の子どもたちはみな踊る』の魅力はどんなところにあると思いますか?

2作の短編がミックスされているという、この舞台でしか表現できない世界がおもしろいです。同じ話のはずなのに、小説と脚本では印象がだいぶ違っていました。2作がブレンドされているので、原作を好きな人にも、初めて作品に触れる人にも、魅力的だと思います。村上春樹さんのファンの方にはぜひ小説と舞台の違いを楽しんでいただきたいです。実際に登場人物たちが目の前で動くとまた違った雰囲気になると思います。

――いろんな楽しみが詰まっていますね。そしてこの作品の根底には、阪神・淡路大震災があります。

当時、震災とどう関わったかによってこの作品の捉え方はさまざまになると思っています。僕は震災時に海外にいました。そんな僕のような人と、その場で震災を経験されている方では思うことが全然違うはずです。舞台を観て頂いて、感じることも人によって異なってくるのではないかと思います。

――古川さんご自身が、この舞台で表現したいこと、伝えたいことはありますか?

難しいなあ!原作があるものですし、捉え方が人それぞれになる作品だと思っているので・・・。ただ、僕が演じる淳平の目線でこの物語をシンプルに見ると、小夜子に好きという思いを伝えたくても伝えられないところがあるんです。そういった気持ちには多くの人が共感できると思うので、それを伝えられたらいいですね。また、村上さんの原作の魅力を倉持さんに演出して頂き、精一杯表現したいです。

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孤独、正義、愛、勇気

――淳平は、部屋にこもって一人で本を読んだりする大人しい青年です。古川さんが似ているところ、共感できるところはありますか?

共感できますね。僕も淳平みたいに自分の思いを伝えられなかったりすることがあります。そういう人は多いんじゃないでしょうか?ましてや大学生の頃はまだコドモの部分が多いですから、きちんと気持ちを伝えられないことはありますよね。

――古川さんご自身は大学から日本で暮らすようになりましたよね。もしかして、淳平のように一人で時間を過ごしたり、孤独を感じたりしたことがあるのでしょうか・・・?

孤独は感じますね。僕は帰国子女って、どこにも属していないみたいな感じに思っているんですよ。海外では外国人・・・僕はカナダとアメリカにいたのでそこでは“アジア人”、日本に帰ってくると“帰国子女”と言われます。どこに行っても孤独感があったので日本では、上下関係に気を遣って、ご挨拶をして、お辞儀をして・・・と、あまり海外ではしたことがないことをして「日本人に馴染まなきゃ」と頑張りました。馴染むまでに時間がかかりましたし、今でも馴染めてはいない気がする時もあります。でもそうしないと自分の居場所がなかったので、大変でしたね。

――作品を通して、孤独以外にも正義や愛や勇気というものも感じられる方もいるかと思います。古川さんにとって、正義や愛はどんなものでしょう?

ネガティブな事しか思いつかないです・・・。正義感がある人って損しちゃうとか・・・。愛についても、必ずしも良いことばかりではない・・・って、超ネガティブですね僕(笑)!ポジティブな言葉だからこそ逆にネガティブな発想もしてしまうのかも知れません。

――「物事には表と裏の両面がある」と言いますから、バランス感覚があるんですね。ちなみに、勇気については?

ポジティブな言葉を探すと、勇気とは「淳平には無いかもしれないけど、一歩踏み出せば誰もが持っているもの」ですかね。

相手が誰でも、遠慮しないこと

――ご一緒される方は、初めての方ばかりですね。小夜子役の松井玲奈さんとも初共演です。

どうなるんでしょうね。僕は人見知りだし、松井さんも人見知りだとおっしゃっていたので・・・。僕は今まで稽古場では演出家に相談をする事が多かったので、今回は松井さんを含めた共演者の方々とコミュニケーションを取っていきたいと思います。

――きっとこれからの稽古で少しずつ座組のカラーができていくんでしょうね。古川さんは稽古にあたって、どんな準備やスタンスで臨まれるんですか?

毎回違いますが、多くの場合で僕が信じた「これでしょ!」というものを持って稽古場に臨みます。映像の仕事では、現場に入ったらすぐ本番の撮影が始まるので、あらかじめ自分で決めていかないといけない。ですが舞台は映像と違って稽古期間が長いので、決めすぎてもよくないと思っています。今は、台詞をしっかり頭に入れて稽古に臨めたらいいのかなと思っています。でも今回の脚本は覚えるのが難しいんですよ。会話だけでなく、語りもあるし、二つの短編小説が舞台上で混ざっていくような場面もあるので、大変です。

――覚えるだけでなく、どんな役かを作っていかなければならないですよね。役作りにおいて気をつけていることはありますか?

お芝居をする上で大切にしているのは、遠慮しないこと。演出家がどなたでも、お芝居の相手が誰でも「ひるまずにやる」ということは意識しています。それから、今回の舞台で個人的にテーマにしているのは“楽しくやること”。これが、シンプルだけど難しいんですよ。舞台って苦しく感じる事も多いです。でも、芝居が上手くなると楽しさを感じられることも増えるのかなと、期待しています。

――辛くても、えぐられても、舞台に立ちたい・・・そう思える“舞台”の魅力は何ですか?

役者として感じる魅力は、舞台は学べる場で、発見が多いんです。映像では、舞台ほど時間をかけて、しっかり演出家と話して作品に取り組む事は出来ないですからね。僕のファンの方々には「舞台をやってほしい」と沢山言って頂いていたので、やっと出演が叶い、とても嬉しく思っています。

お客さんには、今観ないともう観られないという、舞台のナマモノだからこそのライブ感を感じてもらいたいです。舞台はお客さんと役者が同じ空間にいられるんです。だから、これからも舞台に立ち続けたいですね。

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◆公演情報
『神の子どもたちはみな踊る after the quake』

【東京公演】2019年7月31日(水)~8月16日(金)
【愛知公演】8月21日(水)・8月22日(木)
【神戸公演】8月31日(土)・9月1日(日)

【原作】村上春樹
【脚本】フランク・ギャラティ
【演出】倉持 裕

【出演】古川雄輝、松井玲奈、川口覚、横溝菜帆・竹内咲帆(子役・Wキャスト)、木場勝己

【公式HP】https://horipro-stage.jp/stage/kaminokodomo2019/

(スタイリスト/五十嵐堂寿 ヘアメイク/藤井康弘)
衣装/ベスト\21,000/ジョンブル(ジョンブルカスタマーセンター:050-3000-1038)、パンツ\22,000/ワングラヴィティ、靴\92,000/チャーチ(以上エストネーション:0120-503-971)、他私物
※金額はすべて税抜価格です

(取材・文・撮影/河野桃子)

(文/エンタステージ編集部)

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